読
□向こうの世界
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向こうの世界
※高杉さん、土方さんの専属SPです。
土方さん、女体化で財閥令嬢です。
殺到的な場面は有りませんし、お二人がイチャイチャしているだけです。
「ん?総悟、何やっているんだ?」
部活の終わり、教室に忘れ物をして取りに来た近藤は身を屈ませて教室の中を静かに覗いている者を見た。
その者は先程、藁人形(何に使うかは不明)を取りに教室に戻ると言った沖田の姿で、その背中に声を掛ける。
「総悟?どうした」
「近藤さん」
近藤に気付いた沖田はチラリと近藤を見てまた教室の中を覗いた。
「教室に入らないのか?」
疑問に思いながら首を傾げる近藤に沖田は今度は振り返って近藤を見上げた。
「しー…アレ、見て下せェ」
「ん?……トシ、に高杉?」
沖田が人差し指を口元に当てながら、教室の中を覗くように促すと近藤も沖田に倣って身を屈ませて教室の中を覗いた。
そこには、ガランと人の居ない教室。
けれど、夕暮れの教室の窓側の後ろの席に二つのシルエットがあった。
土方と高杉の姿だ。
高杉が自分の腕を折り曲げて枕にしながら寝息正しく居眠りをしており、土方がその紫紺の髪をすきながら柔らかい表情で見下ろしていた。
近藤が二人を見て、微かに驚いて沖田を見つめると沖田も近藤を見上げた。
再び近藤が教室に目を移すと、丁度その時に高杉が身動ぎするとゆっくりと目を開けた。
どうやら目を冷ましたらしい。
「……ん…」
「あァ…起きた?晋助」
土方が目に掛かっていた高杉の髪をさらりと耳に掛けながら優しく声を掛ける。
「………十、四…?」
まだ頭が覚醒しきってないのか、ぼんやりとした頭で呂律の回らない舌で土方を見つめた。
「ふふ…そうだよ、寝惚けてるのか?」
ぼんやりとしながら自分を見つめる高杉を土方は可愛いと思いつつ見つめて髪からかけて頬をゆるりと撫でた。
「……ンー…」
高杉が土方の手にまだ眠そうにしながらも擦り寄り、白く長い指の先にちゅっ、とキスをしながら軽く甘噛みする。
しばらく好きにさせていた土方だが、高杉がキスから指をペロペロと舐め始めると困ったように高杉の名を呼んだ。
「…晋助…、」
「…んー?」
それに対して高杉は瞑っていた目を開けて、そろりと土方を見上げた。
「指を咬むな」
「んー…」
土方がそう言っても高杉は気のない返事を返すだけで再び目を閉じ、指を舐めたり口に含んで舌で撫で続けて甘噛みする。
「…こら」
ぴくり、と反応して高杉をたしなめるような声を出しても高杉は目を開けてとろんと甘えた熱の籠った目で土方を見上げるだけだ。
「十四乃…」
土方の指を手離した高杉は最後に指先に軽くキスをしてから、体を半分机に乗せて土方を覗き込むように上目で見つめ、お下げを猫のように弄ぶ。
それに土方は目を細めて溜め息を吐く。
「甘えるなよ…」
「…イヤだ」
甘えるな、と言われて高杉は目を菅めて不機嫌そうに顔を歪めると土方の首に腕を回し顎を肩口に乗せて抱き付いた。
甘えるように、きつく離さないと拗ねて自分に抱き付いてくる高杉に土方はくすくすと微笑みながらポンポンと背を撫でる。
「拗ねるなよ」
「…むっ…十四乃が意地悪するからだろう?」
「してねェよ」
「…ずっとくっついて居たいのに…」
胸に秘めた不満を口に出しながら、納得出来ないと眉間に皺を寄せる高杉。
「ずっとは無理だろ?」
「だから今、十四乃にだけ甘えてェ…」
少しだけ体を離して土方の目を見て真っ直ぐに訴える高杉に土方は困ったように笑って溜め息を吐いて高杉を見つめた。
「もう…そんなこと言われたら、甘えさせてやりたくなるだろ…?」
「…甘えさせろよ」
「ふふ…んっ、こら…」
土方の首筋の舌を滑らせて、顔中にキスを降らせると唇をペロっと軽く舐める。
すると土方はくすぐったそうに笑った。
「分かったから、がっつくなよ…」
「イヤだ…もっと、」
顔を背ける土方の顎を捕らえ、高杉は息を奪うくらいに深く重ねて、上下の唇を割って中を抉るようにかき回す。
「んっ、んん…」
歯を、舌を、上顎を頬の裏を、くまなく舐めずられて土方は息苦しさから高杉の胸を押し返そうとする。
「は…、十四乃…」
素直に離れた高杉は名残惜しそうに土方の頬に触れて軽く口付ける。
「…今ここでヤってもいいが、俺はお前のSPで早く帰さなくちゃいけねェからな。それに邪魔者もいるし、帰るか」
「…え?邪魔者って…?」
息を整えながら首を傾げて高杉を見つめる土方に微笑みながら何でもないと首を振ると、二人分の荷物を肩に担ぎ高杉は土方と手を繋ぎながら教室を出て行った。
沖田と近藤は慌てて物陰に身を潜めると、肩越しに振り返った高杉と目が合った。
「晋助?」
「…いや。行こうぜ、十四乃」
「?…うん」
直ぐに前を向いた高杉は土方に時折甘えるようにくっつきながら廊下の向こうに消えて行った。
――――、
二人が消えた廊下を見つめ、物陰から出て来た近藤と沖田。
「…高杉、気付いていたのか?」
近藤は高杉と目が合ったのにドキドキと冷や汗を流して沖田に問い掛ける。
「多分、俺が覗いていた時から気付いていたと思いやすよ。本当食えない奴でさァ」
「…というか、イケないものを見た気分…」
呟いて、二人は本来の目的を果すため二人は教室に入って行く。
end