読
□貴方が生きていることが、
1ページ/1ページ
貴方が生きていることが、
高杉が逝こうとしても、俺は平気だと思っていた。
俺達の日常は死が隣り合わせだから。
俺の居場所は真選組で、これから先もずっと近藤さんの隣にいると信じて疑わなかった。
けれど……、高杉の死を目の当たりにしょうとすると決心が揺らいだ。
大事な人が死んでも、俺はその人をたまに心で思い出せれば生きていけると思ってた。
現に、ミツバが病で亡くなっても、確かに心が苦しいけど生きてこれた。
でも…何故か高杉だと自分は生きていけない。
高杉を死なせたくない…!!
スローモーションのように後ろから倒れる高杉を目の前にして、自分の体温が急激に下がるの感じ取り目の前が真っ暗になる。
自分が真選組の副長であることも忘れて無我夢中で高杉の傍に走る。
「……高杉っ…!」
高杉に触れる自分の手が大きく震えている。
イヤだ。
逝くな。
死ぬな。
死なないでくれ。
俺を…置いて逝かないでくれ!!
触れた高杉の肌は冷たくて、死のうとしている。横たわる高杉を抱き上げて心臓の音を確かめようと胸に耳を当てると微かにだがまだ小さく鼓動している。
それに少なからず安心する。
けど、ここにいると高杉は長続きしないだろ、酷い重症で今直ぐにでも手術を行わないと助からない。
焦る気持ちで高杉を抱えたまま立ち上がり病院に急ごうと脚を動かした時、
「土方さん」
馴染みある声に引き止められて後ろを振り返ると、無表情の総悟とその隣にいる近藤さんが立っていた。
「総悟…」
「高杉をどこに連れて行く気でさぁ?」
カチャと総悟が腰の刀に触れて問い掛けてくる、答えによっては容赦はしないだろう。
けど、これだけは俺だって譲れない。
「……自分のしていることが真選組への裏切りだって知っている。切腹する覚悟だって出来ている…けど、こいつは…高杉だけは絶対に死なせない!」
総悟を真っ直ぐ見て俺の覚悟を伝えるが最後は怒鳴っていたように聞こえる。
それぐらい俺も必死なんだ。
「土方さん、アンタまさか……」
涙を流しながら自分を睨み付けて高杉を渡さないとばかりに強く抱き締める土方の姿に沖田は土方が高杉に抱く想いに気付き、目を見開く。
「行け、トシ」
「近藤、さん…」
近藤が沖田の言葉を腕で遮り、土方を暖かく柔らかい笑みで促した。
まさか近藤さんにそんなことを言われるとは思っていなくて、驚く。
「高杉が大切なんだろ?どうして高杉なのかは今は聞かんが、お前が涙を流す程大切な奴なら例えそいつが敵でも気にはしないさ。行け、トシ。今度こそ、大切な人を助けろ」
「っ…済まねェ、近藤さん。恩に着るっ!」
近藤さんに背中を押されて高杉を抱えて急いで病院へと滑り込む。
医者からは後一歩遅かったらダメだったと聞かされて、間に合って良かったと肩の力を抜いた。
手術を終えた高杉は人の目に避けるように少し離れた真っ白な病室で休んでいる。
真っ白な病室では高杉の存在感が大きく感じ
綺麗に写ろう。
高杉の傍に寄り、用意されていた椅子に腰を掛けて高杉の手を両手で握り締めた。
冷たかった肌は微かにまだ冷たいけど、一定の体温を保っていてちゃんと生きていると確認出来る。
生きている…。
それを思うだけで嬉しかった。
高杉を失われずに良かった…置いて逝かれずに良かった。
次々と浮かぶ安心にまた涙が流れた。
今度の涙は高杉を失う恐怖での涙ではなく、
高杉が生きている嬉しさでの涙だ。
「良かった…間に合って、良かったっ…」
高杉はしばらく昏睡状態のままだと聞かされたけど、生きている、今の土方にはそれだけでも嬉しかった。
幕府は滅び、これから大変だと思うがこれからは高杉の傍に寄りそうと決めたから、高杉が目を冷ますのを気軽に待てばいい。
「高杉…早く目覚めろよ」
唇に触れるだけの口付けをして、土方は高杉の手を離さず握り締めたまま少し眠りに着いた。
end
―――――
相も変わらず下手くそな文章をお許し下さい!