□仲直りの秘訣
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仲直りの秘訣










はぁ・・・またケンカしちまった・・・。



今日もボスと下らないことでまた口喧嘩をし、頭にきた俺がもう知らねェっ!!と体ごと背を向けたらボスも大きな音を立てて執務室に行ってしまった。

別にケンカをしたい訳じゃねェンだけどな・・・。
お互いにプライドが高い所為で一歩も譲らねェから引くに引けずに一言余計なことを口走る。

その結果、ケンカをしてしまった。

ボスは執務室に居て、俺はそのままボスの寝室に居るからボスの匂いが染み付いたこの部屋にいると胸がツキンと痛んだ。

下らないことでケンカするンじゃなかった・・・。

だが、まぁ昔よりはまだ可愛いものだ。
昔はケンカになると反射的に手と足が出るボスに一方的な暴力で気絶するまで殴られたモンだ。

そう思うと・・・年を重ねたと感じる。
あの頃のボスは大変だった。長い年月の間強制的に眠らされて目覚めたら一気に8年後ときた。
そして10も年下の相手に戦いに敗れ、強く望んでいた指輪には拒絶された。

あんなにも幼い頃から努力し、ボンゴレに相応しくあろうとしたのに、ブラッド・オブ・ボンゴレの血を受け継いでいないだけで・・・拒絶されるなんて!

ボンゴレを深く愛してるあの男こそが10代目に相応しいのに、受け継ぐことはあり得ないなんて・・・許せる訳がない。

アイツにはボンゴレしかなかったのだ。
それなのに、全てが無駄だったのだ、周りは偽りばかりで何も信じられなかった。

だから行き場のない怒りを俺にぶつけるしかなった。
指輪戦の雨戦で負けた負い目もあって抵抗もしなかった。
2度も守れなかったのだ、だから罰が欲しかった。罵声を浴びられようと殴れようと、俺には何一つ文句を言う資格なんてねェ・・・。

そんなことを何ヵ月も続けていたらいつの間にか暴力の回数が少なくなり用が終わったら用済みとばかりに蹴飛ばされていたのが一緒のベッドに寝るのが当たり前のように多くなった。

未来での戦いの記憶、あれを流されてから確かに少しだけXANXUSの中で何かが変わった。XANXUSだけじゃない。俺も、他の幹部も未来のことなんて納得なんかしていない。

10年経ってもXANXUSがボンゴレの頂点に立っていないなんて、未来の俺は何を呑気に剣帝への道100本勝負なんかに出ていってンだ!
確かに、剣帝になることは悪いことではないが、どうしても納得がいかない。

でもXANXUSは未来の記憶に些か苛つきつつもどこか傍観してる所が見受けられた。ボンゴレ10代目になることはない、それを仕方ないと傍観しているのかと思ったがそうではなかった。

なれないのなら、ボンゴレの闇から支配するつもりなのだ。
それを知った時はやっぱりコイツに着いてきて良かったと自分が選んだ主が誇らしかった。それまで俺は自分がただ主を守る為の剣だとずっと思って傍に立っていた。

それが変わったのはアルコバレーノ達の呪いを解く為に行われた代理戦でXANXUSの右腕が吹っ飛ばされてそれを見た俺が闇雲に突っ込んで心臓を貫かれた時だった。

倒れる寸前で最後に見たのは顔の古傷が浮かび上がって怒りに震えるXANXUSだった。

代理戦が終わって並盛病院で治療をしていた時は何か拗ねていたがイタリアに戻ってベッドを共にする度に何度も胸元を撫でては心音を確認してきた。

あの時に決定的にXANXUSの中で何かが変わった。


かれこれ思考に浸っていると時計を見て2時間は過ぎていた。いつの間にか随分と昔のことを思い出していたらしい。もう夜遅い・・・どうせボスは怒りを紛らす為に書類を片付けているのだろう。

こんな時間だ、疲れているだろうに早く休ませないと・・・。

スクアーロは腰掛けていたベッドから立ち上がると執務室へと続く扉の取っ手を回して開けた。
やはりというべきか、XANXUSは書斎に座って書類を片付けていた。まだ怒りが鎮まっていないのか眉間に皺を寄せて顰めっ面をしている。
俺が入ってきた事に気付いているくせに黙々と書類ばかりに目を下ろしている。

XANXUSの周りに不穏な空気が漂っていて普通なら皆恐れて誰も近付かない方がいいと思う所でもスクアーロにはムスッと不貞腐れているだけだと分かっている。

他の幹部よりもこの男の傍に居て世話を焼いた月日は長い。面倒くさいがそんな男がカワイイと思ってしまう自分はもはやダメかもしれない。

スクアーロは仕方なさそうに小さく笑った。
そのまま不貞腐れてる主に近付き背後に回って後ろから首元に腕を交差して抱き付いた。

「・・・XANXUS」

振り払われなかったけど返事はなかった。万鉛筆を握ってサインをしていた手がピタリと動きを止めただけだった。
けどスクアーロにはそれだけで十分だ。

先ほどの喧嘩なんてなかったかのように、何事もなかったかのようにスクアーロは微笑むと片腕を伸ばして万鉛筆を握る右手からそっと抜き取って机の上に転がした。

「・・・なぁ、」

抱き付いたまま呼び掛けるとまたも返事はなかったものの視線を合わせてくれた。

たったそれだけなのに嬉しくなってしまう。
スクアーロは嬉しさをそのままにXANXUSの頬や口端に触れるだけのキスをして甘えるように寝室に誘う。

「ふふ・・・なぁ、疲れてるだろ?一緒に寝てくれよ・・・。お前が居ねェとベッドが寒い・・・」

キスを受けながらXANXUSは少し考える素振りを見せたが冷静になったのか間を置いて頷いた。
頷いてくれたことにニコッと微笑むとスクアーロは首元に回していた腕を解いてXANXUSは椅子から立ち上がる。

そのままスクアーロの腰を抱き寄せて二人は寝室へと向かった。腰に回された手に己の手を添えながらスクアーロはXANXUSを見上げた。

「明日はゆっくり起きても大丈夫だろぉ?」

「・・・そうだな」

可愛らしく笑うスクアーロに釣られてXANXUSもふっと小さく笑った。




end

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