□それは秋のある日
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それは秋のある日 









日本の秋の季節ーーー、 


ボンゴレファミリーを初めとした暗殺部隊ヴァリアーは日本の有名観光地の山であるリゾート地を9代目の名の元、貸し切って訪れていた。 

古の昔から樹齢何年も経つ立派な木々が周りを覆い、秋にしか見られない紅葉が程よく紅い色に変わり初め広がる景色を美しく紅に見せて眺めを楽しませる。 

山の奥山頂に建つ屋敷の中庭の方でボンゴレ側はバーベキューの下準備をしており、ヴァリアーは各自好きなように過ごしていた。 

獄寺と山本、女子どもであるビアンキや京子にハル、ランボとイーピンは肉と野菜等をワイワイと賑わいながら焼いて手伝っていた。 

勿論、ビアンキは獄寺が倒れないように目元をゴーグルで隠している。いつもは顔を合わすタイミングが良すぎてわざとやっているのでは?と思わせるが流石にここでゴーグルを外さないのは優しさか。獄寺の反応が大袈裟過ぎて面白い、と呟いたのをいつか聞いたような・・・。 


群れることを極端に嫌う雲雀も一応は来ており、しかし皆から遠く離れた場所で木の根子に座り木に背を預けながら本を傾けている。 
骸はクロームと一緒に犬と千種の軽い口喧嘩を微笑ましそうに見つめている。メンバーは骸と過ごせることが凄く嬉しいようで常に笑っている。 

天敵同士といっていいほど仲が悪い雲雀と骸だが、最初の方にツナが二人に喧嘩とバトルは禁止!!と言われている。ツナに言われて大人しくする 
二人ではないがここで喧嘩するほど不粋ではないと二人は互いに距離を置いて過ごすことにしていた。 


しかし時折火花が散るが大騒ぎするほどでもない。 



了平はルッスリーアと何やら熱く語り合っている。 
ルッスリーアも最初はバーベキューの手伝いをしていたが了平に話し掛けられ、ビアンキ達にここは任せてと言われると嬉しそうに体をくねらせて了平と離れた。 

ベルフェゴールはマーモンを腕に抱き上げたまま逃げ回るフランを弄くり倒して遊んでいる。それをイヤそうな表情をしつつも子どもの無邪気な雰囲気が漂っていて楽しそうだ。 
黒曜ではクロームと犬とか居るが走り回るほど遊んではくれないので、まだ子どもであるフランには遊んでくれるベルフェゴールとマーモンが余程嬉しい様だ。 



各自思い思いに楽しんでいるのを見渡しながら、ツナは川を挟んで向こう側の山と繋がる橋の真ん中辺りの所で広がる紅葉の景色を見下ろすXANXUSを見た。 

9代目からは仲良くするようにと、この慰安旅行という名目のパーティーに強制的に参加させられイヤな顔をしたが拒否はしなかった。 
話し掛けても睨まれることや殺気を放つことはなくなったが、相変わらずガン無視とか短い返事だけでこっちには見向きもしない。 


他者と接触する気はないようで、XANXUSはいつも一人でいた。 
ヴァリアーの者もそれが当たり前のようで時折XANXUSに話し掛けては騒々しいのが嫌いな主の怒りに触れないように直ぐに離れ、主を一人にさせた。 

XANXUSが何もない山を、紅い紅葉しかないこの美しい景色を見て、何を感じ、何を思っているのだろうか・・・それを知りたくても今のツナはまだ微かにXANXUSを恐れていて近付ける訳もなかった。 


そう思った時、橋を渡る人がいた。 




スクアーロだ。 


人の輪から離れたXANXUSはいつも一人でいたがふと気付くといつの間にか隣にスクアーロが居ることも多かった。 
自ら人の輪に近付かないXANXUSにスクアーロはいつも何の遠慮も恐れもなく当たり前のように近付いてXANXUSのテリトリーにずかずかと入っていた。 



ス「XANXUS、ほら日本酒だぁ」 

X「・・・・・・」 


エコということでプラスチックのコップに入った日本酒を両手に、片手にあるのを渡す。XANXUSは何の躊躇いもなく受け取り、無言のままコップを見下ろした。 


ス「文句は言うなよぉ。仕方ねェだろ?ガキ共が居るし、あいつら酒なんか呑めもしねェのにウィスキーなんて強ェもん呑んだら危ねェ・・・それにお前日本酒も好きだろ。呑みやすくて」 


沈黙を不満と思ったのか、スクアーロはニカッと歯を見せて笑いながら言った。けどXANXUSは安物のプラスチックに入ってることが気に入らなかったのだが、それを言った所で何も変わらないと黙ってプラスチックのコップに口をつけた。 

スクアーロも黙り、コップを口にしながらXANXUSの隣に立って同じ景色を見下ろして眺めた。 






二人で並んでいる姿を見て、ツナはカッコいいなぁと思った。 


大人の人で、そして外国人のイタリア人である二人の顔は男のツナから見ても整っていて憧れるのだ。 

身長が高く男らしく焼けた褐色肌に、がっしりとバランス良く鍛え抜かれた肉体を持つXANXUSは威圧感を感じさせられ、容易く話し掛けられる者じゃないと直ぐに分かる。 

少なくとも日本にはこのような男はどこを探しても居ないだろう。 
しかしそれでも顔が整っていて、珍しい紅い目は人を惹き付けてやまない宝石のルビーのようで振り返る女性は多くいる。 

スクアーロも程よく鍛え抜かれているがXANXUSよりは細い方に入る。 
それでも平均の男性よりも鍛えられているが。決め付けは中性的な顔と腰以上にある白銀に輝く長髪で、横を通り過ぎればモデルと勘違いして振り返って見とれる者は男女共に大勢いる。 

髪の色も、肌の色も、目の色も薄く白に近くて冷たい印象を与えるスクアーロは神秘的なその容姿で敬遠されている。 


その二人が並べばその周りはもう別の世界となって見える。 


炎と氷・・・紅と蒼、黒と白。 

対照的な二人だというのに、何の違和感もなく当たり前のように馴染んでいることが不思議に思える。 

人を畏怖させ、親だろうと誰であろうと容赦なくカッ消す横暴なXANXUSにスクアーロは良く普通に近付き、話し掛けられるとツナは思っていた。自分は右腕と自称する獄寺でさえ、今も怖くなる時もあるし況してや守護者でボス(まだ認めてない!)は自分なのに雲雀には頭が上がらないし、XANXUS同様恐怖の対象である。 

XANXUSなんて、目が合っただけでも脚が震えてしまうのに、スクアーロは怖くないのか、本当に不思議に思うツナだった。 


スクアーロとXANXUSが出会ったのも、14才と16才で大体同じ年ぐらいだったと聞いている。 

その年で二人は既に自分たちの生き道を選んでいて、周りの大人に抗う程の強さを持っていた。二人には8年というブランクはあれど、短い間で築き上げた信頼関係で眺めてなせるものなのか。 

それほどの年月が経てば、自分ももっと骸や雲雀さんと・・・そしてXANXUSといつか分かり合えるのか・・・ツナはそれまで頑張ろうと、決意した。 








ス「・・・・・・お前の紅い目の方がキレイだな・・・」 



ぽつりと、スクアーロは溢した。 

XANXUSは景色から目を外し、横にいるスクアーロを見下ろした。 
スクアーロも景色から目を外しXANXUSを見上げると柔らかい笑みを浮かべて続けた。 


ス「この紅葉っていう紅もいいけどよぉ・・・俺はXANXUSの紅の方が100倍も好きだぞぉ。もちろん、憤怒の炎もこれよりも何百倍もスゴくてキレイだけどなっ!」 

ひらりと舞い落ちた一片の紅葉を掴み、束の方を摘まんでくるりと回転させながらスクアーロはニカッと眩しく感じる程の笑顔を見せた。 

そんなスクアーロをXANXUSはじっと見つめた。 


この景色が、憤怒の炎だと思った。 


何でも壊して、燃やして灰にしてしまう、破壊するだけの炎に。 

誰もが畏怖して近付かず、怯えて忌み嫌う炎だ。森を囲む紅い紅葉のようにキレイではないが、真っ赤なこの景色が憤怒の炎で山火事のように思わせたのをただ眺めていたのだが・・・スクアーロは知ってか知らずか、憤怒の炎を好んで触れようとする、唯一の変わり者だ。 

破壊の炎を宿すこの両手に躊躇いもなく触れてくるのも、スクアーロだけだ。 
随分と・・・長年の時もスクアーロを隣に立たせていたモンだ。 

初めて傍にいることを許した唯一の剣。 


XANXUSは紅葉を掴まえていた右手に手を伸ばすと、そっと手で包んで指を絡めて握り締めた。ひらりと紅葉が一回転して下へと落ちる。 
そんなことをされるとは思ってなかったスクアーロは目を見開いて驚いたが、きゅっと手を握られると照れて目を伏せ、頬を染めて小さくはにかむ。 

指を絡めて握り返し、頭を傾けるとXANXUSの肩に凭れ掛かり左手をそっと胸に添えながら密着して、そのまま再び景色を見下ろした。 


言葉はなかったけれど、何も言わずともお互いが分かっていた。 
何を見て感じ、何を思って前を見ているか、何を感じて隣に立っているか等・・・今なら、お互いちゃんと分かっている。 

今も、昔も・・・隣にはお互い相手だけを許していた。 






end 

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