小説(DEATH NOTE)

□『後継者』(完)
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“L”の名を継ぐと言うことは、その全てを引き継ぐと言うこと。
インターポール(ICPO「国際刑事警察機構」)に対しての絶大な権威。
今まで“L”の名で築き上げてきた地位や名声、事件に関わる中で得た世界中を震撼させるであろう機密情報の数々に世界中を網羅する人脈…‥

“L”の指先一つで世界が変わると言っても過言ではない。

しかしそれは裏を返せば、世界中を敵に回していると言うこと。

“L”の名で捕らえた極悪人は数え切れないし、その中には強力な後ろ盾を持つ大物政治家やコンツェルンの後継者、マフィアのボスや黒社会の香主と言った者も勿論居た。
お陰で“L”はその部下や身内に常に命を狙われ続けている。


“L”自身の命では無くとも、彼の持つ情報や彼自身の能力に価値を見出し、喉から手が出る位欲しがっている者は星の数程居たので――その弱みを握る、もしくは彼自身の働きや情報と引き換えに幾許かの安全を保障すると言う名目で――取込むか攫うかする為に近付いてくるのが常だった。

その攻防の中で、日々起る凶悪犯罪や難事件を解決していかなくてはならないのだ。
どんな危険や障害、突発事項にも柔軟且つ冷静に対応し、数多ある選択肢の中から最高最良最善の選択をし、迅速且つ完璧に問題を解決する能力を有していなければならない。

時期が早まった、ただそれだけの事――と言うには随分と大きすぎる問題を内包していたが――それを払拭出来ないようであれば、それはもう“L”ではない。

“L”を名乗るに相応しくない、と言うこと。
それは「彼等」にも十二分に分かっている筈だった。


……“L”は、ごく冷静に非情とも言える決断を下していたがそれでも、自らが世界中から探し出して育て上げた二人の後継者候補の、厳しい未来を憂えて微かに胸が痛むのを感じていた―…‥

 
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