【カオス企画SS】
□『遅れてきたクリスマス』
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『遅れてきたクリスマス』
2004年になった新年早々。
僕、夜神月の住む家のそこら中に監視カメラと盗聴器が付けられた。
夜神家の誰かが――もしかしたら僕一人だけかも知れないが、“キラ”ではないかと“L”の捜査上に上ったからだ。
僕は“キラ”ではないと証明しなくてはならない。
その為に、監視の目をかいくぐって犯罪者を殺す為の小道具の一つに小型テレビを用意した。
一度きりで使い捨てしたその小型テレビがどうやら欲しかったらしいリュークに、
「本当に自分の為なら手段を選ばないと言うか、気前が良いと言うか…
あの小型テレビ39800円だったのに…捨てるものなら欲しかったなー」
延々と何度も同じ言葉を繰り返し聞かされた。
放っておけば言わなくなるかと思いきや、捨ててから日にちが経ってからも思い出したように、
「勿体無い」
とか
「あれがあったら…」
とか呟くリュークに、苛々も最高潮だった僕。
この時には監視カメラも盗聴器も外されただろうと確信していたが念の為、苛々しつつも外出して人気の余りない公園に向かった。
公園には世間話に興じる暇な主婦や子連れがまばらに居たが、人のいない奥のベンチまで移動してから、僕は口を開いた。
「…リュークが小型テレビなんて手に入れてどうするんだ。
第一、死神がテレビなんて見て良いと思ってるのか」
それに対しリュークは、
「盗聴器とかカメラは無くなったし、ライトが構ってくれない時にでも一人で見たかった」
この前、食事時に点いてた番組が面白かったからそれを見たいのだ、と真面目な顔をして力説してくる。
「僕の部屋にテレビはあるじゃないか」
「勉強してるときや何かに集中してるときは駄目ってライトが言ったんだぞ。
その点、小型テレビなら隅っこ持ってけるし」
勘弁してくれ…と思いつつも、
「“証拠”を残しておく馬鹿がどこに居るんだ…」
あんな小型のテレビが見つかったら、どうやって殺す相手の顔を確認していたのかすぐにばれるに決まっている。
僕がうんざりと答えるとリュークは能天気に、
「隠しておけば見つからないかも」
……だとぅ?
「馬鹿も休み休み言ってくれ!
もし次に監視の目が入ったときに見つかるに決まってるだろ!!
見つかった時に、ますます疑われること間違いなしだろ!!」
「でも…」
「しつこい!!」
なおも言い募るリュークに思わず大声で怒鳴った。
次の瞬間、ハッとして周りを見回すと、
「あのお兄ちゃん、なんかひとりでおこってるよう、ママー」
「しっ見ちゃ駄目よ」
「あの男の子、何一人で叫んでるのかしら…」
「結構な美少年なのにねえ。まあ格好は……だけど」
「ホントねえ、可哀想に…」
周囲のおば様方の奇異と同情の眼差し。
あああぁぁ!!
誰かーこの死神殴っても良いですか…ッ?!
頭を掻きむしりたいのを必死で堪え、怒りの余り涙目になっている僕に、リュークはこう言った。
「だって…くれるって言ったのに買ってくれなかったじゃないか…
“ゲー●ボーイアドバンスSP”のシルバー」
「それでかーーーーー!!!!!」
――結局、クリスマスから半月程遅れて、僕はプレゼントを買わされて。
鍵を閉めた僕の部屋からは、ゲ●ムボーイのピコピコ音が今日も聞こえているのだった。
…最初は音無しにさせてたのだけれど、
音がなくて面白いのに面白くないと、おかしな踊りを一晩中するようになったので、最小の音量で手を打ったのだった。
〈終〉