小説(DEATH NOTE)

□『後継者』(完)
2ページ/3ページ

時期尚早なのは分かっている。

この決断を下す為には余りにも――時間やそれについての理解、彼等が得るべき知識や最低限必要な経験等、ありとあらゆるモノが絶対的に不足していた。
本来なら――彼の計算では少なくとも――後三年の月日は必要だったので。
「ソレ」はそうそう安易に決められる事柄ではなく、彼自身の短くはない人生に於いても三本の指に入る重要な事柄だった。
……重々分かっては居たがしかし、“L”にはもう、時間が残されていなかった。


決断は“L”の手に委ねられていた。
それを他の人間が肩代わりすることは出来ない。

他ならぬ―――彼自身の後継者を選ぶものだったから。

彼が“L”の名を他者に譲り退くことは、誰にも知られる訳にはいかなかったので、他人の手を借りられる筈もなく。
“L”自身を知る数少ない者にも一切明かさず、全ては秘密裏に進められていた。
それ故、後継を選定・養育していると言うのは彼自身と執事一人しか知らぬことだった。


〈―――ここで、崩れるようならどちらにしてもLの名を継ぐ力は無いということだ―――〉


そうなれば、“L”はこの世から消え去る。
しかし、「LがLとして」存在し得ないならば、その価値は塵に等しい。いや、それ所か害悪にしかならない。

〈―――それならばいっそ“L”の名諸共全て消滅すべきなのだ〉

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ