僕は運命に抗う(エース寄りのクラサメ落ち)

□お兄ちゃん
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無駄に広い院内を駆けまわること30分。

――――居た。
クリスタリウムで資料を読んでいるらしい師匠の周りに、人は居ない。
チャンスだ。師匠に話をしに行かないと......

そう思い、足を踏み出した時だった。
いきなり師匠が立ち上がり、奥から3番目の書棚の前に立った。

そして。
師匠が触れると、音も無く棚は横に動いた。
一瞬驚きのあまりぽかんとしてしまったが、滑るようにして中へ入る師匠を追いかける。

「師匠、待って下さい!」
「ゼロ!?」

棚は思いのほか重く、間に挟まれそうになる。

「きゃっ!」

すると師匠が手を伸ばし、僕の腕を掴むと自分の方に引き寄せてくれた。
とすっという軽い音がして、師匠の胸にぶつかる。
やたらボタンや紐の多い軍服は痛かった。

「すっ、すみません師匠。......あの、お怪我は?」
「大丈夫だ。お前の方こそ、周りをよく見て行動しろ。......昔から言っているだろう。」

師匠に起こされ、体勢を立て直す。
久々に見る師匠のお顔は、やっぱり綺麗で。
またお会い出来たことが夢のように思えた。

「そこに座っていろ。もうじき部屋の主が帰って来る。」
「はい。」

薬品のにおいが鼻を衝く。
周りを見回すと、一面に怪しげな器具や装置が並べられている。
黙って近くの台に腰を下ろすと、溜息をついた。

「あの、師匠......」
「何だ。」
「まさか師匠が僕たちの隊長だなんて、思いもしませんでした。師匠は、僕が0組に居ることをご存じだったのですか?」
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