嘘つきちょこれゐと(イルミ落ち)

□空気読め。何故雪国じゃないんだ。
1ページ/2ページ

イルミside

もうすぐ婚約者がやって来る。
今までもそういう奴は腐るほどいたけど、全部殺しちゃった。家柄とか関係ないし。

昨日の夜、親父にどうして今回は殺らないのかって聞かれた。
んー。正直、自分でもよく解らない。

一応、相手の顔は知ってる。
何年か前まで、よく家に来てたから。その時は、キルやアルカ、執事見習いとかと遊んでたな。

ただ、オレと接点は無い。ミルやカルトもそうだ。特にカルトは小さかったし、母さんにべったりだった。あんな貧弱に付き合うわけない。

「父さんは、最近の彼女を知ってるの?」
「いや。あいつの親父とは、よく依頼がかぶるんだがな。マリーのことは知らん」
「マリーって何」
「マリカ。お前の嫁さんのことだ」

ふーん、と適当に相槌を打っておく。
親父が家族以外をあだ名で呼ぶなんて珍しい。昔は娘みたいに可愛がってたからな。
偽装結婚の相手にあいつを選んだのも、彼女に会いたいからかもしれない。

なんかムカつく。


――――コンコン

ミケを撫でたりして暇を潰していたとき、ドアが控えめにノックされた。

「入れ」横に座る親父が、ドアに声をかける。ちょっと声低すぎないんじゃない?
さっきまで完璧な絶"状態だったのに、親父が反応した瞬間から、オーラが震えてる。

......こいつ、ビビリか。

「しちゅ......ゴホン、失礼します」

噛んだよね。

「おっ、おじさま......じゃなかった、シルバ殿。イルミ殿も。ご無沙汰しております、マリカ・クラウディア・ロウです」

なんで、夫になるオレを先呼ばないの?
しかも何この格好。家を舐めてるわけ?
このハッピ執事。意味分かんないんだけど。

あーあ、親父のお気に入りだからって殺るの躊躇っちゃったけど、さっさと消しとくんだった。

「よく来たな。ここに座れ」
「どどど、どうも」

ロボットみたいにぎこちなく近づいてくる。
前髪のせいで顔は見えないけど、こいつ、こんな男っぽかったけ?

少なくとも、記憶の中のこいつはこんなんじゃなかった。母さんみたいな格好して、髪もどっかの王族ばりに巻いてたはずだ。
何だか、また弟が増えたように感じる。

「ねぇ、キミいくつだっけ」
「イルミ。挨拶が先だろう」
「あっ、いえ、お構いなく......18です」
「あっそ。オレは24。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします......」

ここまでずっと下を向いたまま。
いい加減顔が気になって、席を立ち顎に手をかけた。

「ぎょえ!!?」
「黙って。それと、どこを取っても色気の欠片も無いんだね」
「すいません......」
「ふーん、顔は整ってるんだ。眼、赤いんだね。カルトと一緒」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ