僕は運命に抗う(エース寄りのクラサメ落ち)

□prologue
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――――炎上する建物の間を駆けるは、朱色のマントを纏った男。
「クソッ」
まだポイントは見えない。煙で霞んだ視界に映し出されるのは燃え上がる街と累々と横たわった屍。

顔は潰されていないのに、誰だったのか思い出せない。
足がもつれ、盛大な音を立てて転んだ。痛みに顔を歪めながら膝をつくと、遠くから銃声が聞こえた。

「マズい......今のオレに魔法は使えない。これで切り抜けるしか......」
血まみれの手で掴んだのは、朱雀軍制式の長剣。扱いに長けている訳ではなかったが、今の自分に武器と呼べるものはこれしかなかった。


勇気を奮い起し、全速力で白虎の白いボディアーマーを目指す。この状態で敵陣営に突っ込むのはあまりに無謀だが、こうする他生き延びる手段はない。
じっとしていてはジリ貧。――――ならば。

「敵襲!」
敵が叫ぶのと、目の前の男の胸を貫くのとが同時だった。「どすっ」という鈍い音がして、敵兵の胸がえぐれる。
辺りに生温かい鮮血が飛び散り、血飛沫の中、男は再び走り出した。

背後から無数の銃弾が襲ってくる。
息をつきながら路地裏に転がり込み、横薙ぎに剣を振るう。
――――それは運良く敵の喉笛を引き裂き、銃声も止んだ。

「はぁ、はぁ......エース、ゼロ......お前たちは今、何処に居るんだ......?」
もう合流地点にたどり着いているだろうか。あいつらのことだ。
とっくに敵を蹴散らして、あの場所で待っているだろう。

とにかく急がなければ。
懐に手を突っ込むと、確かに手に触れるものが有った。
彼らに“これ”を届ける。
この戦争の行く末を左右するかもしれない、大切な大切な魔法道具だ。

それが今、オレに与えられた使命。命に代えても果たさなければならない責務なのだから。
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