親愛なるリリーへ

日本ではとっても暑い夏が続いていますが、イギリスではどうですか？おれとセブルスは元気です。セブルスが日本に来てから二週間が経ちました。おれは毎日セブルスと過ごせて、すごく楽しいです！リリーはどうですか？セブルスがいなくて寂しいですか？おれは、セブルスがスピナーズ・エンドにいた時、すっごく寂しかったから、きっとリリーも寂しいよね。あ、でもお姉さんがいるから寂しくないのかな？
始めは時差ボケのせいで辛そうだったセブルスも、今はすっかり日本に慣れてきっています。ビックリするのは、セブルスが毎日を涼しげな顔で過ごしていることです。日本に慣れてるおれですら、グッタリするような暑さなのに何食わぬ顔で過ごしちゃうセブルスってホントに人間なの？って思っちゃったり思わなかったり。
まだビックリすることがあります。セブルスが、たった二週間でお箸の使い方をマスターしちゃったってこと！！今では豆粒も上手につまんでるよ。すごいよね、セブルスって。
あっ、あとね、セブルスはこっちに来てからずっと日本語で過ごしています。翻訳ネックレスもいらないって言って、英語を一切断ち切っちゃってさ！！聞き取れなかったり、理解できなかったことだけを英語で解決するんだ。でもね、次にはもうマスターしちゃってるんだよ！まだ発音が日本語っぽくないとこもあるけど、きっとそのうち日本人みたいにペラペラになっちゃうと思うな。さすがセブルス、カッコイイよね！！
今度はリリーも日本においでよ。リリーなら大歓迎だ！！！セブルスとリリーと三人で花火大会に行けたら絶対楽しいと思うんだ。花火大会にはね、たこやきとかお好み焼きとか、焼きそばとかりんごアメとか、綿菓子とか美味しいものがいーっぱいあるんだ！！金魚掬いとかもあるんだよ！！あ、ひよこ釣りとかいうのもあるけど、ちょっと可哀相だよね。
おれの母さんは、小さい頃にひよこ釣りを横からじーっと見てたらおじさんからひよこ貰ったんだって！ぴーちゃんって言ってね、大事に大事に育ててたみたいなんだ。段ボールの中で育ててたらしいんだけど、ぴーちゃん、元気に跳ね回って縁側（外国でいうバルコニーみたいなとこだよ）でウロチョロすることが多くなってね、母さんは「もー、ぴーちゃんダメでしょ」って言いながらいっつも段ボールの中に戻してたみたいなんだ。だけどある日、ぴーちゃんがいつもの様に縁側でウロチョロしてたら、猫がくわえて持って行っちゃったんだって。ぴーちゃんの「ピーピーピーピー！！！」って声が遠ざかっていくのを泣きながら聞いてたって話を聞いて･････ちょっと、泣いちゃったよ。だって、･･･････ぴーちゃん･･･････
だからね、絶対にひよこ釣りはしないって決めたんだ。
･･････って何の話してるんだろね、おれ。まあ、取りあえず、夏休みをお互い満喫しようね！！じゃあ、またね！

リュウヤより

リリーへ

元気にしてるか？僕はまあ、それなりに元気にしてる。リュウヤがリリーに手紙を書こうとうるさいので、リュウヤの隣で手紙を書いている。
僕はイマイチ手紙に何を書けばいいのか分からないが、他愛ない話をしようと思う。
日本の夏は暑い。ジメジメしている。だけど、不思議と嫌いじゃない。リュウヤのネックレスみたいな澄み切った青の空は、イギリスではあまり見られない色をしている。リリーにも見てほしい。
リュウヤの家には大きなヒノキ風呂がある。とても気持ちがいいぞ。食べ物も美味い。いつかリリーも日本に来れるといいな。
（きっと君も来れたら楽しいだろうな、と書いてある場所はなぜかグシャグシャに消してある）
あー･･･隣でリュウヤがすごい勢いで手紙を書いているが、何をそんなに書くことがあるんだろうな。日本での生活は、楽しい。リリーに言いたいのはそれだけだ。日本土産を買っていく。お元気で。

セブルス

クタクタなフクロウが運んできた二通の手紙をリリーは、微笑みながら読んでいた。二通とも二人らしかった。いつもの遊び相手が遠くに行ってしまってから、毎日が少しだけ楽しくなかったため、リリーはこの手紙がとても嬉しかった。

「いいなあ、セブ。私も日本に行ってみたいわ」

少し口を尖らせて呟いた言葉は、日本にも繋がっている空に小さく消えた。