book~鬼灯
□バカはどっち
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「バカっ!」
「カバ」
「違う!!そうじゃない!」
「…は?」
今日は衆合地獄へ視察へ行く日。
鬼灯はただただ普通に花街を歩いていた。
その途中、お香に話しかけられ、ただただ普通に話していたら、何故か突然現れた白澤に「バカ」と言われたので、また例のしりあげあしとりだと思ったのだが。
「何でお前ここにいんだよ!」
「いや、そのセリフそっくりそのまま返しますよ」
「僕は妲己ちゃんの店に行くんだもん!」
「そうですか、本当にろくでもない色魔ですね」
「いやそうじゃなくて!」
「………………」
何だこいつは。何なんだホント。
わざわざ女のもとへ行くと、そんなことを言うために私のとこへ来たのか。
鬼灯は思わず眉間にシワがよる。
「まぁまぁ、鬼灯様!ここは穏便に、ね?」
見兼ねたお香が鬼灯に話しかけるが、もとより今はケンカする気などない。
鬼灯は盛大に溜め息をついてから、閻魔庁に帰ろうと、踵を返そうとした。
「いや、待ってよ鬼灯!」
「……何ですか」
振り返らずに立ち止まる。
「ちょっと話しあるから」
いつも軽薄な白澤にしては珍しい、真剣な声色だった。