☆月少野崎くん☆SS

□いつも僕は恋するんだろう
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ある日の部活終わり、たまたま鹿島と一緒に正門を出た。
流れで一緒に帰る。話すのはいつも通り他愛もない話。テストの事とか次の文化祭のこととか。
いつの間にか一緒にいるのが当たり前になってしまった。
部員にはセット扱いされている。

そういえば、俺が引退したら次の部長は鹿島を引っ張っていけるのだろうか?いや、むしろ部長として成立する後輩はいるのか…
演劇部を引っ張って行くに相応しい人物…鹿島以外考えられない。
だがこいつは俺が居ないとサボりまくるからな。

ふとそんな疑問が浮かんで、鹿島に聞いた。


「俺が引退したら、誰に部長を頼めると思うか?」
「え?部長が引退したらですか?石井とかどうです?」
「確かにあいつはしっかりしてるが…お前を部活に引っ張って行けると思うか?」
「あはははは!先輩は心配性ですね。心配しなくても大丈夫ですよ!私、部活辞めますからっ!」
「……は?」
「ですから、先輩が居ない部活なんて面白くないじゃないですか。だから私も先輩の引退と同時に辞めます」


こいつは何言ってんだ?
馬鹿じゃないのか、俺が引退したら辞めるだと?


「先輩は私の全てですから、先輩の後を追いますよ〜!」
「おま、じゃあ誰が花形やるんだよ!女子はお前が王子様やるの楽しみにしてるだろうが!お前以外に王子がつとまるかよ?!」


照れ臭そうに、ありがとうございます、と鹿島は言った。


「でも、やっぱり先輩がいない場所で演じても意味がないんです。」


不覚にもきゅんとした。
こいつがそういう意味でいってるわけじゃないのは分かってる。

気付くともう鹿島の最寄り駅だった。


「じゃ、先輩。お疲れ様でした。」
「お、おう。」


俺は鹿島をうまく説得できないまま、電車の中から軽く手を振る。
俺があいつに抱いている感情に気付かずに鹿島は嬉しそうに手を振りかえしてくれた。
あまりに無邪気に手を振るもんだから、なんだか少し切なくなる。
俺はお前にとっての全てなんだよな?
期待したら、あとあと傷つく事になるかもしれない。
今はまだ、その『全て』という意味に気付いてないだけなのか?それとも一生俺は俺の望まない存在のままなのか…?
早く気づいてくれよ、俺の気持ちに。
なぁ、鹿島。
お前が俺に嬉しそうに笑いかける度、俺の胸の奥の方が切なくなるんだ。
俺は毎日のようにあいつの無邪気さに恋し、その想いに気付いてもらえない寂しさを噛みしめる。


fin.

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