夢想曲1

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ぱちり。

目を覚ましてそのままの状態で辺りを見渡す。


…どこを見ても真っ白な部屋?で、隣を見ると同じ学校、学年、クラス、部活、とキモイくらいに一緒な津川がスカーっと寝息を立てて眠っていた。


よだれ垂れそうだよ津川。なんて思いつつそのおでこに向かってチョップをした。

「んがっ」とかちょっと寝息変わったけど知らない。そのまま眠り続けるもんだから余計に知らない。


そこで起き上がって白で覆われている此処を再び見渡す。

家具が一つもないどころか扉も照明もない。なのに明るい。白いから?いやいやどこかしらに電気あるだろこれ。


窓もないのにどうしてここまでくっきりと周りが見えるんだよ…

ハッもしかして部屋全体が照明に…!?なわけないよねもしそうなら眩しすぎて目ぇ開けれないわ逆に。


しかし、どうして私はここにいるのか。

確か部活終わりでバスに乗ってて…いい感じな揺れをだす運転手に最高だよアンタと思いつつ眠気に逆らうことなく寝た。

それで目が覚めたら知らない場所で自転車通のはずの津川と仲良しこよしで寝てたってこと?


なるほどわからん。

とりあえず私だけじゃどうにもできないので近くにあった津川の鞄を持ち、それを振りかぶって津川の腹に直下。



「あっさでっすよーっ!!」

「ぐえぇっ!?」



蛙が潰れたような声をあげて飛び起きると辺りをキョロキョロと見渡して私と鞄を見て苦笑い。



「雨倉かよ…」

「何だそのため息…そんなことより、此処から出ようよ」

「んお?何ここ?」

「知らない。バスに揺られてたら眠くなって目が覚めたらここだった」

「オレ家に帰った途端急激な眠気に襲われた」

「…共通してることは急な眠気かぁ」



なんでだろうねーと言いつつ壁があるか手を伸ばしながら何かないか捜索するとこの部屋はそこまで広くない。

ざっと4畳半くらいしかなく結構狭い部屋なんだな、と津川の呟きに同意した。


ふと上を見上げると一つだけ丸く赤いボタンがあった。

なんであんなところにあるんだよ。意外と小さいせいかさっきまで見えなかった。



「津川!赤いボタンあった!」

「おぉ!でもオレじゃ届かないなー…雨倉土台になる?」

「どう考えても逆ね。ハーフパンツある?」

「ある。肩車なー…雨倉重いから嫌だなー」

「あっはっは安心しろ男子高生より軽いから」



ただこのボタンを押した後に何が起こるか分からない。

そこを踏まえたうえで肩車をしてボタンを押した直後におんぶに切り替えようという話になった。

津川の鞄から出てきたハーフパンツを受け取りスカートの下から履く。そこでちょっとした問題を発見。



「っ津川…」

「ん?」

「見てこれ男子サイズのハーフパンツのサイズの合わなさ」

「ブフォッ!!!あっははははは!!膝隠れてる!!!雨倉ちっせぇもんなー!」

「小柄だと言え!何回か捲っていい?」

「いーよいーよ、動きづらいだろーし」



普段ならもう少し、いやもう暫くいじってくる津川でも早くここの正体を知りたいのだろう。

何が起こるか分からない。そもそもここが何処で私達だけなのかそうじゃないのかすら分からない。

そんな時にいつも通りはしゃいでくださいなんて無茶振りなのだろう。そう思いながらスカートのひだを直してパンッと払う。



「よっし完成!!」

「マジでハーフパンツ履いてる?捲くった分の厚みまったく分かんないんだけど」

「いやこんなモンだよ」

「女子こえぇ……」



まぁ確かに女子の友情関係は恐いかな!と笑顔で言いつつも津川に肩車をしてもらう。

まだ完全に態勢が整ってないのに立ち上がった津川のじょりじょり頭に肘鉄を食らわしながらボタンを見る。

これくらいの距離なら少し勢いづけて腕を伸ばせば届くだろう。



「さぁ出陣だTHUGAWA号!!!」

「どんなノリ?振り回していいの?」

「いやボタンのところ行こうぜ」

「え?ボタンのところ着いたらジャンプしろって?重いけどやってみるなー」

「話聞けよ!!!つかこのままジャンプしたらお前の首死ぬぞ!!」



ケタケタと笑う津川はやっぱりいつもと違いありませんでしたまる
 
 
 

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