夢想曲1
□02
1ページ/1ページ
津川に肩車をしてもらって赤いボタンのところまで歩き、ポチッと押す。
すぐにおんぶに切り替えてみたものの、何も起こらない。
押した意味は?てかボタンの意味あんの?つまんねーと言いながら降りて一応部屋を捜索する。
すると津川が見つけた!と言ったのでそこに行くと、壁が微かに凹んでいた。
「うわ微妙」
「目悪い人だったら見つけられないよな」
「津川ならこういうのやってそう」
「えーオレだったらボタン押したら天井から虫が大量に落ちてくるようにするって!」
「なにそれキモイ」
その部屋に雨倉を入れて隠しカメラで騒いでるの見て爆笑したいなぁといい笑顔で言う津川の足を踏む。
あっくそ避けやがった。
そんなことを話しつつ凹んでいる部分を横にスライドするか押すのか分からないので最初に押してみた。
押した直後にシュインッという音と共に白い壁の一部が自動ドアのように開いた。
いや、正確に言えばアニメなどでよく見る宇宙ステーションの自動スライドドアのように開いた。
真っ白な部屋の外はどこかの洋館のようで電気が点いていて光が一切ないというわけではなさそうだった。
けど私と津川はキラキラとした顔でお互い顔を見合わせて声を揃えて言った。
「「宇宙ステーションだーっ!!」」
「見た?さっきの見た!?」
「シュインッていったよな!!この部屋の外洋館なのにシュインッて!!」
「他にも部屋があったらこんなんなのかな!?」
「それはそれで見たい!!」
「てか開けたい!!」
やっべーかっけーとはしゃぎつつ散策開始!!と言って白い部屋から出て廊下を歩き始めた。
所々壁は汚れているのを見て築何年なんだろーねと話しつつ長い廊下を歩く。
最初の曲がり角が見えてそこへ歩いている最中に空中にフワフワと浮いているネジを見つけた。
何故ネジ?なんで浮いてんの?ネジの周りだけ無重力空間なの?と思いつつネジを触ると普通に触れれた。
とりあえず制服の内ポケットに入れておこう。
曲がり角を曲がった暫く先に綺麗な白いドアとその先に凄く見覚えのある後姿を見つけた。
その人は廊下に座り込んでいてボケーッとしていたので津川と顔を見合わせて曲がり角を戻ってからコソコソと話す。
「出だしどうする雨倉」
「よし…飛び蹴りでいこう」
「あの人に命中したとしてもすぐ足引っ掛けて固め技してくるじゃん。ワサビがあればなぁ」
「目に当てて苦しませる手か…あ、私あれやりたい。卍固め」
「じゃあオレが思いっきり飛び蹴りするからその後に卍固めしてよ」
「おっけー」
正邦高校は体育の授業数が意外と多く設けられている。
しかもその内容はバレーやサッカー、バスケなどよくやるスポーツの他に武術も教えられる。
とはいっても女子でこの授業をとる子は少ないのだが勉強があまり得意でない私にしたらこれしかなかった。
武術と言っても実は纏まりはなく、柔道・空手・プロレスなど様々な技を習うことが出来る。
ちなみにバスケ部は全員とってるんだよこの授業。すごい偶然だよねー
それでも私は筋肉の付きが悪くてパッと見弱そうだと言われ続けている。
ちゃんと筋肉あるもん。贅肉じゃないもん。力こぶだってあるもん。男子の筋肉のつき具合が異常なだけだよ!!!
それはそうとあの人に仕掛ける作戦も決まったところで津川が部活でも使っているナンバ走りで近づき、飛び蹴りを食らわす。
「う゛っ!!?」と悲鳴をあげたかと思いきやそのまま痛みに堪えていたのであれ?と疑問に思う。
「雨倉なにしてんだよ早く!」
「あ、うんっ」
少し態勢を戻して立ち上がろうとしていたのでハッとしてダッシュでその人のところに行く。
すばやく先輩の横に行き腰側にある片足を先輩の手前側にある足に絡め、頭側にある足を先輩の頭部に引っ掛けた状態で、
先輩の片腕を先輩の背中側に直角に曲げ自らの肩腋に抱え込む。
力をぐっと入れると情けない悲鳴を上げるので津川があっはっはと笑う。悪魔かこいつは。
「まだ?」
「ちょい待ち、あと3秒…」
3,2,1…とカウントして0と言った所で先輩がガクッと落ちた瞬間、ボフンッと音と煙を立てて消えた。
突然の出来事に私も津川もポカーンとする。
…え、消えた?