夢想曲1
□03
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ボフンッと音と煙を立てて消えた先輩のいた場所を見て数秒…津川と顔を見合わせてから
「……、消えた?」
「…えぇぇぇええええええっ!!?消えたぁぁぁ!!?」
「人間って消えんの!?」
「ハッまさか…忍術!?」
「んなワケないっしょーバカだねぇ雨倉」
さっき卍固めで落として消えたはずの先輩がピンピンして近くにあった白いドアの部屋から顔を覗かせていた。
「「春日先輩!」」
「先輩!先輩いつから忍術使えるようになったんですか!?」
「だから使えねぇってのー。さっきのはオレに化けた偽者なの、分かる?」
二人揃って首を傾げていると春日先輩はまぁ一旦部屋に入ろうと言ったのでその部屋に入った。
部屋の中はタンスや机など家具がありちゃんとした部屋だった。
更に、春日先輩だけでなくハニーフェイスのイケメンとオタマロのイケメンもいた。なにこのイケメン率
そんなことを思いながら一度円形に座って春日先輩たちが考えている此処についての仮定を聞いた。
「見た目は洋館っぽいけど、異空間にいるんじゃねぇのってオレらは踏んでる。
何でかっていったら最初に目を覚ました部屋からこの部屋に来るまでに腕のないゾンビみたいな怪物に襲われたんよ。
普通その辺の洋館にゾンビとかいたら日本中ってか世界中がパニックになって騒がれるしょ?
それにどうしてオレらがこんな所にいるのかも分からないし廊下には窓も一切ない。そんな建物見たことないしなー
んでそいつから逃げてこの部屋に隠れたんだけど捜索して此処についてのヒントは特になかったから出ようとしてたわけ。
けど…それまで居なかったオレに化けたアイツが居たから息を潜めてて機会を窺ってた」
それで、雨倉と津川はアイツが何持ってたか見えてた?と聞いてきた春日先輩に首を横に振る。
春日先輩の口調で考えるとさっきの春日先輩(偽)は何か持っていたのだろう。
もしかしたら私と津川が来ていることを感じて死角になるように何か持っていた?
私たちがそれに気付かずに近づいたところを持っていたもので襲う魂胆だったのだろうか。
そう考えると私と津川って相当なチャレンジャーなんじゃないの?と思ったが黙った春日先輩にそんなことは言えなかった。
言いにくそうに口を開いては閉じるを繰り返す春日先輩に痺れを切らしたのかオタマロが言った。
「…べっとりと血がこびり付いた包丁を持ってたんだよ」
「「……え?」」
「やっぱ見えてなかったのか…いつ出るか考えてた時にお前らが来て飛び蹴りや卍固めして消滅させた時は驚いたぜ」
「本当にな…もしアレが春日じゃなくてオレやコイツだったらどうすんだよ」
「……最初に声かけてたかもしれないです…」
「やっぱりか。慎重になれ焼くぞ」
「「え?」」
そしてオタマロさんにも後先考えてから行動しろよバァカと言って頭を小突かれた。
あぁ…ツンデレなんだオタマロさんは。もしもの場合を考えて心配してくれたんだと思い文句は言わなかった。
ふとここで二人の名前知らないや、と思い自己紹介をすることになった。
「自己紹介しません?」
「は?」
「あー、オレら3人は同じ学校の先輩後輩だし分かってるけど二人は違うもんねー」
「あぁ…秀徳3年の宮地清志だ」
「霧崎第一2年花宮真」
「こっちの坊主が正邦1年の津川智紀で、こっちの猫ッ毛が同じく1年の雨倉双葉ね」
「宮地さんって童顔っすよね!」
「あ゛ぁ?いきなり何言ってんだよ轢くぞ」
「えぇー?無免許運転はダメっしょー!」
「おい春日。こいつ轢いていいか?いいよな?」
「まぁまぁ落ち着きんしゃいー」
津川がいつものペースで早速宮地さんをいじり始めたのでキレる宮地さんを春日先輩が抑える。緩いけど。
その傍らで花宮さんはため息をついて私は苦笑いをする。
すると花宮さんがちらりと横目で私を見てずっと思っていたのか質問をしてきたのでそれに答える。
「…おい、お前」
「雨倉です」
「アイツに物理攻撃が効くってのは分かってなかったんだな?」
「はい。普通に先輩だと思ってましたし」
「普通は先輩に奇襲しねぇだろ」
「ウチの学校ではそれなりに普通なんですぅーまぁでも物理が効くって分かったのは良い収穫じゃないですか?」
にまっと笑ってそう言うと花宮さんは少し目を見開いた後にふはっと鼻で笑って未だに騒ぐ3人を止めろと言った。
か弱な乙女をあそこに投下するなんて花宮さん酷くないですか?と言うと卍固めできる奴が何言ってんだと返してきた。
それはそうと…いつ言おうかな。
うん、早めに言ったほうがいいのかもしれない。かもしれないじゃなくていいんだけど……
いきなり言っても混乱招きそうなんだよなーでもなー
考えた後にうん、手遅れになりたくはないし言おうと決心した。
騒ぐ3人と隣に座る花宮さんに聞こえるように注目ーと言ったら全員がこちらを見たので危険を知らせる。
「何?」
「此処にいるままもアレだし他にも人がいないか調べるために5人で探索に行きましょうそうしましょう」
「あんまり固まって動くほうが危険じゃね?」
「本当はそうなんですけどあんま悠長なことも言ってられないんですよ」
「と、言うと?」
スッと部屋の隅の方の天井を指で指す。そこをみんなが見た直後、冷や汗をかき顔色は悪くなる。
私が指差した隅の方の天井からは、長く黒い髪が伸びていた。
何の、とは考えたくもないがソレは私たちを待つことはなく徐々に、だけど確かに伸びてきている。
ずるずると音を立てながら天井から直線に伸びているのを見て気のせいでありたかったと思い眉間に皺が寄った。
大人しく天井の隅っこで黒ずむだけでよかったものを何で伸ばすの主張すんのふざけんなよどこのホラゲーだ。