夢想曲1

□05
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廊下にいるままでまた怪物に遭遇したら大変だということでどこか安全そうな部屋に入ろうという話になった。

廊下を歩いている際にメガネコンビと自己紹介をする。



「えーっと、誠凛の主将さん、ですよね?」

「あぁ。誠凛2年の日向順平だ」

「そっちは…」

「秀徳1年の緑間真太郎なのだよ」



その懐中電灯なに?と聞いたらおは朝を見ていないのか?と言われた。


おは朝ってあれだよね。凄く当たるけどラッキーアイテムが鬼畜っていう…トーテムポールとかストーブとか。

宮地さんが黙った私に試合の日にも信楽焼を持ってくるぐらいだと教えてくれた。うん…変人だ。



「緑間もいるっつーことは高尾もいんのか?」

「さぁ…ただ、さっきまで赤司と黒子も一緒でした」

「黒子…って津川がディフェンスできなかった子か!!あ、逃げられたのが正しかったっけ?」

「次は絶対に抜かせないし」

「そうそうあの影薄い子〜」



津川がムスッとして春日先輩が肯定した。

あの時はビックリして記録してたペン落としたもんなー…とんだびっくり技だわミスディレクション…


ちなみに緑間くんが言っていた赤司という子は京都の洛山の生徒らしい。

…バスケ強豪校じゃないですか……偏差値も高いじゃないですか…!!!



しかし、そんな遠くに居る子も含めてどうしてこの洋館、春日先輩たちが言う異空間に居るのだろうか。

誰かの意図だとしても私たち全員に関係があるのか?…まだまだ分からない。



「…花宮さん」

「なんだよ」

「現時点で考えられる私たちの共通点ってバスケですよね…」

「そうだな。もしかして今更気付いたのか?」

「少し前に気付きました。…けど、全員狙う必要性ってあったんですかね…?」

「まだこの洋館からの脱出についてのヒントは一つも見つかってねぇから何とも言えねーな」



ただ、この洋館を歩いて内装を知るほど不気味さは少しずつ増していってるけどな。

そう言った花宮さんは小さく舌打ちをして普通、窓が設置されているであろう壁を睨みつけていた。


最初に居た部屋から出て歩いた時から違和感は感じていた。

けど、まだ何も見つかっていないし何も分かっていないんだ。……早く帰りたいなぁ…


そんなことを考えていると白色ではなく水色のドアを見つけたので誰が開けるか、という話になった。



「ジャンケンは?」

「まぁ…それが妥当だな」

「「「「「じゃーんけーん…」」」」」



ほいっ!!と言ってみんなが一斉に手を出す。

…わぁこれなんてミラクル?一切打ち合わせなんてしてないんだけどなー……日向さんの一人負けでした!


くっそ!!!と悔しがる日向さんをみんなであっはっはと笑う。緑間くん笑わなかったけど。

一度深呼吸をしてから開けるぞ?と言いながら意を決したようにバンッとドアを開けた先には……



「キャップテーン!!ってきゃぁぁああ!?」

「「避けて投げた!!?」」



今度こそ本物であろう主将を見つけて他の人には目もくれず一目散にタックルをしに行った。

が、スッと横にズレて私の勢いを殺さないまま腕を掴んで容赦なく少し遠くにあったソファにブンッと投げつけられた。


うっうっ…酷い……私は私なりに主将に甘えようとしているだけなのに返ってくる愛が重い!!!

などと心の中で茶番を繰り広げていると後から入ってきた春日先輩が主将によっと片手を上げて挨拶をしていた。



「岩村ー、手加減してやれって」

「雨倉のタックルもとい頭突きが鳩尾にモロに入ってくるのを知ってるだろう」

「うぇぇ…しかも鼻打った……主将の愛が重い」

「いやぁ雨倉の尊敬心が痛すぎるだけだーって」

「津川こそ最初はオレもーってタックルしてたくせに…」



何で私だけなんだよぅ…と投げつけられたままの態勢で鼻をさすって軽くいじけているとスッと影が差しかかった。

その後、鼻をさすっていない方の手を優しくとられ、優しく引っ張られてフワリとソファに座らされた。


掴まれたままの手の先を辿っていくと前髪を横に流した切れ目のイケメンがいた。


え、と少し戸惑っていると切れ目のイケメンさんは座っている私の前に跪いたかと思えば驚きの言葉を発した。



「あぁ…こんなにも可愛いのに乱暴に扱われるなんて……お怪我はありませんか?」

「………へ?あ、はい…?」



…なんだろう……このなんとも言えない感じ…。

切れ目のイケメンなのに、なんか……てかサラッと可愛いとか言ってなかった?


そして周りからの視線も気になるが、その、この人からの熱い視線がこの人のイケメンさを台無しにしているような気がする。


イケメンなんだけど。イケメンなんだけど………残念臭がするなぁって……。

とりあえず残メンさん、手を離してこの場の空気を元に戻してください。
 
 

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