夢想曲1

□07
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黒子くんが最初の状況を話すために口を開く。



「ボクと日向先輩が目を覚ましたのはここから暫く先にある寝室でした。

しかし、部屋の中央にベッドが一つ置いてあるだけで他には何も置いていなくて、

探すものもなく部屋から出て廊下を歩いていると赤司くんたちと会ってボクは赤司くんと逃げました。

化け物はいなくなっていたので近くにあった部屋に入ってみたら岩村さんと森山さんが倒れてて…

二人を起こしてから部屋を捜索しましたが何もなかったので少し奥にあったこの部屋に入ることにしました。

が、化け物に追われて逃げてこの部屋の前に来たら何かに阻まれて化け物は踵を返して行ったんです」


「そんでこの部屋に入って少ししてからオレらが来たってことか…」



寝室だからベッドがあるっていうのは分かるけど、中央に一つだけ?

ならそのベッドをずらしたら何かあるんじゃないの?と思っていたら花宮さんもそれを指摘した。


けど二人が言うには動かそうとしたけどピクリとも動かなかったそうなので固定されているとしか考えられない。


それにしてもこの部屋の前で化け物が何かに阻まれたというのはどういうことだ?

この部屋だけ安全地帯であり、化け物は一切入って来れないってこと?

けどその化け物だけかもしれないし何にせよ確証は得られてないから何とも言いがたい。


そして次に花宮さんと宮地さんと春日先輩が話すかと思ったが流れ的に私たちが話したほうがいいとのこと。


なので、次は私と津川が話すことになった。



「私たちは何故か皆さんと違って、何もない4畳半くらいの真っ白な部屋で目が覚めました。

何かないかと思い壁を触ったりしていると天井に赤い小さなボタンがあって肩車をしてもらって押しました。

けど何の音もなかったんですけど、それまで何もなかった壁の一部が微かに凹んでて…

それを押したらなんか、宇宙ステーションみたいにシュインッて音を立ててドアの大きさに壁が開いたの!!!」



「あれ凄かったよな!他の部屋もあんなんなのかと思ってたし!」

「ねー!あれでテンションあがったよね!!」

「はしゃぐ双葉ちゃんも可愛いなぁ…って痛い!?」

「うっせぇな刺すぞ」



その時の興奮を思い出して津川と盛り上がるが赤司くんに促されたので続きを話すことに。



「それで、部屋から出て少し歩いたところで…こう…空中にネジが浮いてて……あ、これです。

で、念のために持って暫く歩いた所の曲がり角の先に白いドアと座り込んでた春日先輩が居ました。

最初に津川が飛び蹴りをして春日先輩が固め技をしてこないのに疑問に思いました。

けど次に私が卍固めをして落ちた直後にボフンッて煙を立てて消えたのには驚きました」


「「「「「え?」」」」」



私がそう話すとその時の状況を知らない全員が驚いたように私を見た。

驚くみんなに主将が正邦の体育について話すとそれなりに納得してくれたので話を続ける。



「春日先輩が消えた後に本物の春日先輩が来て白いドアの部屋に案内されました。

そこで宮地さんと花宮さんとも会って…」


「オレらは最初違う部屋に居たんだけどその部屋から出たあとにゾンビみたいなんに遭遇した。

追われたから逃げて雨倉たちの言う白いドアの部屋に隠れてたんよ〜」


「その部屋の探索も終えて収穫ナシで部屋を出ようとしたら春日の偽者が座り込んでたんだよ。

しかもソイツ血がこびりついた包丁持ってやがるし一先ず様子見してた。

そしたら包丁に気付いてない二人が来て飛び蹴りやら卍固めやらして消滅させたから代表で春日が呼びに行った」



最初ワケわかんなくてびっくりしたわと言う宮地さんに二人でテヘペロ☆と言う。

さて、話はあのヒヤリとしたところにいくわけですよねーやだなぁもう。簡単に済ませようっと←



「そして自己紹介をしたあとにこれからどうするか話すことになったんですけど、

天井から長い髪の毛が垂れててみんな気付いてなかったからソレを伝えて急いで部屋を出ました。

けどドアを閉める直前にソレの本体もズダッと落ちてきたのを見てしまって…まぁドアは閉めて逃げたんですけどね」


「階段上ったところで緑間と日向に会って、雨倉と津川が偽者の岩村だと気付かずタックルしたら消えた」

「あぁ、だからさっきやけに勢い良かったんだな」

「えへっ!!」



元気よくそう言うと主将に呆れられた。う、悲しい……。


ふと隣を見ると赤司くんが何やら考え事をしていた。

…考え込む姿も様になるというか絵になるのは何故だろう…美形だから?美形だったらなんでもいいのね?


しかし何を考えているのか気になる。少し戸惑ったがどうかしたのかと尋ねてみた。



「?えと、赤司くん。どうかした?」

「いや…君たちが最初に居た白い部屋というのが気になってね。家具は何もなかったんだろう?」

「うん。」

「そこに行ってみたいんだが」

「…、うん??」



思わず首を傾げる。しかも疑問符がついてなかった気がする…

しかしそうは言うものの、どこで集まって誰と行けばいいのだろうか。


そう考えていたのはみんなも同じだったようで緑間くんが赤司くんに尋ねた。



「赤司、それならどこに集まるのだよ」


「集まるのはここだ。化け物はこの部屋に近づけなかった。

まだ確証は得られないと考える人がいるかもしれないが阻めるに越したことはない。

現時点で分かっている安全地帯はここしかないしね。なら今はそれに賭けるしかないだろう?」



そう言ってから次にメンバーを決めようかと続けた赤司くんに少し驚く。

…私がそう考えてるのを見透かされたようで驚きを隠せなかったのだ。


きっと赤司くんは頭が良い。頭が切れる、と言ったほうがいいかな。

確証は得られていないのに現時点を踏まえて襲われるか襲われないかを賭けたのだ。


私なら確証を得てから決めたいのでそんな決断はできない。

すごいなぁと思いながら赤司くんをじーっと見る。

視線に気付いた赤司くんは私の考えが全て分かっているような目で綺麗に微笑んだ。
 
 

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