夢想曲1

□08
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微笑んだ赤司くんに思わず見惚れそうになったがブンブンと頭を振る。

メンバーを決めるという話になってすぐに森山さんが元気よく手を上げた。



「はいっ!オレは双葉ちゃんと行く!!」

「くだんねぇ理由だったら轢くぞ」

「くだらなくなんかない!女の子、いや双葉ちゃんと一緒に居たいからだ!」



そして守るんだ!と高らかに言った森山さんに「くだらねぇよ!!!」と言って掴みかかる宮地さんを主将が抑える。

すると主将が宮地さんを抑えながら赤司くんに向かって声をかけた。



「四つのグループに分かれてそれぞれのグループに一人ずつウチの部員を入れればいい。

体育の時間に武術を習っているからな。居て損はないだろう」


「雨倉さん…も、話を聞いた限りでは武術をしているようだけど、大丈夫かい?」

「うんっあ、でも筋肉のつきはあんまり良くなくて足はそんな早くないし体力も限られてるかな」

「なら黒子とは別にして体力や持久力に長けてる人とグループにした方がいいな」



日向さんがそう言って改めてここにいるメンバーを見渡す。

パッと見て体力がありそうなのは正邦組と黒子くんを抜いた宮地さん、緑間くん、森山さん。



「宮地さんと緑間の秀徳ペアに雨倉が入って、オレと黒子のとこに津川を入れる。

んで、赤司と春日さん。花宮と森山さんと岩村さんのグループでいいっすか?」


「おいそこは空気読んでオレと双葉ちゃんを一緒にするべきだろ!?

岩村と双葉ちゃんチェンジで!!男三人とか華がない!!!」


「メンバー的にはこれがいいと思いますけど…」



私がそう言うと森山さんはそんな…!と絶望したように灰になった。

なんだか森山さんの扱い方が分かってきた。失礼かもしれないけど分かってきたものは仕方ないしね!!


そして赤司くんもグループメンバーの振り分けに同意して待機組を選ぼうと言った。



「じゃあ待機組はどうしようか。希望する人はいますか?」

「はいっ!!双葉ちゃんは待機したほうがいいと思うぞ!」

「岩村は後の方で探索に出たほうがオレらとしてはいいと思うんだけど〜」

「まぁ正邦ん中で一番体力ありますもんね」

「今回は軽い散策が目的だし力仕事みたいなのを見つけてから動いてもらうことにします?」

「お前らがそれでいいならそれまで体力温存をしておくことにしよう」

「ねぇ。オレの話聞いてた?」

「というわけで皆さん、主将と花宮さんと森山さんが待機組でいいですか?」

「反対!」

「「「「「「おう」」」」」」



孤立状態の森山さんが頷いた全員に裏切り者ぉぉぉ!!!と泣き叫ぶ。

いや、だって武術で言っても主将が一番強いし…砦は温存しておこうかなぁという話になったんで…。



「雨倉。お前が持ってるネジに何か書いてたりしねぇのかよ」

「…、書いてませんね。てか何でネジに何か書いてると思うんです?」

「浮いてたんなら何かしらヒントみたいなのが書いててもおかしくねぇだろバァカ」

「結局何も書いてませんでしたけどね。思い違いでしたねバァカ」



真似すんなバァカ!!と言う花宮さんに少し笑えた。

花宮さんでも小学生並みの喧嘩腰になれるんだと思ったら思わず笑えてしまう。


そんな風に花宮さんと話していると春日先輩たちが近づいてきた。何事だろうか。



「今更だけど雨倉ってジャージ履いてんの?」

「最初の部屋で津川のハーフパンツ借りました!だから卍固めもできたんじゃないですかー」

「なぁなぁ。化け物って隅落とか効くかな?」

「効くんじゃない?雨倉は山嵐仕掛けられるんじゃねーの?」

「山嵐か。確かに雨倉の場合は有利だな」

「背負投と払腰を合わせたアレですよね!?うわぁぁあやりたい!!津川面白い反応したよね」

「あはは!それ以上言ったら巴投げしよっかなーっ」

「ちょ、津川の巴投げとかやめてよ!!下手くそなんだよアレ!!」



頭のてっぺんから落ちそうになる受身のこと考えてないよね!?と言うと津川はケタケタと笑った。こいつ。


私たちが柔道の技を次々と出して話しているとどこかしらから本当に武術してんだな…と聞こえた。

柔道だけにあらず空手やレスリング技もできますよ、とは言わないであっはっはと笑って話を続ける。



「化け物相手なら蟹挟しても問題ないよね」

「まーワケもわからずここに連れてこられて何一つヒントもないからね〜」

「当然っちゃ当然だしね!」

「構わないだろうそれくらい。ただし消滅させても怪我はしないようにな」

「不可抗力の場合はお咎めナシでお願いしまーす」

「…キレてるのだよ」

「分からなくもねーけど正邦組が言うと一層物騒に感じるな…」

「雨倉さん。あまり無理をしないで少しでもキツくなったら遠慮なく緑間くんに言ってくださいね」

「へっあ、はい…」



ダメだ。未だに黒子くんからのちゃんとした女の子扱いに慣れない。

うぅ…と少し気まずくなりながら返事をすると小さく微笑んだ。


もうやだ本当やだ赤司くんといい黒子くんといい何でこんな紳士なの女の子扱いするのときめくわ。

失礼だけど森山さんみたいに運命って多用されるよりちょっとした女の子扱いの方がずっと嬉しいし恥ずかしい。


性格が男前なのに影が薄いことでスルーされてるのかなぁと思ったら不平等さに悲しみを覚えた。

世の中って本当に不公平…こんないい子周りにいなかった。

そんなことを考えているとそろそろ探索に行こうと言われたのでソファから立ち上がって秀徳ペアの所に行った。
 
 

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