夢想曲1

□15
1ページ/1ページ


桃井ちゃんを落ち着かせている間に青峰くんが復活して黒子くんに掴みかかった。



「っテツゥゥゥウ!!お前いきなりイグナイトすんなよ!!!!」

「キミがデリカシーを持ち合わせていないからですよ」

「思ったこと言っただけだろーが!」

「大輝、静かにしろ」



青峰くんが復活したことによって騒がしくなるかと思ったが赤司くんが注意する。

その言葉を聞き、赤司くんを見た青峰くんは静かになる。すごいね赤司くんなんでもアリだね怖い。チートか。



「…じゃ、次に赤司くんどうぞ」

「あぁ。テツヤたちと分かれてから廊下を歩いていると下に繋がる階段を見つけた。

が、春日さんが言うにはその階段を見たことがないと言うからね。此処に戻ってから行こうかと保留にしようとした。

その時、その階段から伊月さんが目がない化け物に追われて来てね…。

春日さんはソイツの勢いを利用してラリアットをしたらソイツは消えたよ」



それを聞いて私もラリアットしたなぁ…としみじみ考える。


私が話した後はしばらく黒子くんの方向見れないだろうな…先に謝っといたほうがいいかな。

少し罪悪感を感じるが伊月さんが目が覚めてからの経緯を話し始めたのでそちらに意識を向ける。



「オレが目を覚ましたのは書庫みたいなところだったんだ。

どうしてそこにいるのか分からなくて、とりあえず鷲の目で他に誰か居ないか探してみた。

そしたら、すぐ近くに目がないソレが居て静かに逃げようとしたらバレて、追われたんだよ。

何故分かったのかって考えたけどまずはソイツを撒こうと書庫を出た。

意外と足が速くて逃げるのに必死で、構造は詳しく覚えてないんだ…スマン」


「…謝んなよ。ソイツに捕まらなくてよかったって思っとけ。ダァホ」

「伊月先輩が無事でなによりです」

「そうですよ!絶対にここから出ましょう!」

「あぁ…ありがとうな。日向、黒子、降旗」



申し訳なさそうに言った伊月さんを日向さんと黒子くん、降旗くんが慰める。いいね、仲間って。


そんな伊月さんに花宮さんが質問をしようと声をかけたら日向さんたちは少し顔が強張る。

……だからさ、そんな空気やめようって。ね?気まずいから…。



「書庫の広さはどのくらいだ?」

「大体…この部屋より少し小さいぐらいだ」

「結構広いですね…あ、電気って点いてたんですか?」

「点いてたよ。鷲の目で道を見ながら走ってたから、階段も見つけれたし…」

「じゃあ、オマエが居た階に窓はあったか?書庫か廊下に、だ。」

「窓……確か、書庫のどこかに…上の方にあった気がする」



気がする、と曖昧なのは仕方がない。だってすぐ近くに化け物が居て逃げたんだから。

バスケで鷲の目は厄介だったけど、こういう状況だったら凄く頼もしい。化け物の居場所が分かるから。


詳しく見れなくて悪いな、と言う伊月さんに散策するでしょうし大丈夫ですよ、と返す。

すると伊月さんは先ほどまでの申し訳なさそうな表情と打って変わって小さく微笑み返してくれた。


…なんでだろう……ここにいるみんな顔面偏差値おかしい。

バスケは美形しかやっちゃいけないルールでもあったっけ?伊月さんは美形ってより美人の方がしっくりくるけど。

女子も女子だよ。桃井ちゃんナイスバディなのに対して私はなんか…平凡すぎて申し訳なくなってくる。



「双葉ちゃんどうしたの?」

「なんか居たたまれなくて」

「なんで!?」

「平凡ですみませんって感じかな…」

「武術習ってる奴のどこが平凡だよ」

「津川だまれ」



会話に参戦してきた津川にそう言うと事実じゃんと言うし事実だから何も言い返せない。

け、けど筋肉のつき悪いし見た目の女子らしさは残ってるもん。武術関係ないもん。


そんなことを考えているとふと桃井ちゃんが話を変える。



「そういえば…ゾンビみたいな化け物としか遭遇してないけど、妖怪とかいるのかな」

「妖怪?九尾とか口裂け女とか?」

「うん。ここがどんなところか分かってないけど、いたら厄介だなって」

「確かにそうですね…これが怪異かどうかも分からないですし、可能性としてはいるかもしれません」

「もしいたら物理は効かないってことになるな〜」

「ハッ…妖怪に何かようかい?やべぇキタコレ」



空気が凍る。


……あれっ?気のせいかな…今、伊月さんがダジャレを言ったような気がするんだけど。

うん、気のせいだきっと。例え言ったとしても場を和ませようとしただけなんだ。そうなんだよ。スベっちゃっただけだよ。


だからポケットからvol.263って表紙に書かれたノートを取り出して活き活きとした表情で何か書いてるのも気のせい。

誠凛の人たちが慣れたように対応してるのも気のせいだよコントだよコント。



「伊月…」

「なんだ?」

「空気読め」

「空気を食う気か?日向」

「黙れつってんだろ」



気のせい、で済ませたかったなー……


日向さんが伊月さんのダジャレを否定して私に散策結果を促してくるけどこの空気で話せと?

思わず口元が引きつる。どうして…どうしてダジャレに走っちゃったんですか伊月さぁぁぁああん!!!!!


心の中でそう嘆きながら散策結果を話すためにまずは黒子くんに謝ろうと決めた。
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ