夢想曲1
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タンスの中のアレについて話そうと口を開いたとき、宮地さんが声をかけてきた。
「…雨倉。話せるか?」
「無理しないでね…?」
「、はい。降旗くんもありがと。
…それで、懐中電灯は中に落ちちゃいけいないから後方に投げて落とすことは防ぎました。
それでもタンスの中の何かの力は強くて少しでも気を抜いたら引きずり込まれそうでした。
まぁタンスを蹴って相手が怯んだうちに逆に引っ張り上げてスライディング・エルボーを食らわしたら消えたんですけどね。
なので再びあの部屋に行ってタンスを開けてもアレが出てくることはないと思いますが要注意ですね」
「スライディング・エルボーしたのか雨倉」
「はい!」
少し目を開いて感心したように言う主将に元気よく返事をする。
桃井ちゃんにも双葉ちゃん強いね…?と苦笑いされた。あっ引かないでぇぇぇええ!!!
それでも引っ張られたときの恐怖は確かなので日向さんたちが心配そうにしてくれた。優しい…。
私の話に次いで降旗くんが話を進めた。
「…手を掴まれたのが自分だったから消すことも出来たって言った雨倉にオレ、怒っちゃって…
けど、雨倉はもう十分反省したから、怪我に関してはそんなに怒ってあげないでほしい、です」
「オレと宮地さんからも十分に叱ったので今は怪我の手当てが出来るものがないかと思っているところなのだよ」
降旗くんと緑間くんのお陰で赤司くんと黒子くんのオーラがマシになったよありがとう!!!!
もう2人には頭が上がらないね。黒子くんとか最初に謝った時に説教するって宣言してたから本当に助かった。
特に赤司くんは目をスッ…と細くするもんだから怖いったらありゃしない。
けど黒子くんには散策前、無茶するなって釘刺されてたのに無茶しちゃったから仕方ないと思う。怖いけど。
心の中で再び2人に謝罪して宮地さんと緑間くんのお説教タイムを思い出して思わずしょぼくれる。
「ほ、本当に無茶してごめんなさい……」
「あぁっ双葉ちゃんそんな項垂れないで!!大丈夫だから、もう怒る人いないから!!」
「そうだよ双葉ちゃん!まずは救急箱を探さなきゃだもんね!私が手当てするよっ」
「…お前らウチの後輩にどんだけ説教したの?」
「10分かそれ以上」
「その間ずっと正座してたけど足痺れた様子なかったよね」
「慣れてるもん」
体育の武術を選択してる子はみんな正座くらい余裕だよ、と心の中で付け足す。
剣道とか空手とか柔道とか授業の始めに正座するからなぁ…
最初の方は痺れて次の授業に遅れそうになったりとかで大変だったけどそのうちクセになってきたんだっけ。
慣れって怖いわぁ…と津川と話していたのは記憶に新しい。
「それにしても救急箱はどこにあるんでしょうか」
「ふはっ無いって可能性もあんだろ」
「痣が残らなかったらいいけど…」
「うーん、結構力強かったからね…ほら、手形が」
「ギャーッ!!平然と見せんな!!つか手形って怖いだろ普通!!」
「日向さん怖いのだめなんですかぁ?」
「っっ!!べ、別に怖くねーし?」
「そんな言い訳言っていいわけ?キタコレ」
「なんも来てねーよっ!!!」
「あ!」
またもダジャレを言って手帳に書き込む伊月さんの手帳を奪い取り床に叩きつける日向さん。
いっつもあんな調子なのかなぁ…特技がダジャレ100連発とかだったらどうしよう。残念すぎる。
みんなが話から脱線して少し騒がしくなってきたところでふと考える。
私達がこうして散策結果を報告しあったり脱線して騒いでるうちにも1人、また1人と此処に来ているのかな。
というか、部活帰りで急な眠気に襲われてそのまま寝て、目が覚めたら知らない洋館にいて…
此処が化け物のいる異空間だということは分かっているけど、向こうでは時間は経っているのだろうか。
けどみんなの話を聞いたところ、急な眠気に襲われて目が覚めたら此処だったんだよね。
なら、現実世界では眠気に襲われてから時間が経っていないのか?
「…雨倉?」
「……赤司くん、異空間で時間は経ってるけど現実世界では眠気に襲われてから1秒も経ってないとしたら…」
「……どうして他の人は少しずつ此処に来ているのか、ってことか」
「うん。此処に来る時の共通点は急な眠気に襲われて、なんだよね」
「ふむ…中々面倒なことをしてくれるね」
「…此処に来る奴らの順番に規則性はねぇし適当にズラしてんじゃねぇのか」
「んー……適当に連れて来るより一気にやった方が楽だと思うんだけどなぁ…」
どうして一々手間がかかることをするのだろう。
赤司くんと花宮さんの3人で考えてはみるがよく分からない。連れて来られる原因も分かってないし。
考えれば考えるほど此処についての疑問が次々と浮かび上がってくる。
ヒントらしきものも一つだって無いし、手の上で踊らされているようで気に食わねぇなと言った花宮さんの言う通りだ。
一先ず考えるのは保留にしておこうか、となり話を進めるために騒ぐみんなに声をかけた。