夢想曲1
□20
1ページ/1ページ
私の特技である早口言葉を披露してから探索に出かけるためチームごとに分かれる。
此処に来る途中で拾ったバインダーを花宮さんが持ち、嘆く森山さんを津川が引きずって行く。
おい津川その人先輩だぞ引きずんなよ。
私達も部屋を出てから津川のチームと分かれて春日先輩のチームと一緒に1階へ降りる。
1階に降りてから暫く歩くと確かに階段ができていた。
「いつ出てきたんだろう…」
「さぁ…まぁ何か怪しい本とかあったらあの部屋に持っていくんしょ?」
「はい。ではお気をつけて」
「あいよ〜」
春日先輩ゆっるいなー…と思いつつ階段を降りて行った春日先輩、伊月さん、緑間くんを見送る。
私達は当初の予定通りに例の白い部屋に向かうことにしよう。
行った所で本当に何もなかったし意味ないと思うんだけど、どうして赤司くんは気になったんだろう。
「一つ聞いてもいい?」
「あ?」
「青峰くんじゃなくて、赤司くんに」
「構わないよ」
「どうしてあの白い部屋に興味があるの?私と津川が部屋全体捜索したけど、赤いボタンしかなかったよ?」
「白い部屋に行くのは捜索目的じゃないさ」
「「え?」」
「雨倉と津川以外の人が目を覚ました部屋は必ず何処かの部屋で家具もある。
大輝と桃井がハッタリの壁の中に居たというのも引っかかるが…
部屋なのに、モノが一つも無い。そんな空間がどうして存在するのか。気になるから行ってみたいだけだよ」
2人を疑っているわけではないが、この目で見てみたくてね。
そう言って赤司くんは私と視線を交えて小さく微笑んだ。
信憑性がないわけでもないし私達を疑うつもりも無いけど、白い部屋、というものが純粋に気になっているだけのようだった。
2、3回パチパチと瞬きをしながらそう考えて「そっか」と私も微笑み返す。
唯一、青峰くんは理解できていないようでどういうことか尋ねてくる。桃井ちゃんの言うとおり馬鹿なのかもしれない。
話をしながら廊下を歩いていると赤司くんが立ち止まってこの辺りだと言って壁の一部を指差す。
「…おぉっ本当だビー玉と同じ感じだ」
「よくこんなん見つけれたな」
「津川が宇宙ステーションみたいに開いたはずだと騒いで壁を隅々まで触っていたら見つかったんだ」
「アイツ馬鹿なのか?」
「まぁ馬鹿らしい行動でこれが見つかったんだしいいじゃん」
細かいことは気にしないでおこうよと青峰くんに言う。
赤司くんが制服のポケットからビー玉を出して壁にある窪みに嵌めこむ。あ、ピッタリだ。
すると、壁だったところは最初と同じようにシュインッと音を立てて開いた。
ふわぁぁぁあああやっぱテンションあがるわこれ
なんて考えていると隣に居た青峰くんも小さく宇宙ステーション…と呟いた。分かるか同志よ。
部屋は4畳半と狭く、天井には赤いボタン。居た時と変わんないわー。
「やっぱここだけ自動ってのはちょっと不思議だよね」
「音ムダにかっこよくねぇ?」
「だよね!!分かってくれると思った!!」
「…近づけば自動で開くか…本当に自動ドアのようだな。
それに、話で聞いていた通り本当に何も無く天井に赤いボタンが一つか」
「雨倉あれどうやって押したんだよ」
「津川に肩車してもらった」
「下は?」
「ハーフパンツ履いてなきゃ技決めれないでしょーが」
「くだらない話をしてないで出るぞ」
くだらないって言われた…と若干のショックを受ける。思えば青峰の発言セクハラまごいじゃねーか。
部屋を出ようとした際に視界の端にキラリとしたものが見えたので立ち止まる。
部屋の隅を目を凝らして見てみると、何か小さいものが見えた。あんなのあったっけ…?いや、なかった。じゃあどうして?
「行くぞ雨倉ー」
「…ちょっと待ってて」
「何か落としたのか?」
「落としては無い。……!!赤司くん、コレ!」
「これは…鍵?」
部屋の隅に行ってソレを拾い上げると、何処かの部屋の鍵だった。
けど、部屋の鍵にしては小さいし鍵がかかっている部屋なんて聞いていない。
いつの間にか出てきたあの階段と同じようにまた部屋が増えて、その際に必要とか?
などとあれこれ考えるがきっと部屋の鍵ではない。小指程度の大きさで小さいのだ。
私達がこの部屋に居て捜索した時は隅々まで見た。お互いが見たところを交代して見たりした。
それにも関わらず急に出てきたこの小さな鍵に少しの不気味さを感じ、同時にこの部屋に対しての謎が深まった。