夢想曲1

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何も無かったはずの白い部屋から出てきた鍵の持つところを見てみると、本とだけ書かれていた。

油性ペンなのかな。鍵は少し年季が入ってるように感じるのに文字は綺麗なままでより不気味さを際立たせた。



「本ってか鍵付きの日記みたいなのはあるよね…」

「もしかしたらこの鍵で開けれる本が書庫にあるかもしれないね」

「書庫に行った奴らが持ってくるかどうかってことか」

「そうだね」

「とりあえず此処にもう用はねぇだろ?行こうぜ」

「うん…けどさ、私と津川が此処に居た時はなかったのにもう一度来たら落ちてた。

なら、可能性の問題だけど一度捜索した部屋も見たほうがよくない?」



この鍵みたいに何か落ちてるかもしれないし、と言うと二人は頷いた。

けど先に津川が破ったハッタリの行き止まりの方を見てからにしようという話になったのでそこへ向かう。


ハッタリの行き止まりの所に着いたが、破片が散らばる奥に少しの空間と…階段があった。いや、できていた。



「また急に現れたのかよ!?」

「さぁね。この洋館の仕組みはよく分からないよ」

「誰かが降りて行ったのか、急に出てきたのか。だよね」

「ふーん…人が居るんなら行ったほうがよくねぇか?」

「もし人ではなく化け物の巣窟だったらどうするんだ?迂闊な行動をしてはいけないよ大輝」

「そもそも、この洋館が何階建てかもよく分かってないもんね。勝手に決め付けてるけど…」



私がそう言うと青峰くんが此処が2階って可能性もあんのか、と呟いた。

青峰くんってバカなのかそうでないのかよくわかんないよね。多分桃井ちゃんの扱いからバカなんだろうけど。


けどここで一旦引き返すにしても下に人が居たら保護して一緒に水色のドアの部屋に行ったほうが良い。

もし誰かに化けている偽者ならドロップキックとかで沈めればいいし。



「とりあえずさ、半分だけでも降りて様子見てから決めようよ」

「ここでウジウジ考えてるだけでも時間の無駄だし、オレは雨倉に賛成だぜ赤司」

「…そうだな。人が居たら保護しよう」



では行ってみようか、と言って赤司くんが階段を一段降りた直後のこと。



「「「うわぁぁああぁあぁあっ!!!?」」」

「!!?」

「人…!?」

「悲鳴ってことは……っ!」

「オイ待て雨倉!!」



三人ほどの男子の悲鳴が聞こえて化け物に追われていると直感し、赤司くんを抜いて階段を駆け下りる。


2段飛ばしや3段飛ばしで階段を降りるも中々下に着かない。

どんだけ長いんだこの階段!!!と文句を言いながら降りるがふと立ち止まる。


下に降りているはずなのにまったく進んでいない。


30秒は駆け下りているはずなのに、どうして進まない?悲鳴は結構近くに聞こえたんだけど……

違和感に気付き、周りをじーっと目を凝らして見てみる。


すると、壁のシミのようなモノが化け物のような顔になったのですかさずそこに回し蹴りをした。



「原因はコイツか!!!!!」

「オ゛ァアア゛ァア゛!!!!」

「うるせっ!」



なんて野太い悲鳴だ、と思っていると階段の下が見えた。

くっそ一括に化け物って言っても迷惑極まりない特殊な能力持ちの面倒な化け物もいるのか


あとで赤司くんに報告だな、と呟いて階段を再び駆け下り始めた。


そしたら階段から見える範囲で化け物が見え、ちょうどいい位置に来たので駆け下りながら階段を跳び、膝蹴りを食らわした。



「はぁっ!!!」

「ノ゛っっ!!!!!」

「「「どえぇぇえぇえっ!!?!!?」」」



スタッと綺麗に着地した後に化け物がボフンッと音を立てて消滅したのを確認した。ふっ決まった…

3人に見えないようにどや顔をしていると1人の男の子に危ない!!と言われたので振り返る。


振り返った先には、やはり血濡れになった斧を持った目玉が垂れているゾンビが襲い掛かってきていた。

気付いた瞬間に斧を持っている手を下から蹴り上げて斧を離し、軽く距離をとってから延髄斬りを食らわす。



「っらぁ!!」

「オ゛ゥ゛っっ!!」



またも綺麗に着地を決めてゾンビも斧も消滅したのを確認してフゥ…と一息ついて簡単な柔軟をする。

3人を追いかけていたのはこの二体だけではないようで奥から次々湧いて出てくる。



「キリがないな…ポップコーンかこいつら」

「お、おいお前っ何してんだよ!?」

「後でゆっくり話しましょう。まずは…こいつら全滅させます」



薄い金髪の人に声をかけられたのでそう言って小さく微笑んでから出てくる化け物たちに目を向ける。


その場で何度か軽くジャンプをしてから化け物の数を数える。幸い、足は遅いようだ。

1、2、3……10体か。主将と春日先輩2人を相手するより断然楽だな。確証を得たので全滅させようと動いた。
 
 

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