夢想曲1

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私でチートなんて言わないでよまったく…。

女である私でチートとか言うなら男である主将とか津川はどうなるのさ。


特に春日先輩なんて私と津川の2人がかりでも敵わないのに。魔王じゃん。無敵じゃん。


と、少しムッとする。私がおかしいみたいじゃないかもうっ



「雨倉さん……その割には筋肉少ないわね?」

「なんか付きにくいんですよねー」

「どれくらいつけたいの?」

「流石にムッキムキは嫌ですね。ある程度ついたらいいんですけど…」



見てくださいこの力こぶ。と言って見せるが普通より少し固いだけだ。


まぁこれでも握力は30あるんだけどね、と心の中で呟いておく。

どうにも筋肉が落ちやすいので日々の筋トレがかかせない。



そして少し話がずれかけていたところで福井さんが口を開いた。軌道修正あざーす。



「オレは階段の下で目が覚めたんだ。階段はあるんだけど上の階には行けなくなってて…

どうしようかと思ってたら福田と早川がレバーを下げたらしく開いたから合流した。

そんでとりあえずオレの居た階を歩いてたら黄色いドアあったから開けてみた。

開けなきゃよかったよあれは。さっき雨倉が倒したつってた化け物が大量に詰まってて逃げた」



そこからは雨倉が話した通りだよ。と言った。


すると誰かがボソリと「雨倉無双…?」と言った。オイ誰だ言ったやつ出て来い。

さっきからチートとか無双とか分けわかんないよ!ただ武術習ってるだけの普通の女の子だよ私は!


※その武術で化け物をバッタバタと倒していくのを普通の女の子とは言いません。



寧ろ私が探索に出て化け物がいないとかありえないし。なんて迷惑なんだ。

探索に出るたび大量の化け物…貧乏くじ引いてるようにしか思えないんだよちくせう!!!


そう悔しがっていても話は進まないので話を進めようと口を開いた。



「全滅させたところで赤司くんと青峰くんが来たことに気付いて3人を連れて此処に戻ろうとなりました。

そこで福田くんが目が覚めた時に見つけたって言う救急箱で手首の手当てをしてもらいました」


「よかったー。救急箱があるだけ安心だね」

「怪我しないのが一番ですけどね」

「双葉ちゃんの白くキレイな肌に傷が残らないことに凄く安心したよ」

「で、その後は?」


「その後はこの部屋の前に来た時に津川を担いだ根武谷さんたちが化け物から逃げてて…

スプラッタな化け物に技かけて消してから部屋に入ったってことです」



めでたしめでたし。

というようなノリで言うとその場に居た人たちに苦笑いされた。


津川に至っては気絶してたから知らなくてただアレを倒したのかと引かれた。おい。



「雨倉まじでおかしいって」

「何が」

「B級ホラーもお菓子食べながら見れるし」

「怖いものなしか?」

「む。私だって怖いものくらいありますよ!」

「「マジで?」」

「蜘蛛こわい。てか嫌い」

「何でそこだけ女らしいんだよ〜」

「酷くないですか本当に…」



森山さんは出てきたら退治してあげるよ!という言葉をかけてくれるのに。

あとリコさんや桃井ちゃんには同意されてるはずなのに他の人からの扱いが酷い。


そして今から少し休憩を入れた後にリコさんの鞄に入っていた日記を開けようという事になった。

各自自由に話し始めたので私も正邦のところに行こうとしたらリコさんに呼び止められる。



「雨倉さんちょっといい?」

「はい?」

「さっき手当てしたって言ってたけど、きちんとした手当てするから隣においで」

「…」


あっるぇーおかしいな可愛らしい笑顔で語尾にハートつけてるはずなのに寒気しかしない。

何でだ?と思うが有無を言わさず腕を引っ張られてソファに逆戻り。

桃井ちゃんはいつの間にか桐皇の人たちの所にいる。早い…。


湿布を剥がされてアザになっているところをまじまじと見つめられ、リコさんの表情が歪む。


触診を軽くされていて最初より痛み引いてきてるーと思っていた次の瞬間。



「に゛ゃあぁ゛ぁ゛あ゛あぁ゛あ!!?」

「「「うおっ!?」」」

「どうした雨倉……って何してんだカントクーっ!?」

「い゛−っ!!!ひに゛ゃぁ゛ぁあ゛あ゛!!!」

「双葉ちゃん!?」

「お願いカントク一回やめて!!」

「ストップストップ!!!」



火神くんと日向さんに助けられて駆け寄ってきた森山さんをスルーして桃井ちゃんにフラッと抱きつく。

桃井ちゃんの胸で痛みに堪えるように…いや、痛みの所為で泣く。けど胸デカい…逆に息止まりそう。


だけど桃井ちゃんに背中をさすられて保護されているのでそのまま丸まった。



「ひう゛ぅ゛ー……」

「よしよし!痛かったねー大丈夫だよ双葉ちゃんっ」

「何したんだよってか何してたんだよカントク!」


「何って…パパ直伝の相田式超速マッサージ!短時間で効果バツグン疲労回復間違いなし!

地獄の痛みと引き換えに、ね…」


「え…」

「疲労回復?怪我の手当てじゃないんですか?」

「ここに来てからずっと化け物を倒してるみたいだし疲労は蓄積されてるに決まってるわ。

休憩を入れてたとしても完全には回復しない。疲労が怪我にまで及んだらダメでしょ?」



にっこりと笑顔で言ったリコさんに私はサァッと血の気が引くのが分かった。

探索結果聞いて思ったけど雨倉さんが一番働いてるみたいだしねとハートを語尾につけられた。



「さ、部屋の隅に行きましょうか!」

「いぃぃぃいいやぁあああああああ!!!!!!!」

「双葉ちゃんっ!!!わ、私がいるから大丈夫だよきっと!!」

「…誠凛のカントクこわいっスね…」

「あぁ……ウチのカントクまじこわい」

「「あんたらもか!!!」」



ちょっと誠凛の人たちこれ知ってるの?ねぇどういうことなの!?

合掌とかいらないからまじで助けてくださいお願いします!!!地獄の痛みってさっきのはまだ初期段階……あっ
 
 

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