番外編
□怪しい液体
1ページ/2ページ
大広間で他に何も無いかを探索していた時のこと…
私と津川が居た白い部屋のように壁にも何か仕掛けが無いかとベタベタ触っていたらボコンと一部が凹んだ。
「壁へこんだ!!!」
「何〜?ぶっ壊したん?」
「いや、私そんな力ないですけど……」
「だろうね知ってた。何かあった?」
「えーと……小瓶?」
壁のへこんだ中には漫画10冊分くらいの空洞のど真ん中に透明の液体が入った小瓶を見つけた。
なんだろうと思いながらそれを取り出して赤司くんに見せる。困った時には赤司くんだね!
赤司くんや花宮さんがそれを見るが何なのか分からない。毒物かもしれない危険性もあるのだ。
他にも何かないかと思って空洞の中を探っていると紙切れが上に貼ってあった。
内容を見てみると…え、なにこれやばい凄いじゃん無茶苦茶面白そう!!!よし飲もうかな!
「飲んじゃう?」
「何言ってるんですか雨倉さん。毒だったら…」
「毒じゃないよー。これ空洞の上に貼ってあった!」
「…『食べたら可笑しくて笑っちゃうキノコみたいなやつ』?」
「ワライダケだろ」
「死にはしないけど…え、飲むの?」
「飲む!」
「思い切りいいな!?」
青峰くんにそうつっこまれたが気にせず赤司くんを見るとため息をついて好きにしろと小瓶を差し出された。
飲むこと許されたはずなのになんか見放された気がして少し悲しい…しょぼんぬだよ双葉ちゃん。
しかし面白いことならばそんなの関係ねぇ!
蓋を開けてぐびっと一気飲みをするとどこからか「男前!!!」と言われた。かっこいいだろ。
すると、突然ボフンッと煙に包まれた。
暫く咳き込んでいたら何か違和感。幼児化しちゃったー☆っていうわけではないらしい。
お約束のポロリがなく服は合ってるし…ただちょっと頭が軽くなったような…ハゲてないよ!?短くなった?
「ゲホッ……」
「大丈夫!?双葉ちゃ…………え、」
「ん、何か変わった……?…あれ、目線高い…?」
「……」
「…あれっ何でみんな石化してんの?って声なんか低い?」
「…雨倉さん。……男子に、なってます」
黒子くんのその言葉に固まる。
あー…そういえば目線高くなって髪が短くなって声が低くなって?服のサイズピッタリということは…
ノーポロリ、イエスベストサイズ?…あれ、スカートじゃない。ズボン…?
「男体化…?」
「…っうわぁぁあああ!!!!身長伸びたぁぁあああ!!!ひゃっほおおおお!」
「「そこ!?」」
「ちょっとちょっと!筋力もあがってるわよ!身長は186cm…34cmも伸びたわね」
「マジですか!?やっばいテンションあがる!!!」
「おいそこに直れ雨倉」
「あ、福井さん結構ちっちゃいんですね」
「うるっせぇ!!元の姿はテメーのが低いだろーが!!!」
これ結構すごいんじゃね?主将と近いし今みんな立ってるけど森山さんも低いや。
端の方で黒子くんとか伊月さんとかボソボソ話してるけど何話してるの怖い。
今ならこの洋館にいる化け物全部倒せる気がする。
そんなことを考えていると赤司くんから探索という単語が聞こえたので期待いっぱいの目で見る。
「…男体化しているうちに探索を」
「行きたい!」
「………」
「お、おい雨倉!今すぐ座れ!」
「何で?」
「いいから!」
「今から探索の話するんだよ?聞いたらすぐに行くし…指示待ってるだけだから!」
「…ふ、構わないよ立ったままで。それじゃあ秀徳と一緒に探索へ行って来てくれ。目的は分かってるな?」
「男体化してるうちにゾンビ全滅!」
「そうだ。ただし怪我はしないようにね」
「はい!よしじゃあ宮地さん、緑間くん行こう!」
二人に声をかけてから大広間を出た。
もう一度あの降旗くんを見つけた子ども部屋に行こうということになりドアを開けた。
部屋のタンスの傍で一体がタンスからもう一体引き上げているところに遭遇。
「っしゃあグッドアイミングだゴルァ!!!」
「口が悪いのだよ!!」
「男体化してんだし違和感ねぇけどな」
「…やっばい。凄く技かけやすい…!!!」
今なら洋館に居る化け物全部じゃなくても春日先輩も倒せそうな気がしてきた。
すると部屋の外から化け物のうめき声が聞こえたのでランっと目を光らせてそこへ走って行く。
***
「―――…で、この階に居た化け物を手当たり次第倒して行った、と?」
「合計27体ほど居たのだよ」
「技かけていくうちに体に慣れたのかなんかスゲェ技ばっかかけるようになっていったしな」
「ケブラドーラ・コン・ヒーロー出来ましたよ!」
「どんな技かわかんねぇけど凄いんだな?」
「今なら春日先輩も倒せそうな気がする」
「やめて」
「即答でしかも真顔!!そりゃ今の雨倉は…な。」
「次々と倒していくときも表情が活き活きしていたのだよ。人間かどうか疑ったのだよ」
「人間だよ燕返し食らわせてやろうか?」
洋館出るまでこのままだったら早く出れそうな気もしてくるなーと思っていた。
次の瞬間、ボフンッと音を立てて煙に包まれた。髪が肩に当たってスカートということは?
「ありゃ、戻っちゃった」
「……なんか雨倉まじで女子で良かった〜」
「あぁ…正直あのままでは困る。いいか雨倉、お前は今のままがちょうどいい」
「雨倉が男子とか考えられねーわ…もうああいうの飲むなよ」
「え、えっなんか正邦のみんなが優しい!!!あと主将惚れそうまじイケメン」
「オレも雨倉は今のままでいいと思う。ってかチビでいいべ」
「福井さん、それ私怨混じってます」
「ボクも雨倉さんは女性だからこその魅力があると思いますよ」
「男子であるほうが力にはなるがやはりキミは女性であるほうがいい」
「だからなんなのこの二人は!!!タラシ?天然タラシなの!!!?馬鹿じゃないのこのイケメン!!」
「双葉ちゃん落ち着いてそれ褒めてる!!」
そんな様子を見て彼は思った。
186cmと悪くない容姿で更に武術を習得しており明るく笑顔を絶やさない武道系イケメンが存在したら、と…。
もし本当に男子だったら一緒にモデルの仕事とかしたかったなー…と密かに残念がる彼、黄瀬であった。
「ちっちゃいね〜雨倉。もう身長伸びなくていいよ可愛いから〜」
「伸びます!!!!卒業までに桃井ちゃんくらい伸びます!!!」
「目指せ160cm?」
「イエス!」
「いやぁ雨倉もう止まってるっしょ」
「巴投げしてやろうかこの野郎」
戻ったのは残念だけど、やっぱり今のままの方が先輩たちに甘えられるし…いいかな、と思った。