夢想曲1
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廊下を歩いている途中で再び黄瀬くんにピンッと人差し指を立てて言う。
「次に化物が出てきたら動きをよく見てね」
「あ、でも今更っスけど雨倉さん…その…」
「ん?」
「コイツに言いにくいところなんてねぇよ。早く言え」
「花宮さん酷いですってば。いい加減はなみゃーって呼びますよ!?」
「ふはっいいぜ呼んでみろよ呼んだこと死ぬほど後悔させてやる」
「何するつもりだよ!」
やだもう花宮さんったらいくら思春期とは言え…と言うと静かに頭を鷲掴みにされた。
痛い、いた、ちょ…いだだだだだだ!!!!何!?何なの!?宮地さんといい頭鷲掴みにするの好きだね!?
うぐああああ…っと痛みに耐えていると黄瀬くんが言いにくそうに小さい声で何かを言った。
…うん、聞き取れない。なのでもっと大きい声で言ってもらえる?と言うと少し躊躇ったが今度はちゃんと聞こえた。
しかしその内容に本当に今更だなぁと思いつつも普通に返す。
「スカート、大丈夫なんスか!?」
「あ、うん平気ー。最初に津川のズボン借りたから!」
「サイズ平気か?」
「めっちゃ折りました」
「え、今履いてんの?まったく分かんねぇ」
多分体育の授業がある日とかみんなスカートの下に履いてますよと言うがそこはスルーされた。
なんだよ…なんだよ!さっきまで興味持ってたくせに急に冷めやがって!!
みんな私の言葉間に受けてスカートめくりしてパンツ見ちゃって頬に紅葉マークつけちゃえばいいんだ!!
なんて心の中で怒っていると地下へと繋がる階段に着いたので階段を下りた。
あ、確か階段の途中にハタ迷惑な能力持ちの化物いたっけ…。
「あれ、なんでココ凹んでんだ?」
「それねー。その部分に階段をループさせる迷惑極まりない化物がいたからちょっと蹴ったの」
「え、蹴り?」
「お前階段上でそんなことしてたの?」
「ただの蹴りでこんな凹むかッッ!!!!」
「ふんっ力の入れ方が違うんですよーっ!」
「足は怪我してないんスか?」
「鍛え方が違うからね!」
「オレだってこんぐらい凹ますことぐらい…」
制服の袖を捲る根武谷さんにストップをかける。
根武谷さんの筋肉とか力に対するこだわりは何なんだろうか。執念?私だって負けないぞっ
そこで壁を凹まそうとした根武谷さんの腕を押さえていて気づいたことがある。
もしかして…根武谷さんのトレーニング方法をすれば私だって少しは筋肉がつくんじゃ…!?
「根武谷さんってどんなトレーニングしてるんですか?」
「どうしたいきなり」
「私、筋肉のつきが悪いんですけど根武谷さんと同じトレーニングしたら筋肉つきますかね!?」
「ちょおおおおお!!?雨倉さん!?」
「なんだ、筋肉つけてぇのか?ならひたすら筋トレすればいいじゃねぇか」
「つかないんですっ」
「ちょ、マジで言ってんのお前!」
福井さんや黄瀬くんに全力で止められた。
誰も根武谷さんみたいにムキムキになりたいとは言ってないのに。ただ筋肉つけたいだけなのに。
福井さんに背中を押されて階段を下りて福井さんたちを見つけた廊下に着いた。
その際に頬を膨らまして拗ねる私に花宮さんが「そう膨れんなよブス」と言われ静かに脇腹にチョップを入れた。
女の子に向かってブスとはなんだブスとは!!!確かにリコさんや桃井ちゃんみたいに可愛くはないけど!!
むすっと頬を膨らましながら福井さんの案内のもと黄色のドアの部屋についた。
さて、いつまでも拗ねてられないし中にどれだけの化物がいるのかもわからない。
最初にバッタバタと足技オンリーで倒していった数が全部なら一番いいんだけどねー。
ふー…と小さくため息をついてドアを開けようとしたら「進んで開けるのかよ」と火神くんが呟いた。
「…え、だ、ダメ?」
「いや、そういうわけじゃねぇけど!怖くねーのか?」
「勇ましく立ち向かってるからなー」
「…ん?え、いや…ちょっと待ってください!!なんで私が怖がってない前提!?」
「「「え!?」」」
「私だって普通に怖いですよ!?」
私の言葉に驚いたみんなに逆に驚いた。
でもすぐに、素かよ。と冷静になった。いいもん帰ったら主将に慰めてもらうもん。
私だってか弱い乙女なんですけど!と言うと声を揃えてそれはないと言われたのでガチャっとドアを開けた。
くっそおおおお!!今すぐにでも燕返しや袖車締めなど食らわせてやりたい!!
すると、部屋の中にみんなのアイドル☆貞子ちゃんがいた。
正しく言い直せばテレビ貞子ではなく壁貞子。ニュー貞子。新しいね。
「新しくてもなんでもいいけど邪魔!!!」
「一言で済ませた」
「本当に恐怖心ねぇんじゃねぇの?」
「きっと母親の腹ン中に落としてきたんだべ」
「そんなわけないじゃないですか何言ってるんですか皆さん酷い!!双葉ちゃん泣いちゃう!!」
「ふはっ知るかよ。そんなことより早く中入れ。つまってんだよ」
花宮さんにトドメを刺されて口をきゅ…っと結んだ。
その際に根武谷さんと福井さんが拗ねた、と言ったけどぷいっと顔をそらす。
黄瀬くんが言い過ぎたら化物に襲われたとき見捨てられちゃうっスよ!と言った。
いくら酷いことを言われようがこの探索が終われば主将に慰めてもらうと思えばなんてことはない。
それに、みんなで一緒にここから出るんだから見捨てることなんてしないよ。
…と言えたらどんなに楽か!!!!言えないもん!!!!主将に慰めて欲しいのは本当だけどさ!!!
ふんっいいもん!主将だけじゃなくてリコさんと桃井ちゃんにも癒されるもん!!
室内にほかの化物がいないかと確認をしてから大丈夫です。と告げた。
「あ、そうだ黄瀬くん。さっきの技分かった?」
「動きはなんとか。なんて言う技なんスか?」
「んー…正確な技名はないかな。ただ投げ技の領域で引きずり出して顎を蹴っただけだから…」
「十分すげぇのに蹴っただけって言うのはどうなんだよ」
「その気になればここにいる全員できますよ」
「むっ無理無理無理!!あんなお化けに近づけるかよ!!!」
怖がる火神くんをからかいながら全員が部屋に入ったことを確認してドアを閉めた。
黄瀬くんは先ほどの私の動きを思い出しているようで、少し申し訳なさが心に残った。
もうちょっとかっこいい技決めれば良かった…でも貞子だったら延髄切りできないし。
関節蹴りはー……うん、護身術にはもってこいだけどその前に前蹴りか後蹴りしなきゃだし、うん。
何にせよ黄瀬くんに技を覚えてもらうと同時に早く探索を済ませて主将に甘えたいと思いましたまる!