夢想曲1
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高尾ちゃんたちを連れて探索し終えた黄色いドアの部屋に戻った。
中で円になるのかと思いきや、なんだか再会劇が行われていた。
何なんだよもう恒例かよ。いいよ別に勝手にやってろよ私も帰ったら主将に抱きつくし!!
「花宮だけか?」
「原がいるだけで他はいねぇよ」
「そうか」
「小堀先輩ぃぃい!!会えてよかったっスぅぅぅ!!」
「泣くなよ黄瀬。笠松たちは?」
「今のところ、笠松先輩以外は…」
「そっか…合流できるといいな」
「っス」
「カワ!何処も怪我してねぇか!?」
「火神こそ!黒子とか、フクとフリは…」
「アイツ等は無事だ!とにかく、会えてよかったぜ…」
「オレも安心した…」
「「「…」」」
空気×3
…に、なると思うでしょ?思っちゃうでしょ!?秀徳と洛山と正邦だもんね!一人ずつね!
それが意外なことに空気になるのは1人だけなんだよね!
「真ちゃん無事かぁ…赤司と黒子も一緒だし、安心だな」
「緑間くん高尾ちゃんと再会した途端泣くんじゃない?」
「え?…ブファッ!!!ない!それはないって雨倉ちゃーん!」
草が大量に生える勢いで笑う高尾ちゃんにつられて私も笑う。
ついでに緑間くんと宮地さんにボロクソな扱いをされていたと言うとマナーモードに突入。
いつも通りだと言うから笑いが止まって同情の目を向けた。いつもあの扱いか…。
悲しいなぁと遠い目をしていると「こんな状況でもいつも通りでいて安心してるんだぜ?」と言った。
なんだこのイケメン。あの二人こんなイケメンをうざいって言ってんの。まったく分からないよ。
霧崎第一と誠凛と海常の再会は満足したようなので自己紹介をするために円形に座る。
「秀徳1年、高尾和成でっす」
「誠凛1年の河原浩一です」
「霧崎第一2年、山崎弘」
「海常3年の小堀浩二」
「今まで合流してきた人達の中で一番安定感ある…」
「ギャハハっ!!マジか!やったー!」
「一番酷い所ってどこっスか?」
「可もなく不可もなく?」
「そんなことより、オレ達と合流するまでの経緯話せ」
黄瀬くんの問にきゃぴっと首を傾げながら言うと花宮さんに切り捨てられた。
そんなことよりって言われた…みんな私の行動に無反応だし。やだ何恥ずかしい。
私が1人照れている傍らで花宮さんの言葉に高尾ちゃんが元気よく手をあげた。
そんな高尾ちゃんに花宮さんは舌打ちを一つしてから何だよと言った。やめたげて。
「ハイハイハーイ!」
「ちっ何だよ」
「目が覚めてとりあえず部屋から出てみたらさっきの化物に追いかけられて今に至る!」
「……え?」
「…だけ?」
「だけ!!」
「えっ短い!!」
「呆気ねぇよ!!」
「オレらもビックリだよ!開始数秒でイベント発生でさ!!」
「高尾ちゃんゲーム好きでしょ!」
「うん!!」
元の世界に帰ったら通信しようぜ、と話していると二人して花宮さんに殴られた。ひでぇ。
まぁ、高尾ちゃんたちの経緯も聞いたところで次にどうするか話したけど、
もともとはこの階を探索するために来たんだし…と高尾ちゃんたちが目が覚めた部屋に行くことにした。
先頭はもちろん高尾ちゃん。山崎さん一見不良だけど多分いい人だと思う。さっきは平気だったか聞いてくれたし。
黄色いドアの部屋を出てしばらく真っ直ぐ進んだら曲がり角をいくつか曲がると青いドアが見えてきた。
「青いドア…やっぱり意味あるんですかねー?」
「ってことは、他にも色付きのドアがあるってこと?」
「えっとね、白色・水色・ピンク色・黄色・青色!」
「なんか、キセキの世代みたいだな」
「確かに。じゃあ後は赤色と紫色があるとか?」
「でも白色ねーじゃん」
「特に意味はなかったりね。思わせぶりなやつとか」
「なるほどねー」
そんな話をしながら部屋に入ろうとすると、後ろからズル…ッと音がした。
音に気づいたのは私と火神くんと高尾ちゃんだけ。私は経験、火神くんは野生の勘、高尾ちゃんは鷹の目。
音の原因は見なくても分かるけど、今までのやつと音が違うから大きいか床を這っているか。
他にも床を這う化物が出てくるかもしれないし、黄瀬くんに寝技を教えるいいチャンスかもね。
思い立ったらすぐ行動。黄瀬くんに声をかけて動きをよくみるようにと、にんまり笑いながら言う。
「黄瀬くん。さっきも言ったように相手との距離、掛け合いで技をかけるタイミングを図るの。
バスケで言うなら1on1をしてる状況下での駆け引きだよ。タイミングが合わなかったら、とか余計なことは考えない。
バスケ経験0のど素人相手に抜かされるなんて、ありえないでしょ?」
「…!当然っスよ」
黄瀬くんも動きをコピーするのに集中したので、どの技にしようかと思いながら少しずつ近づく化物を見る。
寝技…あーでも固技がいいかな。大きさはそんなにないし動きも遅い。
地面を軽く蹴って化物の後ろに回り込み、肩羽締をした。右手を引いて頚動脈を絞めると、ボフンッと煙をたてて消えた。
そういえば、技をかけたらすぐ消えたから違和感を持てないでいたけど、人と同じく急所は効いた。
つまり、元は人だったという可能性があるということ…?なら、なんで腐敗してるのに存在するのか。
この館にも化物にも、色んなものの謎が深まるばかりで一行に解決しないので頭を振って考えることをやめた。
すると、また厄介な化物が壁からうにょーんと生えてきて火神くんを襲おうとしていた。
しまった!と一瞬でも油断したことを後悔すると、黄瀬くんがソイツに大外刈を決めた。
そのお陰で火神くんは怪我せずに済んだがまだ消えなかったので勢いで転んだ黄瀬くんの頭を軽く撫でてから、
「っとに…面倒で迷惑極まりない奴が出てくんじゃねぇよ!引っ込んでろ!!!」
「ヴァァ゛ァア゛ア゛ッ!!!」
「あ……っ雨倉ちゃんマジ男前!!!」
「ぅおいっ!なんだソレ!」
「雨っちカッコイイーッ!!」
顎目掛けて思い切り回し蹴りを食らわすと消えたので一息ついた。
はやし立てる高尾ちゃんに伴って黄瀬くんもきゃーきゃーと騒ぐ。ありがとう全然嬉しくない。