夢想曲1

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黄瀬くんの頭を撫でてから技を決めたからか高尾ちゃんと二人でうるさい。


「雨倉ちゃん男前すぎだってまじブフォッ!!!」

「途中で吹くなよ」

「いや、今のは惚れそうだったっス!!抱いて!!」

「気持ち悪い」

「そこは乗ってほしかったっス…!!」

「どんまい…っブフッ…」

「茶番はいいから部屋入って探索すんぞバァカ」



二人のせいで花宮さんにバァカって言われた。

黄瀬くんの抱いての一言に引いて根武谷さんの影に隠れた。


青いドアの部屋に入ると、そこは部屋というより物置に近かった。

いろんなものが置いてあるけどダンボールからはみ出るぬいぐるみが気になった。


あのぬいぐるみ、よく小さい子が親からもらうやつじゃないの?なんで子供部屋になかったんだろう。


その疑問は他のダンボールを見てみても一目瞭然。子供部屋にあるはずのおもちゃがあった。

各自、何も言わず探索を始めたが一番チビの私は根武谷さんにあれ見たいそれ見たいと言って取ってもらう。



「あれはー?」

「雨倉ちゃん末っ子だったりする?」

「え、ううん一人っ子」

「そうなの?何か末っ子っぽい…」

「河原くんは…上にいそう」

「姉ちゃんが1人いるよ」

「1人だけか…羨ましいっスわ…」

「どうしたの黄瀬くん…そんな遠い目して」

「オレなんか姉ちゃん2人っスよ…怖いったらありゃしない」

「でも上に兄弟いるの羨ましい…あ、根武谷さん次あれ見たいです」

「もう面倒くせぇから肩車していいか?」



根武谷さんが言った肩車の言葉に胸がときめいた。←

190cmはある根武谷さんに肩車されたらそりゃ2メートルはいくわけでしてでも私には主将が…!!


と思っていると有無を言わさず肩車された。す、素晴らしい…2メートルの世界だ…!!!



「ふぉぉおお…!!」

「雨っち気分はどうっスかー?」

「みんなのつむじが見える!」

「よかったなー」

「落ちないように気をつけて」

「頭も打たねーようにな」

「ダンボール重かったらオレも手伝うよ」

「ちょ、優しさに涙が…」

「雨倉ちゃんも普段どんな扱い受けてんの!!」



ヒャーッ!!と引いて笑う高尾ちゃんを他所に火神くん、山崎さん、小堀さんの優しさにじーんとする。


ダンボールを下げて小堀さんや火神くんに渡すと花宮さんや河原くんたちが中身を確認してくれる。

ダンボール以外にも何かないかなぁと思いふと天井を見てみると、セロハンテープで紙が貼ってあった。


なんでこんな場所に…と思いながらも根武谷さんに横にずれてもらうように言う。



「もう少し横…ストップ!ここです」

「何かあったのか?」

「紙切れが貼ってあります」

「紙切れ?」

「あ、本当だ。なんて書いてあるの?」

「ちょっと待ってくださいね」

「落ちるなよ?大丈夫か?」

「ザキきめぇ」

「オイ」

「花宮さんなんてこと言うんですか。気遣ってくれてるのに」



でもあだ名で呼ぶってことは結局仲いいんだろうなぁと人知れずニヤニヤする。


紙を剥がせたので開いて見てみると、『無色の色』とだけ書かれていた。どういう意味だ?

無色って色がないんだから無色の色も何もないでしょ。何を伝えたいんだか。


根武谷さんに下ろしてもらって花宮さんにその紙を見せると大広間に戻るぞと言われた。



「え、もう戻るんですか?」

「コイツの鷹の目でこの階を視てもらったが他に部屋はなかったからな。居るだけ無駄だ」

「えーでも隠し通路とかあったらどうするんです?」

「もう一回視てもらえばいいじゃねぇか。ですよ」

「あくまで応用だからそういう使い方しねぇしなー」

「でもオレも戻ったほうがいいと思うぞ。大人数で居ても危ないし」

「ですね。暗号のこともこの紙のこともありますし、帰りましょうか」



小堀さんの言葉に私も頷いた。

そして部屋から出て階段を上がり、大広間目指して戻る。その間は化物に遭遇しなかったから安心した。


まぁ、最初に消したのもあるし春日先輩とかが消してくれてるんだろうな。


どれだけ倒したのか数えてないけど化物に限りはあるのかなーと思いながら大広間のドアを開けた。

部屋に入った途端、ワッと各校で再会劇が始まった。恒例でいいよね、うん。



「お…っお、おおっん、おん…!!?」

「笠松先ぱぁぁあああい!!!中村先輩も!!!」

「黄瀬!」

「よかった、小堀無事だったんだな…!」

「森山に早川に…笠松も、無事でよかった」


「古橋!?」

「なんだザキかよ。瀬戸いないのー?」

「悪かったなオレで…ッ!!」

「…花宮と山崎か」


「小金井先輩、木吉先輩!!」

「「カワー!」」

「フク、フリー!!!」

「皆さん無事でよかったです」


「あ、真ちゃんに宮地先輩」

「高尾!?」

「ケロッとしてんじゃねぇよ轢き回す!!」

「無事なのにこの言われよう!!まぁいつも通りで安心したっス。真ちゃんは?平気?」

「貴様の頭よりはな」

「オレの頭…!!真ちゃんの中でどうなってんの…ッ!!プグゥッ…!!!」



すごい再会劇だなー…と遠い目をしながら正邦のところへ行こうとそちらを見る。

主将と津川と春日先輩がいる。しかしながら主将の腕には何やらガーゼが!!!



「イヤァァアアアア!!!!主将んんん!!!どうしたんですかその怪我ぁぁあああ!!!!」

「うわ言うと思った」

「うるさいよ雨倉」

「化物!?化物なんですか!?この部屋に来たんですか!!そいつ何処ですか今から抹消しに…」

「雨倉、座れ」

「はいっ!!!」

「雨倉ちゃんオレの腹筋をどうしたいの」

「主将の怪我の原因を知りたいだけだから知ったこっちゃない」

「ひでぇ!!」



またお腹抱えて床に突っ伏す高尾ちゃん横目に主将の前で正座する。

お前本当岩村のこと好きな〜と春日先輩に言われたので尊敬してますのでと答えた。


とにもかくにも主将に怪我させた奴許すまじ!!!後で話すと言った主将を他所にそう心に決めた。
 
 

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