夢想曲1

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さてと。全員無事に揃ったということで今回は最初に帰ってきたから最初に話したいな。

手をシュバッと上げてホラホラ当ててもいいのよ?今回は簡潔に話すから!という意を込める。


すると赤司くんがじゃあ雨倉から、と言ってくれたのでおっしゃ!とガッツポーズをしてから話し始める。



「えっとですね、子供部屋に着いたら水戸部さん、大坪さん、氷室さん、瀬戸さんの4人がいました!

んで私は紫原くん。小金井さんは水戸部さん。高尾ちゃんは大坪さんに肩車してもらって二人には指示してもらいました。

天井を探ってると天井の板?タイル?か分かんないですけどズレて裏にこれが貼ってありました!以上!」


「ココに来て簡潔に話すってことが分かったのかお前」

「ちゃんと説明しなきゃって思ってたんですけど花宮さんが簡潔に話しててそれでいいんだって分かって」

「スゲーじゃん花宮。真似されるくらい懐かれてんじゃん」

「やめろ反吐が出る」

「真似は褒めすぎでしょ」

「まぁ簡潔に話すという意味を理解できていなかっただけなんだろう」

「何なの霧崎第一の人!!?そんな否定する!?」



想像以上に受け入れられなかったことにしょぼくれていると山崎さんがドンマイと声をかけてくれた。

…多分、霧崎の良心のこの人がいなかったら私メンタル削れてたよ。何でラフプレーするんだか分かんないよ。


しみじみとしていたら今度は主将が話し始めたので真っ直ぐ座り直す。



「オレ達が向かったベッドしかない部屋に何かヒントがないか探したが見当たらなかった。

それで部屋を出たところで大室達とバッタリ会って此処の話をしながら戻ってきたというわけだ」


「オレらん所は坂本たち見つけただけで得に収穫はなかったよ〜」



主将に続いて話した春日先輩の話を聞いて赤司くんは頭脳組を集めて他は休憩に入るよう言った。

ソファに座ってる私たちは移動せずに少し前に赤司くんが見つけた紙をムム…と睨みつけながら考える。


ふともう片方に持っている私たちの探索で見つけた紙が目に入った。

それと赤司くんたちが持ってきた紙を見比べて少ししてやっと理解したので声をあげた。



「……、あ!!分かった!」

「何や今分かったんかいな。そっちの自分らが見つけてきた紙理解しとったんとちゃうん?」

「え、何でそのこと知ってるんですか?」

「まぁええやん」

「何か流すの上手いですよね今吉さん…」

「そない褒めやんでええよ」

「赤司。どうして雨倉が理解するのを待つのだよ。オレにはその考えが分からん」

「何だ、分かっていないのか真太郎」

「…、長い時間こんなところに居るより早く戻る為には分かった時点で言う方がいいだろう」

「それだと雨倉が一人になった時に暗号が出てきたらどうするんだ?」

「!」


「万が一の話だが雨倉と僕たちが切り離される状況下に至った場合にこの程度の暗号が自力で解けなくては困る

だから今の内に慣れていってもらわなくてはならない。だから雨倉が理解できるまで待っているんだよ」



最初に此処で会った時と変わらない調子で微笑んで緑間くんにそう言った赤司くんに思わず瞬きをした。

私自身そんなこと考えてたなんてサッパリで驚いたっていうのもあるけど、そこまで想定してるんだ。


頭がいい人の思考を理解できないとはよく言うけど正にこのことっぽいなぁ。


花宮さんと今吉さんが何当たり前のことを言っているんだ?って顔してるのが腑に落ちないけど。

ああそうですか頭脳組の更なる頭脳派の人たちはそれすら分かってるんですか。

へいへいどうせ頭のいい人同士で通じるものがあるんでしょうね。私が高尾ちゃんに親近感を感じるのと同じで。


っていうかそうだよ私今吉さんが言ってた通りコレのヒント解いてんじゃん。



「つーまーりっこういうことですね?」


「おー正解」

「少し前からの暗号は全て雨倉さんが見つけてきた紙から分かるようにボウリングがヒントで答えだったのね」

「順序がちょっとおかしくなっちゃっただけで最初の暗号以外はボウリングって…」

「ボウリング好きなのか?」

「さぁ…ただ原の話によると数字を入力するキーがあったらしいから合計点数を入れんだろ」

「ほい書けたでー」


「うわ。線真っ直ぐすぎません?」

「そんなんバインダー使って線引いただけやないか。フリーハンドやったら綺麗すぎやろ」

「デスヨネー」



ご丁寧に+と×が書かれているのでその通りに出た数字を後から計算すると『32665』が出てきたのでメモ。


すると今吉さんが「全員揃っとるし暗号入力したら最終局面に入るかもしれんなぁ」とニヤリと笑った。

この人が最初から居れば色々と楽だったんじゃないだろうかと思い苦笑いをしてしまった。


でも、最終か…薄々感じてはいたけど最終局面が近いということはあの女の子と対面するのも近いということ。

もし赤司くんの言うとおりに切り離されることになったら私は何ができるんだろう。


そういえば女の子の両親の生死も明確に分かってないな、と思いそろーっと日記に手を伸ばす。

中を開けてみると、ちょうどお姉ちゃん連呼のところだったのでゾワっと鳥肌が立った。



「って、あ゛!!」

「ちょい借りんでーってうわっ!!えげつなっ!!」

「血文字平気なんですか?」

「平気な奴の気が計り知れんわ。人に聞くだけやなくて自分で見て分かることもあるからなぁー」

「あーなんか分かる気がします」



そう会話をしながら今吉さんに日記を渡すと、花宮さんが心底ウザったそうな顔をしていた。

疑問に思っていると日記を見て一切こっちを見ていない今吉さんが中学の後輩や、と教えてくれた。


…あの…教えてくれたのはいいんですけど、私今何も喋ってない…



「ハッ…尻目?」

「何でそんなん知っとんの?いや、違う。違うからな?雨倉さん顔に出とるだけやから」

「…あっサトリ?」

「ふはっ」

「よう知っとんなぁ。花宮もコレ気になるんかーそんなら一緒に見ようやないか。のぉ花宮?」

「ゲッ!来んな近寄るな!アンタが見た後でいい!来んじゃねぇ!!」

「ええやんそんな遠慮しやんでも。ワシと花宮の仲やないかホラ逃げんでええで〜」

「知るかんなモン!!雨倉テメェ笑ってんじゃねぇよ潰すぞ」

「あぁぁあああ忘れた頃にやってくるこの暴力!!頭蓋が頭蓋が!!」



中学の先輩後輩ってもうちょっと仲いいものなんじゃないの!?

変な流れ弾が私にも来たので急いで諏佐さんと若松さんの背中に隠れると匿ってくれた。優しい…


私ここに来て皆に迷惑かけてるって思ってたけどこうやって優しさに触れて仲良くなれて嬉しいけど、そう思っちゃうのはダメかな。
 
 

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