夢想曲1

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あの花宮さんが嫌がる今吉さん…師匠と呼びたくなった。

一回でもいいから花宮さんを投げたくてだな。今吉さんと協力したらできるかな。


アッでもそれで宮地さんと手組まれたら死亡フラグしか見えてこないからやめとこ。

自分の潔さに何だか切なくなっていると今吉さんが日記を読み終えたようだったので声をかけてみた。



「どうでした?」

「まぁ赤司が言うとったことは粗方理解したわ。雨倉さんはボンヤリとしか分かっとらんねんな?」

「え?はい」

「ほなこの日記の子の両親はどうなったと思う?」

「…生死不明か、既に…ですかね?」

「もしくは此処のエネルギーに命として使われているかだろうね」

「!?起きてたんですか瀬戸さん!!」

「聞こえたから」

「せやな。そんで日記の中に書いてあることも合わせたら少なくとも4人は殺しとる」



相当な犯罪歴出来上がったな、と声の調子を変えずに言う今吉さんに狼狽えた。


そうだ、私と会ったからこの子はおかしくなって結果的に4人もの人を犠牲に…

そこまで考えてふと気づいた。この子自身は、どうなってるのか、と。


遊んでいた子や親は亡くなっていると仮定して、この子については何も書かれていない。

精々私とどうしたいか書いているだけで明確には分かってなくて…あれ、どういうことになるんだろう。

えーと、女の子の生死がわかってないということはまだ生きていて助け出せる可能性あり!?



「…何やちょい晴れた表情になったやないか」

「けどコイツが生きてたとしても後々どうなるかはわかんねーぞ」

「4人も殺してるからね」

「両親についてはまだ確定してないじゃないですか!!」

「ふはっ無理やり思考をプラスにしても結局マイナスになるんなら意味ねぇだろバァカ」

「こういう時こそそういう風に考えてもええやないか。ホンマ捻くれとるなー更に曲げて真っ直ぐにしたろかその根性」

「協力しますよ」

「「うわビックリした!!!」」




突然出てきた黒子くんに今吉さんと一緒に驚きの声をあげた。

どうやら再び召集をかけられたらしくそれを伝えに来てくれたんだとか。どうもありがとう…。


女の子を助けた後のことはその時に考えるとして、まずは僅かな可能性でも見つけて前向きにならないと。


ふー、と息を吐いて再びソファへと向かう。もう赤司くんの隣に座る云々はどうでもよくなってきた。

私もようやく慣れてきたよ。いやそれだけ長い時間いるんだと思ったら早速気力削れそうだけどさ。

多分これから話す内容は最終局面に入る事についてとベッドしかない部屋の数字入力する事についてかな。



「此処に来てどれほど時間が経ったかは定かではないが、やっと全員が揃った。

恐らく犯人は全員がいなければ何かしらできない仕掛けを作ったんじゃないかと思ったが、そうでもないらしい。

日記を見る限り、僕たちを殺しにかかっているからね。じゃなきゃ化け物なんて作るはずも置くはずもない。

何はともあれ全員無事でいることに安心したが、まだ油断してはいけない。ここから気の引き締め所だ。

先程解いた暗号を記入しに行くために雨倉率いる僕、桃井、今吉さん、宮地さん、テツヤで行く」


「…頭脳派固めたね?」

「頑丈に閉ざされた、ましてや地下だ。何が起こるか分からないからね」

「ちょい待ち。俺とか伊月さんは?確かに赤司も“目”使えるけど相手が見えなきゃ意味ないだろ?」

「そのことか。2人でよく話し合って決めてくれないか。ここで全てを出し切るのもいけないからね」




そんな赤司くんの言い方に引っかかりを覚えた。

今吉さんも最終局面が近いという中でまだ先があるみたいな言い方だ。


まぁ頭良い人の言い方はひっかかりを覚えるものばっかりなんだけどさ。と頬を掻いた。

また原さんが入ろうとしたら板が出てきて入れなくなった、みたいな二重トラップならぬ三重トラップあったら怖いな。

そうこうしている内に伊月さんと話終えたのか軽く手を上げた高尾ちゃんに視線を向ける。



「話し合った結果、オレが行くことになったぜー」

「分かった。では宜しく頼む」

「馬鹿やって足引っ張んじゃねーぞ」

「っはー!宮地サン手厳しいっ!」

「赤司、ちょっといいか」

「?はい」



ワイワイとはしゃぎ始める秀徳を見て私も主将とワイワイしたい…と思いながら見つめた。ガン無視だわ。

悲しい…と悲しみに浸り始めていると赤司くんと何かを話終えた坂本先輩がこちらにグーサインをしてきた。


なんのことか分からずに疑問符を浮かべていると、オレも行くから。と爆弾を投下された。


突然のオレも行く宣言に思わず固まっていると、私が怪我した場合を考えてのことらしい。

確かにそうかも…私が怪我して皆を守れなくなったら坂本先輩に倒してもらわなきゃならないしね。


…とか言ってみたけど多分本音は桃井ちゃんに良いところ見せたいだけだろうな。ケッ!

親指立てて「雨倉の手がまわらない分オレが守るぜ」じゃねーよ絶対回してやる。


そう心の中で決心していると赤司くんに行くぞ、と言われたのでソファから立って後ろをついて行く。



「前は私が行くんで坂本先輩は後ろお願いしていいですか?」

「任せろ。雨倉もヘマすんなよ」

「分かってますよ」

「一番は化け物が出てこないことだけど…」

「んーまぁ今は視た限りいねぇけど」

「高尾ちゃんかっくいー」

「だろぉー?」

「高尾は真ん中でいいだろ。何かあったら前か後ろかで指示できるし」

「うっす」



ていうかうん、私ここでも赤司くんの隣なのね。ソファでは兎も角、ここでもかー…

後ろというか前から私と赤司くん、桃井ちゃんと高尾ちゃん、宮地さんと坂本先輩の順だ。


番号を入力するために解いた暗号の紙を持っているのは赤司くん。安定すぎてもう…ね…。

途中で何体か出てきたので坂本先輩と一緒になぎ倒していったけど坂本先輩ただ動きたいだけでしょ。



「それにしても、どうしてこんなに出てくるんだろう?」

「思ったように雨倉が手に入んねーから体力削ったり仲間襲ったのを守る時にできる隙を狙って捕らえたりする為じゃね」

「じゃあ最初から皆巻き込むなよって感じなんだけど」

「双葉ちゃんも、だよ!」

「ありがとう桃井ちゃん最高の癒し…」

「着いたぞ」

「はいはー……、高尾ちゃーん」

「まっかせろ!」



またやるところだった。いかんいかん…と内心汗をかきながら高尾ちゃんに言うと笑顔で引き受けてくれた。

やっぱりお兄ちゃん頼られたいのね、と思いながらドアを開けて中を確認した高尾ちゃんに続いて中に入った。
 
 

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