番外編

□未来から
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はい、どうもこんにちは黄瀬涼太っス。

ちょっと何が起こったのか分からないんで順々に思い出していくっスね。


赤司っちに決められた探索組でオレと雨っちと桜井くんと笠松先輩の4人は書斎の探索に行くことになった。

何かヒントとかないかなーって探してたら雨っちが【気持ち次第でどうにでもなる薬】って書いてある瓶見つけて。



「あの…これ、笠松先輩が飲めば女子平気になるんじゃないっスか?」

「毒だったらどうすんだよ殺す気か?」

「とか言いつつ蹴らないでくれません!?」

「気持ち次第…よく分かんないけど飲まないことには分からないよね」

「え!?まさか一気飲みするんですか!?」

「んん、じゃあちょっと残しとこう」

「!?ば…っ飲んっ」



ぐいっと勢いよく瓶の中の液体を飲んだ雨っちがボフンッと煙に包まれて数秒後。

煙の中に居たのは瓶の中身を少し残した、雨っちより少し身長が高い女の子…いや、女の人だった。

雨っちでも耐性がついてない笠松先輩はショートして桜井くんはあばばと口を開けたまま動かない。

オレ?オレだって突然雨っちが女の人になって驚きを隠せないっスよ。つまり現実とーひってやつ。


胸より少し上まである髪をサイドで一つにまとめててロングカーディガンの下にシャツとサブリナパンツを履いている。

落ち着いた女の人だけど、ポカンと呆けた顔をしたあと、オレ、笠松先輩、桜井くんの順で顔を見る。


そしてクスリ、と赤司っちみたいな落ち着いたってより大人びた?笑みを浮かべて自分を指さした。



「誰でしょーかっ!」

「っへ?」

「制限時間は4秒!」

「え!?」

「4、1」

「2と3はどこに行ったんですか!?っあ、す、すみません!」

「あははっタイムアーップ!正解は雨倉双葉、大人バージョンでっす!」

「…え、やっぱり雨っちなの!?」

「いえっすいえっす。やーこの洋館も懐かしいなぁ。笠松さんが固まってるのも懐かしいー」

「あ、が、…っそ、」



笠松先輩しっかり!!!気を確かに!!!と心の中でエールを送る。


さっきまで小柄ながらたくましく化物をなぎ倒してた元気いっぱいの雨っちからすごく大人になっていてオレでも反応に困る。

少し身長が伸びて元気さは変わらなさそうだけど、その〜…さり気なく出てる色気が…。


それで更に大人の女の人って感じがしてうかつに話しかけれない。

雨っちは不満そうだけどそもそも雨っちって呼んでるのがそぐわない気がする。雨倉さん、もしくは双葉さんって感じ。


大広間に戻る少しの間だけでも桜井くんは大人びた雨っちにドギマギしてるし、

笠松先輩に至っては真っ赤通り越して真顔だ。人って顔の筋肉使わなかったらこんな怖いんスね。

ただし動きはガッチガチ。右足と右腕同時に出てるっスよ先輩ほんとしっかり!!!


大広間のドアの前に着いて、雨っちがイタズラに笑ったかと思うと勢いよくドアを開ける。



「Hi!How is everyone?見つけた薬で未来からやって来た双葉さんだよー!」

「「「「!!?」」」」

「え、双葉ちゃん!?」

「おあー新鮮な反応!いいねいいね!まぁ詳しいことは私じゃなくてー…黄瀬くん説明できる?」

「あっはい」

「敬語なんて使わないでよー!私からしたら違和感しかないって!」

「…雨倉が岩村に反応しない!?」

「大人だ!成長してる!!」

「娘が父親離れしたのか!?」

「おい雨倉、岩村主将ちょっと寂しそうにしてるだろ反応してやれよ!!」

「いや岩村さん今上司的な感じだし毎日職場で顔合わせてるよ」

「「「「いっ岩村さん!!?」」」」

「ちょっと正邦酷くない!?大人になったんだなぁってホロリ涙流すところでしょ今のは!!!」



そう言ってムスーっとしながら当然のようにソファに座る雨っちに苦笑いしかできなかった。

変わってないのに変わってるっていう変な感じなんスよねぇ…。


何で雨っちがこうなったのか説明すると宮地さんや花宮さん、黒子っちに降旗くんまで馬鹿を見る目で雨っちを見る。

それに対して大人になった私に会えたことに免じて許してちょ、とおどけてみせた。

オレとしてはいつもと変わらずこの洋館について聞き出そうとしてる通常運転の赤司っちが怖いんスけど。


確かにちょっとは目を瞬かせてたけどそれだけだしスゴイなーって。

あと青峰っち胸は成長してないんだなとかうるさいから。ほら無自覚セコムの正邦の人らの目線怖いから。

目線で人を殺しそうな正邦を他所に大人雨っちに興味津々な桃っちと誠凛のカントクさんと話す雨っちを見る。



「へぇー!じゃあ今は先生やってるんだ!」

「まぁね。時々正邦に行っては武術の臨時講師やったりしてるよ」

「今も続けてるの!?なのに筋肉は…」

「言わないで悲しいから。いいんだよ別にこの前なんか痴漢も引ったくりも倒したし」

「そこは捕まえた、じゃないのか」

「倒したんだよ」

「…ねぇ双葉ちゃん、今の双葉ちゃんって何歳なの?」

「ん?んー知りたい?」

「知りたい知りたいっ!」

「ふふっなぁーいしょっ」



年齢を聞きたがるカントクさんと桃っちを微笑ましそうに見ながら人差しを立てて口元にやりそう言う。


少しざわついてた空気が固まった。

ピタリと静かになったことに不思議に思って首を傾げて皆を見渡す雨っちはいつもと変わらないようだ。


でも言わせてもらうっスね。


何なんスか今の一瞬の色気は!!?隠し持ってる武器なの!?いつも出してるんじゃなくて今みたいに一瞬しか出さない秘技!!?

モデルだしそういう色気持ってる人いっぱい見てきたけど今の破壊力はハンパなかったっスよ!!?

常に出してるわけじゃなくて、こう、何ていうか色気ないって油断させた所で一瞬だけ色気を出す卑怯さっていうの??

それに微笑みかけあわせちゃダメでしょ!!!大人だし女の人だし色気すごかったし!!!



「…ちょっとー。みんな固まってちゃつまんないんだけど?」

「双葉ちゃん結婚しよう」

「落ち着こうか森山さん。赤司くんまで固まってたら皆も固まったままなんだけど?」

「…あぁ、いやすまない。少し驚いて…」

「少しどころの目の見開きようじゃなかったんだけど…」

「双葉ちゃん、ううん双葉さん!素敵!どうやったらそんな素敵な大人の女性になれる!?」

「ちゃんのままで良いよ、さつきちゃん」

「さっさつきちゃん!?どこで!?どこで名前呼びになったの!?」

「えー?桃井ちゃんじゃなくなるちょっと前からかな〜?」

「ええええええ!!!?あ、相手誰だろう…!?もしかして…えっまさか!?きゃぁぁあっ!!!」

「雨倉さんは雨倉さんのままなの?」

「雨倉はー…あとちょっと、かな?」

「「相手は!!?」」

「がっつき凄いな。相手も年齢もナイショ!分かった?」



そう言って軽く首を傾げながら微笑んだ雨っちはまた色気を出して皆再び静かになった。

あれ?ちょっとまたー?と不満げな雨っちを他所に大人雨っちの相手の人大変だろうな、と思った。

***

元に戻った雨っちを見て宮地さんや花宮さん、春日さんや正邦の人たちが思わず声を漏らす。


「「「「「「こんなちんちくりんが…?」」」」」」

「な…っどういうことですかそれ!!?非常に遺憾ですぞ!!!」

「なんだその口調。もうお前急に大人になるなよ?怖い」

「ど、どういうことですか本当に…主将に頭撫でられたのはよく分かんないけどラッキーだった…」



何て言うかみんな一緒に成長して大人になっていくのが一番だって分かったっス。

 
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