♪もしもシリーズ♪

□隣の隣。
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ねみー…。超ねみー…。
フラフラと階段を降りてごみを捨てる。


「おはよーございます。」

振り返るとスーツを着た同じ歳くらいの男性がゴミ袋を持ってこっちに歩いてくる。

「あー、はよーございまーす。」

まだ寝ぼけながら挨拶する俺にその人は笑った。
爽やかな朝が似合っちゃいますね…。



「今から仕事っすか?」

「あ、はい。」

「上田さんは夜からでしょ?」

にっこり笑ってサラっと言われた言葉に二重で驚いた。

「名前…、あれ?仕事も…?」

ちょっと怖…って引いてる俺に気づくと慌てて弁解し始めた。

「いやいや!すみません!名前はこないだ友達のかたがドア叩きながら上田ー!って叫んでたのが聞こえて…。あ!俺、隣の隣に住んでる中丸雄一って言います!そんで仕事は…その実はお見かけしたことがありまして…。いや!ストーカーとかじゃないですよ!?マジで!?」

早口で捲し立てる様子がおこしくて笑うのを我慢してたけど、俺の肩が小刻みに揺れてるのを見てまた情けない声で笑わないでくださいよーって。

「クッ…クク…あはははは!!!! 超テンパりすぎっしょ!! ウケるー!あー目覚めたあ!」

腹が痛くなるくらい笑って中丸さんを見ればさっきまでと違って優しい表情でこっちを見てた。

「上田さんて…もっとクールな感じかなって思ってました。笑うと可愛いですね?」

今度はこっちがテンパる。
可愛いとか言うか!? 真っ赤になった俺に変わらずにこにこしてる中丸さんを軽く睨み付けた。

「照れてんのも…可愛いっすww」

だぁ!なんなの!コイツ!(もはやサン付けとか必要ねー!)

ちょっと負けた気分で中丸を睨んでたら、Yシャツの襟元のとこギリ隠れるくらいの際どい場所に紅いソレを見つけた。俺は仕返しとばかりにニィっと笑うとトントンと自分の首を指差して

「見えちゃうよ?つける場所には気をつけるようにカノジョに言わねーとww」

絶対顔真っ赤にして動揺すると思ってた中丸は予想外の反応をした。

「あぁ、カノジョじゃないっすから」

至極めんどくさそうに言う中丸に俺はぽかんとした。
いかにも真面目です!みたいなくせして……カノジョじゃねーけどしちゃってるワケね…。しかもめんどくさそうな態度。だけどそこに男を感じて意外な一面にドキっとしたとか認めたくねー!

「だいたい付けられるより付けたいですけどね。」

意地悪そうな微笑みにゾクっと背筋に震えが走る。

「……へぇ。」

「そんな引かないでくださいよ?冗談ですって(笑)」

そう言って爽やかリーマンに戻ったけど俺はもうこっちの顔は偽物にしか見えなかった。

「会社、遅刻しねーの?」

目を逸らしたら負け!みたいな勝手な勝負をしながらまっすぐ見つめながら言うと、あ!って腕時計を見てやべぇ!って言いながら「じゃ!いってきます!また!」って走っていった。




遠ざかる足音を聞きながらくるりと背をむける。
あー、やべぇのはこっちだっつうの!
あの偽物の裏の顔を暴いてみてーって興味そそられちゃったじゃん!
ありゃ絶対Sだな!

階段を登って隣の隣に視線をやれば自然と笑みが零れた。



END

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