♪もしもシリーズ♪

□かわいい年上のヒト。
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タンタンタン…!

来た来た。
廊下も階段も走っちゃいけません。って言うくせに完全に忘れてる。
屋上のドアが開いて人の気配。
寝転んでた体を起こしてコーヒーを飲んだ。


「いたー!中丸くん!探したー!」

ハァハァと息を切らせてきたのは新米教師の上田竜也。

「お疲れ、せーんせ。」

俺は飲んでた紙パックのコーヒーを差し出す。
先生はいりません!と口を尖らせて断った。
年上のくせにリアクションがいちいち子供っぽい。その唇に触れたいなんて、近頃俺はどうかしてる。


「お疲れ、じゃない!今日こそクラスの話し合いに出てください!」

生徒の俺に敬語使うとか…ウケる…w

「だーかーらー俺はいいって。いないやつとして扱って。」

そう言ってまた寝そべる。

すると先生は俺に近づくと隣に座った。

「なんで?中丸くんいるでしょ。そんないない人なんてできるわけないよ。」

目だけを先生に向けると俺を心配する真剣な瞳とぶつかった。
少しの穢れも知らないような綺麗な綺麗な瞳を歪んだ色に染めてみたいって思うのは…多分…暑さのせいだ。

そんな気持ちと先生の視線から逃げるように目を閉じた。

「なんで出ないの?………はっ!もしかしていじめられてんの!?」

「はぁ?」

全く的外れなこと言うから思わず肘をついて体を少し起こしてしまった。

「俺で良ければ話聞くし!」

今どき教師にいじめられてますなんて言うやつもいねーだろ…。
しかも俺いじめられてねーし。むしろ逆のほうでしか疑われねーのに。
なんとなくこのまっすぐな教師を困らせてやりたくなった。

「なに?話聞いてどうすんの?」

俺は完全に体を起こして上田のほうを向いた。

「話聞いて…全力で助けるよ!いじめてる子たちだって…きっと話せばわかるはずだし!」

拳を握って一生懸命なその様子に口許が緩む。

「なに!なんで笑ってんの!? 大丈夫!俺は絶対味方だから!」

俺の両肩を掴んで、ね?って首を傾げて俺を見る仕草に気づいたら先生を抱きしめてた。

「え?え?え?」

急に抱きしめられて当然ながらワタワタする様が可愛くて(体が反応したんだから認めるしかねー…)そのまま耳元で囁いた。

「せんせ、ちょっとダケこーさせて。」

視界に入る先生の耳は真っ赤で腕の中の体はガチガチだけどソッと回された腕に柄にもなく幸せな気持ちになった。

そのときまたドアが開く音がした。
ちょうど俺の視線の先がドアだったから登場した人物と目が合う。


「んなっ…!? なん……!え…!なか…フガッ!」

同じクラスの田口と亀梨だった。

田口は俺らのこの状況に目ん玉落ちるんじゃね?っつうくらい驚いてなにか言いかけたけど、後ろから亀梨に口を塞がれて引きずられていった。
正直邪魔されずに済んでありがたかったけど亀梨のニヤついた顔はムカつ
いた。

「な、中丸くん…!今!誰か来なかった!?」

背中に回した手でシャツをギュウギュウとしながら聞く先生。
だけど離れていく気配はない。
俺の言葉を素直に聞いてくれてんのは嬉しいけど、こりゃあんまり素直で心配だわ。

「いや?誰も?風の音。それよりせんせー?」

名残惜しいけど抱きしめてた力を緩めて顔を寄せた。

「ちょ、近い!近い!」

「せんせー、俺以外にこんなことさせたらやべぇよ?」

「へっ!?」

言ってることがわからないらしくパシパシと瞬きを繰り返す。

「だから、こんな風に簡単に抱きしめられちゃやべぇよって言ってんの。」

呆れたように言えば先生はぷうっと頬を膨らまして俺の額を手のひらで叩いた。

「今まさにやってきた人が何言ってんの!俺だって誰彼構わずなわけないだろ!中丸くんだか…ら…! あ…!」

そこまで言ってヤバい!って顔した先生は勢いよく立ち上がった。

真っ赤な顔で逃げ出そうとした先生の腕を素早く捕まえる。

「ほんと素直で困るよ?せんせー。せっかく優しくしてやろーかと思ったのに……。」

なんて俺なりの“優しく”なんだけど。

その言葉にえ?って俺を見下ろす上田がマジでたまんなくて俺はまた腕の中に閉じ込めた。

「離して!中丸くん!」

今度は抵抗してバタバタともがいてる。
それを力一杯抱きしめる。

このかわいいかわいい新米教師が他の野郎共に狙われんのは目に見えてる。
他のヤツにくれてやるなんて冗談じゃねぇ。
密かに毎日学校に来ることを決めた。

青空の下で明日からの日々に心が浮き立つのを感じながら先生を更に強く抱き締めた。



END





〜おまけ〜

「ショック…上ぴセンセイが…あぁ…」

「おまえ、マジだったの?無理無理。速攻諦めろ。相手にされてねーし。あとアイツにフルボッコ。」

「えぇー…やっぱ無理?ねぇねぇ!アイツって中丸くん!?付き合ってんの!?ねぇ!」

「うぜ!知らねーよ!だけど上田と中丸見てたらわかんだろーが。おまえ気づいてねーの?中丸、上田が教室にいるとき絶対いんだぜ?それに上田も中丸のことちょいちょい気にしてんだろ。」

「全然知らなかった…。うーわーショックすぎるーーーー!!」

「うるせぇ!ほら!行くぞ!」


無意識でも恋する気持ちは隠せないってこと。



ほんとにEND

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