Who is she?

□絵石家塔湖『最後の自分像』編
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【共鳴】





「あーあ…期待してソンした…」


足元に転がる死体。
だらしなく体にまとっているスーツは自分のものではなく。


「失礼します総理。お部屋の清掃を…」


と言って入ってきたのはパートナーであるアイ。


「うん、ちょうどいいとこ。片付けといて」
「………また好き放題散らかされましたね、X」
「だってさぁ、正体言ったとたんに撃ってくるんだもん。ついついカッとなっちゃって」


体内に残っていた弾が耳からバラっと出てくる。
アイは横に置いてある赤い箱に目を移して。


「それで…どうでした?総理大臣になられてまで使った彼らの能力は」
「てんでダメだよ。こいつら調査に関してはプロ中のプロだと思ってたのに」


俺の正体を知るには、似たようなやつを知るのが一番。
そう思って内閣調査室に調べさせたのに。


「あ、ねぇそう言えばさ。あの娘どうしてるかな?」
「…あの娘、とは」
「いつだったっけ、箱作った時にさ、怖がらずに話しかけてきた娘いたじゃん」
「あぁ…あの時の。確か、今は高校生かと」
「名前はなんていったっけ?」
「………橘 望愛ですね。…それにしても珍しいですね。貴方が覚えているなんて。三年も前のことを」
「まぁね。あの娘と共鳴したのは確かだったし」
「共鳴、ですか」
「うん。“変化していく恐怖”。アイ、今あの娘がどうしてるか調べといてよ」
「かしこまりました」



アイの返事に満足した俺はうん、と頷いて。



「さーて、じゃ、行こっかな」
「あっ…X!!」
「?まだ何かやってなかったっけ」
「盗み盗み。『怪盗』キャラ『怪盗』キャラ」
「あー………そっか。じゃこの自由の女神型ライター盗んどくよ。…で。あげる」

「………………X、たまにはもっと良い物を盗まれては?よりによって首相官邸でこんな物…」
「…だってぇー…世界中から名品盗んできたからさ、今更こんな所…興味惹かれる物置いてないんだもん」
「……私の家にはどんどんB級グッズがたまっていくのですが」



アイの話を無視して。



「あ!でも次は違うよ。今ちょっと欲しい品があるんだ」
「欲しい品?」
「うん、一級の美術品さ。ネウロと一緒でね、その品にも特別なものを感じてる。俺の正体を知るために…あれをじっくり観察してみたいんだ。せっかくだから…あいつもそこに招待しようと思うんだ。あとその望愛も呼んでおいてよ」



俺が手を素早く動かすと、防弾ガラスにヒビが入って崩れ落ちた。



「…というわけでここの始末は頼んだよ。俺はまた…誰かになって潜るとするよ…」

「いってらっしゃいませ、X。今度こそ…あなたの正体が見つけられますように…」






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