Who is she?
□閑話休題
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【近況】
ヒステリアの事件を解決したあと、笛吹に呼び出されたので望愛と石垣に運転させて警視庁の笛吹の所へ。
「…最近、なのか?」
「何が?」
「……親父さんたちは」
「…うん、でももう三ヶ月は経つよ」
ラジオの音しかしていなかった車内で、気まずそうに彼女の父たちの話題をあげた。
「…そうか」
「父は交通事故、母は病気…兄は自殺」
「……」
「最近、って言っても昨日なんだけどね、私社長やってたんだ。でも私が16歳で、周りの人に認められなくて、辞めてく人が増えたから秘書の人に全権譲って辞めてきたの」
「……頑張ったんだな」
思わず俯いてしまった彼女の頭を撫でた。
「…笛吹も心配してた」
「知ってるよ、だって最初に会ったとき一瞬だけ泣きそうになってたもん」
「望愛には敵わないな」
「えへへ…」
かすかに浮かべた微笑み。彼女は本当に昔と変わらず人の心を安らげる笑顔だった。
運転している石垣は会話に口を出せずに運転に集中しようとしてるけど明らかに耳がこちらに傾いてる。
「…ひとりぼっちになっちゃったよ」
「……親戚は」
悲しげに言う望愛に聞くと、ゆっくりと首を横に振った。
「三年前に、みんな殺されちゃった」
「みんな…?殺されたって…」
「私達家族の四人と行方不明の叔父さん以外全員………箱、に…」
彼女の言葉にかつて目にした光景が蘇るがすぐに振り払う。
そして、ふと記憶をかすめたある事件。三年前といえば、ある家族の親類が全員まとめてXに箱にされたという事件。
「…あれは、望愛の…」
「うん。名字違ったし、気付かないのもしょうがないよ」
「…ごめんな」
「いいの、今はひとりぼっちだけど、桂木さんが叔父さんを見つけてくれるって信じてるから」
「…見つかるといいな」
「うん!」
そこまで話すと、ようやく警視庁に着いたらしく、彼女の手を引いて、笛吹の待つ部屋に案内した。
彼女がコンコンコン、とノックを三回鳴らすと中から緊張感を持った声が入室を促した。
「失礼します」
「…よく来たな」
今、この部屋にいるのは、笛吹、筑紫、俺と彼女の四人だけ。
昔、遊んだ時のように駆け寄って笛吹に抱きつく。今度は笛吹も拒まずに受け入れている。
顔を真っ赤にして慌てる姿に懐かしいながらも少しだけ胸がいたんだ。
笛吹から離れて今度は筑紫に抱きつく。昔もそうだったけど筑紫は全くと言っていいほど表情を変えない。で、最後に俺にも抱きついて、とびっきりの笑顔で挨拶してきた。
「久しぶり!」
「全く、外見だけ成長して中身は子供だな」
「…抱きつかれて顔真っ赤にしてたくせに」
「うるさいぞ笹塚ッ!!」
「落ち着いてください、笛吹さん」
懐かしいやりとりにさらに笑顔がこぼれる彼女。
「そうだ、望愛。これをやろう」
そう言って笛吹がポケットから差し出したのは可愛いくまのキーホルダーで。
「直くん…いいの?」
行動と表情がそぐわないっていうのはこのことなんだろうか。
笛吹は泣きそうになりながらくまのキーホルダーを渡してきた。
可愛いものが好きだからくまのキーホルダーもあげるのは嫌だったと思ったんだけど、どうもそうではないらしい。
戸惑う彼女にこそっと耳打ちする。
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