Who is she?

□絵石家塔湖『最後の自分像』編
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「ーーーもしもし、桂木さん?」

「あれ、橘さん。どうしたの?」


ネウロと事務所でテレビを見た直後、私の携帯が鳴った。相手は私のクラスメイトで、依頼者の橘 望愛さん。



「ーーー今ね、テレビ‥‥見てたんだけど‥‥」

「‥‥最後の自分像、だよね?」



そう、つい先程。
平和の象徴として公開されるはずだった子供達の絵が描かれた物を全て赤い箱にすり替えてあり、そこには黒い紙に白い文字でこう書かれていた。


こんな粗大ゴミはいらないけど今は『最後の自分像』が欲しいです。

追伸 名探偵へ
『謎』を揃えてお待ちしています。


X




「ーーー実は、アレと似たような手紙がうちにも届いてて‥‥」
「え‥‥?!」

「突然お電話代わります!助手のネウロです!望愛さん、お手数ですが、その手紙を持って事務所にご足労願えますか?」



私が彼女に話を聞く間も無く、私の手から携帯を奪って勝手に話を進めるネウロ。
相変わらず外面が良く、物凄く腹立つ。
特に[複数の謎の気配をさせている]橘さんが相手だと特に。
ヒステリアのときは微妙に素が出ていたような気もしたけど、彼女は全く気付いていない。
鈍いのか、気付いていても知らないふりをしているのか。



「ーーーわかりました。すぐにお伺いさせていただきますね」
「はい、お待ちしていますね!」



私の頭を掴みながら橘さんと電話をしているネウロの顔をちらりと見れば、謎の気配に顔は完全に本来の姿、化け物に戻ってしまっている。


‥‥‥そんなに橘さんからする謎の気配は美味しいのだろうか‥‥。

ぐぅぅううう、と私の胃袋が食べ物を欲する音がした。
電話を切ったネウロはいつものように私を虫ケラのように見下していた。



「全く貴様の腹の虫はうるさいものだな。どうにかしろ。もしくはこれでも食っていろ」


ネウロにしては優しい!と思って差し出されたそれを受け取る。


ガブッ


「ギャーーーーーーー!!!!何?!何これ?!噛み付いてきたけど何なのこれ?!食べ物じゃないの?!!!」
「魔界のおやつだ。食おうとする者の意思を嗅ぎ取り食われまいと噛み付く習性を持っていて魔界でも食べようとするものは少なかった」
「魔人でも食おうとしないのに私に食わせようとしないでよ!!」
「む‥‥折角我輩が奴隷で虫ケラの貴様にくれてやったというのに」
「あんたは魔人だけど私は普通の人間なんだからね?!そもそも奴隷じゃないっ!」
「おぉ、すまんな。貴様は奴隷ではなくミジンコだったな」
「ミジンコでもなぁーーい!!!」



私達がそんなやり取りをしていると、コンコンとノックのあと恐る恐る開かれた扉の向こうにいたのは先程の電話相手、橘さんだった。




「お待ちしていました!望愛さん!どうぞこちらへおかけください!」



軽くデジャヴを感じながら愛想良くソファに座るように促すネウロ。


「それで、貴女の元に届いたという手紙とは‥‥‥?」
「あ、えと、これです」


彼女が差し出したのは事務所にも届いたものとよく似た封筒だった。



「中はお読みになりましたか?」
「はい。待ってるよ、それだけ書かれていました」
「そうですか。では先生、行きましょうか!」
「へ?行くってどこに‥‥グヘァッ!」


来た突然のDV!!
奇妙な声を上げた私を心配そうに見てそっと大丈夫?と声をかけてくれた。

うぅ‥‥‥正に天使‥
と橘さんの手を取ろうとしたら。




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