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□1話
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固まっている郁ちゃんに対して「あたしは褒めてたから関係ないですよね〜♡」と逃げ切る麻子ちゃん。
そんな麻子ちゃんをよそに郁ちゃんはがつがつとご飯を食べ始める。
その様子を微笑みながら見ているとさっきとは違う優しい声で堂上くんが私を呼んだ。

「しぃ、此処にいたのか。探したんだぞ。」

本当に心配そうな目をするから思わず「ごめんね」と謝ってしまった。

「神崎、堂上ね本気で心配してたんだよ。」

小牧くんのその言葉にもう一度謝ると、堂上くんは優しく頭を撫でてくれた。
その瞳は「もういい」と言ってくれているみたいで私は笑った。

「それより、笠原さん。早食いは体に悪いよ。」
「どうせもうご飯まずくなったからいいんです」
「まぁそんなこと言わずに…」
「失礼します。行こう、柴崎。神崎教官どうします?」

そう郁ちゃんに問われ堂上くんを見ると名残惜しそうにしてたから「私はいいよ」と断った。



昭和最終年度【メディア良化法】成立・施行。
本が狩られる時代≠フ始まりだった。
良化法によりメディア良化委員会設立。
公序良俗に反するメディアを取りしまる厳しい検閲を断行。

本や映像などの自由な表現に触れる機会を人々から奪っていった。

―【図書館】はその検閲に唯一対抗し得る機関である―

国の干渉を受けない独自の法。
【図書館の自由法】を掲げる図書館は検閲を退けあらゆるメディア作品を自由に収集市民に提供
メディア良化委員会にとって唯一の【敵】となって抗争は激化の一途をたどる。


正化十六年 図書隊制度 発足


良化法から三十年。
正化三十一年。

抗争による隊員の死傷すら合法となった時代…
図書館の軍隊≠ノあたる図書隊防衛部は今や
警察や自衛隊より日々の危険度は高い職種といわれている。

「で、実際のところどうなの彼女の適性は」
「アレは化物だな。」
「郁ちゃんは化物じゃないよ、郁ちゃんは可愛いよ」

堂上くんが郁ちゃんの事化物なんていうから必死で違うって言ったら「そういう意味じゃねぇよ」って頭を撫でられた。

「男子を混ぜたハイポートで12位に入りやがった部活でずっと陸上をやっていたらしいが自衛隊につっこんでも訓練だったらついていけるんじゃないか」
「大した素質じゃないか。そりゃもう決まりじゃない?あの話。」
「私も郁ちゃんならいいと思う。」

あの話、とはあの話。
郁ちゃんなら大丈夫だと思うけどまだ一つ足りないものがある。

「まだ決まってない!身体能力だけで決まるものではないからな!」

そういって席を立ってしまった堂上くん。
私と小牧くんは顔を見合わせ「やれやれ…」と言って堂上くんを追いかけた。
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