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□2話
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ど、どうしよう…。
郁ちゃんがいるはずの書店の前まで来たのはいいけど…。

怖い…。

もし、この中にいる人が銃をもっていたら…?
もし、中に居る人がもう…。
そんなはずがないのに。
思い出すのは、【日野の悪夢】の事ばかり。
ここにいても聞こえる。
郁ちゃんの怒鳴り声。

「――図書館法第三十条に――権限を以て――見計らい図書とすることを宣言します!」

あ、郁ちゃん、ダメ。
そう思っても足は動いてくれない。

「ぶはーーーっっ」

中から大きな笑い声がする。

「図書士の分際で――はずだ!」
「なんで――なの」
「著者――があるっ」
「そんなの――関係ない!」

窓越しに見える争う郁ちゃん。

「離せェ!!」

あっそう思った時、ポンと肩に誰かの手が乗った。
振り向くとそこには真剣な顔の堂上くんがいた。

行ける。
そうだ、私はもう1人じゃない。
周りにはこんなにたくさんの優しい人たちがいる。

そう思ったら足が動いた。
そして、走っていってしまった堂上くんを追いかけた。






私が書店に入ったら中には堂上くんと堂上くんに抱きかかえられている郁ちゃん。

チクッと胸が痛む。
でも、今はそんなこと関係ない。

「…遅れたが二等図書正三名に三等図書監一名。不足はないだろう。」

凛とした堂上くんのその声。
良化隊員たちは帰って行った。

でも、私は見てしまった。
さっき堂上くんが郁ちゃんを抱く手に力を込めていたことに。
郁ちゃんの瞳が恋をする女の子の瞳だったことに。
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