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□3話
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あれから十分ほど歩き山登りも休憩に入りました。
「しぃ。途中ペース上げてたが大丈夫か?」
どうやら堂上くん、心配してくれたらしい。
「うん、大丈夫だよ。それより気になるのはクマだよ…」
「まぁその…なんだ。基本臆病な生き物だ。大人数で行動してたら向こうからは寄ってこない。」
「う、うん。そうだよね…。」
「俺が知る限り野外行程で実際クマが出た事なんか一度もない。」
安心させてくれているということが嬉しくて笑顔で「ありがとう」と言ったら急に堂上くんが立ち上がった。
「ともかく単独行動じゃないからな。野外行程は後半もっとキツくなる。ゆっくり回復しとけよ椎香は体力ないからな。」
堂上くんはそう言って私の頭をポンっと撫でてから何処かえ行ってしまった。
久しぶりに名前で呼んでもらった。
いつもは省略されてるから…。
それから五分後堂上班は出発した。
もうどれくらい歩いたか分からなくなる頃堂上班は他の班との合流地点の野営地についた。
「おー、着いたか堂上隊。予想より随分早いぞ。女子が混ざった条件でよくやった。」
俯かせていた頭を上げればそこにはイキイキとした玄田隊長と小牧くん。
なんかちょっと光ってる気がするんだけど…。
今日は疲れたからもう寝たいと思ったけどやっぱり郁ちゃんと喋りたい。
でも郁ちゃんは「笠原トイレでーす。」って言って行ってしまった。
だから私は郁ちゃんがトイレから出てくるまで木にもたれ掛って待っていた。
「しぃ。」
「あ、堂上くん。」
名前を呼ばれそっちを向くとそこには堂上くんがいた。
「…今日は、よく頑張ったな。」
そう言って堂上くんはお茶をくれた。
「ありがとう」とお礼を言ってごくごくと飲む。
ふぅ、おいしい。
お茶を飲んでから数秒。
とてつもない睡魔に襲われて私は意識を手放した。
―おまけ(?)第三者目線―
「しぃ。例のクマの件だが…」
堂上がそこまで言った時、とんっと肩に何かが乗った。
その何かとは椎香の頭だった。
堂上は眠ってしまった椎香の頭を撫で、微笑む。
その顔は、椎香にしか見せない特別な顔。
もちろん、小牧も笠原も見たことのない顔だ。
堂上が椎香と甘い雰囲気に浸っていると手塚が来た。
「堂上二正こちらですか。明日の行程についてお話が。」
「む、聞こう。だがその前にしぃがオチた。俺は運んでくる。後でいいか。」
堂上のその優しい声に手塚は驚きながらも「了解」と言った。
堂上はふわりと椎香を抱き上げテントへと歩いてった。