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□桜
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出来たお弁当を持って武蔵野第一図書館へと向かう。
夜道を女子だけじゃ危険だと言われたけど図書特殊部隊が二人いるから…という理由で納得してもらった。
不審な人が出たら郁ちゃんが毬江ちゃんを背負い、私と麻子ちゃんがお弁当を持ち、逃げるという作戦を立てた。
だから心配はない。はず…。

いろんな話をしながら歩く。
女子なだけあって、やっぱり花が咲くのは恋バナだった。

郁ちゃんの王子様とか小牧くんと毬江ちゃんの出会いとか。
あとは…、私の話とか。
大体は郁ちゃんの話。

って言っても堂上くんの話なのだけど。

…、ちょっとやきもち。

しばらく歩いて図書基地に着いた。
そこには太くたくましい桜が何本も並んでいた。
時折風に散る桜が凄く綺麗だ。

「うわぁ…」

図書館では喋らない毬江ちゃんが驚いていた。

「綺麗…!!」

あまりの綺麗さに郁ちゃんが駆け出す。

「椎香きょーかーん!!写真とりましょ!写真〜!」
「うん、でもその前に。」

食べよう。

私は堂上くんたちの方へと駆け寄る。

「しぃ。何もなかったか?」
「うん。大丈夫だったよ。」

安心させるように笑いながらシートの上にお弁当を置く。
風に舞う桜がふわふわとお弁当の上にやってくる。

「綺麗だねぇ」

そう呟けば堂上くんはそうだなと言って私の頭に手を置く。
不思議に思って堂上くんを見上げればその手には桜があった。

「来年は二人で来るか」

手の中の桜を見つめながら堂上くんが言った。

郁ちゃんの声がうるさい。
でも今はそのうるさささえも心地いい。


夜空に舞う桜は綺麗だった。

また、来年。
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