「…亜梨澄……。ゴメン……。」

長い沈黙……
その長さが胸を締め付ける。

「な、んで。空牙は人間じゃないの?」

すぐに答えが出てこない。

(俺は人間か?それともヴァンパイアか?)

「俺は…………。」

(言うのが怖い。嫌われたら……。)

「どっちなの?」

次ははっきりした口調て聞いた。

「亜梨澄は俺が怖いか?」
「……………。」
「怖いなら、俺はどっかに行くよ。見つからないような場所に。」
「…………。」

しばらくの沈黙の後

「怖くはない、かもしれない。でもビックリして……少し怖かった。」
「ごめん。」

ヒクッ…ヒック…………ヒック
亜梨澄は相当怖かったのだろう。
耐えきれなくなったのか微かな声で泣き出した。

「本当ごめん。」
「今日はもう帰る。」
「あぁ。」





(あぁ、何で俺は耐えられなかったのだろう。亜梨澄に怖い思いをさせてまで何がしたかったんだ。…………
隣にいたらまた………。)

ドクン…ドクン………

「空牙?大丈夫?顔色わるいけど。」
「逃げ..ろ。早く!また、飲んでしまう!」

ドクン……

(放っておいたら、皆に空牙の正体がバレちゃう!)

亜梨澄は恐怖を抱えながらも空牙を家に運んだ。

ドクン…ドクン…ドクン………

「逃げろって言ったろ!うぁ…!!」
「!!!!」
「亜梨澄……っ!」

空牙は亜梨澄を引き止め首筋に牙を立てた。

ブツッ

「あっ!……痛っ。止め..て。」

ズリュ…ズル

亜梨澄の鮮血が首筋から流れ落ちていく。

(何でこんな濃いんだ。こんなに濃くしてるから俺に飲まれるんだ!)

「空牙。痛い……。嫌だ」

その一言で吸血はやめたが亜梨澄の首筋にはくっきりと跡が残ってしまった。

「あ………。俺はまた……。」
「空牙。」
「亜梨澄。もう一緒にはいられない。いたらまた同じことを繰り返して…………!」
「一緒にいて良いよ。」
「……え?お前何言ってんだよ。」
「私が慣れるから。………でも、この跡どうにかならない?」

空牙は亜梨澄の首筋の傷を舐めた。

……ペロ…ペロ………………

「っ……。」

空牙が跡を舐めると跡形も無く消えた。

「一緒にいたら本当に…。」
「大丈夫だから。」
「でも……。」
「空牙は私と一緒にいたくないの?」
「それは…。」

(いたくないと言ったら嘘になる。でもこれ以上一緒に居たら、亜梨澄をまた傷つけてしまう。)

「いたいけど、これ以上いたらいつ亜梨澄のことを傷つけるか分かんないし、傷つけたくない!」
「大丈夫だって言ってるでしょ。空牙が血が欲しいんだったらいくらでもあげるから一緒にいてよ!私は、空牙と離れるのが嫌なの!」

空牙は驚いた。
なぜ、血を吸われたのに拒絶しないのか、いつ襲ってくるか分からない獣と一緒にいたいのか…と。

「じゃあ、誓って。俺と一生生きてくれると…。」

空牙は今まで色々な人との別れを経験してきた。もう、これ以上人と離れたくないと心の奥で思っていたのかもしれない。それが、今弾けてしまったのかもしれない。
亜梨澄という少女に向けて…。

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