ちっぽけな僕らのでっかいお話

□第2話
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「お前…少しは大人しくできないのかよ」
「なんで?せっかくの入学式だし、ここはパーっと」
「うざい」
「だからなんで!?」


また賑やかに大和と翔太は会話を弾ませている。そんな二人を見て、康も自然と笑顔になる。こいつらは昔から変わらないな。どんな時でも周囲を明るくしてくれる大和と、自分の考えを臆することなく伝えられる翔太。そんな二人は、これまでもこれからも俺のかけがえのない友人だ。思わず笑みが溢れる。康は、自分はよく笑みを漏らし翔太から「何ニヤけてんの」と呆れられるのを思い出した。…そろそろかな。


「何ニヤけてんの?」
「いーや、なんにも!」


翔太のいつもの決まり文句。そんな様子にまた笑みを漏らし、康もまたいつも通り返した。


「三人は仲良しだね。友達同士?」


窓側一番後ろ、もとい特別席に座る女の子がこちらに投げ掛けてきた。そりゃそうだよな、入学式早々こんなに打ち解けて話せてるんだから疑問に思う方が普通だ。


「ああ。幼馴染みなんだ」
「ほんと!?あたし達三人も幼馴染みなの。あたしは橘柚。柚でいいよ。よろしくー」
「俺は神原康。よろしくな」


だからさっきも三人で楽しそうに話してたのか、と納得。親しみやすいこの子は橘柚…っと。大和と似てる気もするな。ちらりと他の二人に目を向けると、一人は康の目を見てはっきり、もう一人はおずおずと俯きがちに自己紹介をしてくれた。


「私は葉山椎名。こちらこそ一年間よろしくね」
「小野桜です。よ、よろしく…お願いします」


しっかりしてそうな子が葉山椎名。そして、なんとなく弱々しいのが小野桜。一人うんうんと名前を覚えてると、こんな楽しそうなことを逃すまいと脇から大和が顔を出した。


「なに康、もう一人で自己紹介済んだん?抜け駆けしようたってそうはさせん。えっと俺、望月大和いいます!よろしゅう!」
「よろしゅう!」


柚も大和の真似をするように挨拶を交わし、握手する。やっぱり似てるな、この二人。


「坂本翔太。よろしく」


翔太も簡素に自己紹介を済ませた。言葉は少ないけど、真っ直ぐ相手を見て話す翔太はやっぱりいい奴だと思う。それが伝わったのか、椎名も嬉しそうに言葉を交わす。


「よろしくね大和君、翔太君。よかった、初日から友達できて嬉しい」
「何、不安だったの?」
「そんなんじゃないけど…」
「友達ってなろうと思ってなるものじゃないし、気負う必要ないと思うけど」
「翔太君って大人だね」
「意味わかんない」

「あ、あの。その……」


大和と柚、翔太に椎名はもう打ち解けたのか楽しそうに話始めた。そんな輪に入りたいのか、桜も精一杯声をかける。あ、とかうっ…とか止まりながらだけど少しずつ何かを伝えてくれようとしている。大和はそんな桜にゆっくり語りかけ、幼馴染みだというい二人もこれが当たり前だと言わんばかりに彼女が言葉を発するのを待ち続けていた。が、心配してたことが起きた。


「ん?どうしたん…と、桜」
「あう、と…えっと…」

「んと…よ、ろし」
「言いたいことがあるならはっきりしろよ」
「…え」
「お前うじうじしてて見てるこっちがイライラする。言う言わない、どっち」


翔太が桜を睨み付ける。やってしまった、と思った。
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