ちっぽけな僕らのでっかいお話

□第7話
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「はあ…」


椎名の盛大な溜め息が聞こえた。柚は不思議に思い問いかける。


「どうしたの椎名?具合悪い?それとも悩み事?」
「私気付いちゃったんだ」
「何に?」


桜もこてん、と首をかしげて問う。溜め息を吐く椎名を心配してか、または彼女の言う気付いたことに興味があるのか康達も会話に混ざり始めた。


「カレンダーを見たらね、一週間後だったんですよ」
「…ああ、なるほど」
「え、翔太はわかったん!?えと一週間後一週間後…」


一週間後と聞いて思い当たることがあるのか、口許に手を当て考えていた翔太がすっきりしたとでも言うような顔で頷いた。大和は何も浮かばず懸命に頭を働かせている。
スケジュール帳を開いていた桜と、翔太同様に気付いた康はおもむろに立ち上がり背を向ける。が、それは椎名と翔太の手により叶わなかった。


「「逃げるな」」
「だ、だだだだってテストだよ」
「テストってことは勉強しなきゃだろ?無理無理」
「赤点とったらほ、補習だよ」
「大体勉強なんてしなくたって生きていける!」


顔を真っ青にする桜と半ば諦め気味の康。


「あー、そうやテスト。でもまあ、あと一週間もあるんやし…」
「そうだよ!皆で協力すれば大丈夫だよ!」
「そうそう、皆で……皆?」


大和は同意を止め、柚の顔を見やった。


「勉強会しよう!」


「……あー、悪い柚。俺は野球が忙しいから勉強会の参加は残念だけど」
「残念ながらテスト前一週間は部活停止だよ康」


椎名に現実を突きつけられ机に項垂れる康。勉強なんて何の役に立つのか、と学生ならば一度は思うであろうとをぶつぶつと呟いている。桜は皆とならと先ほどよりは積極的にテストに向き合えたようだ。


「そーいうこと!で、皆いいかな?」
「いいんじゃないの。それぞれ得意科目と苦手科目があるだろうし、教え合えば力になるはずだし」
「うん、私も賛成。桜もいいよね」
「頑張ります…!」
「康は俺と翔太が責任持って参加させるから安心してな」


ここまで言われれば康も嫌でも参加せざるを得ない。何より赤点をとったら補習授業が放課後に組まれ、せっかくレギュラー入りしたというのに練習時間が大幅に削られてしまう。それだけは避けなければ。


「早速今日から始めようと思うんだけど、どこでやる?」
「学校でいいよ。忘れてないと思うけど、テストには魔法の実技テストもあるからね」
「…あ、そっか。校則で学校外での魔法の使用は禁止されてるもんね」
「じゃあ学校で決まりやな」


テストまであと一週間。この日から毎日六人は放課後に勉強会を開いてテスト勉強をすることになった。自分達、主に康と桜は無事にテストを終えることができるのだろうか。翔太は窓を見やって思った。
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