ちっぽけな僕らのでっかいお話

□第9話
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「青い空!青い海!白い雲に眩しい太陽!まさに絶好の海水浴日和だね!」
「恥ずかしいから騒がないでくれる?」


六人は今日、近場の海へ予定していた海水浴へとやってきた。柚は電車の中からこのようなテンションであり、翔太のツッコミも今日何度目だろうか。しかし天候に恵まれたこともあり全員がいつもよりどこか表情が明るかった。持参したビニールシートを敷く椎名とビーチパラソルを開く大和も呆れつつ口角は上がったまま。履いていたサンダルを脱ぎ浜辺ではしゃぐ柚は我慢出来なくなったのか素足のままパラソルの元へ駆けてきた。


「ねぇ早く泳ごうよ!」
「柚はそのままの格好で泳ぐつもりか!そんな焦らんでも海は逃げやしないって」
「でも〜…」
「ははっ。限界っぽい奴もいるみたいだし、着替えたらこのシートに集合な」
「はーい。ほら桜も椎名も早く行こ!」
「あっ、待ってよー」
「もう。それじゃまた後で。桜行こっか」


荷物を持ち更衣室へ向かう三人。それを見送り、残る男子三人も更衣室へと向かった。


「あーあかん。最初からあのテンションに付き合わされたら帰りの電車で絶対寝るわ」
「確かに。行きはあんなに賑やかで迷惑かけたのに帰りは皆爆睡だろうな」
「俺ら寝るから、起きてるのは康の仕事ね」
「なんでだよ。俺だって寝たい」
「皆寝たら洒落にならんし、誰か一人は起きててもらわんとなー」


着替えながらこんな会話をし、少し帰りが心配になるがその時はその時だと諦め、今は海水浴を存分に楽しもうと結論に至った。

女子の到着を待つ。覚悟していたがなかなか帰ってこない。何故女の買い物、着替えはこんなにも遅く感じるのか。最初のうちはこんなものだろうと素直に待っていたが、待てども待てども戻ってくる気配がないため徐々に心配になってくる。


「…遅い」
「周りもだんだん人増えてきたな」
「こんだけ遅いし何かあったんかな?ほら、ベタにナンパとか?」
「まさか」
「んー…まあ確かに女子だけではあるけど、まさかナンパなんて」
「あの、やめてください!」


だよね、なんて笑う三人の耳に聞こえてきたのは待ちくたびれた待ち人の声。やっと来たと振り向くとそこには三人の他に見知らぬ男が三人。椎名は声を荒げて拒否を示しており、柚は困ります〜と笑っている。桜にいたっては、知らない男の人という恐怖の対象を目の前にして固まっていた。


「…まさか、だったな」
「今年一番の驚き」
「え!?ちょっ、んな呑気にしてないで助けんと!」
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