be hopeful
□阪神共和国1
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『でもこれからはどうやって羽根を探せばいいのかな?』
「もう服にはくっついてないみたいだしねぇ」
今は必然で羽根をさくらに戻すことができたけど、これからは何を手がかりにして羽根を探すのか疑問である。まさか広い世界を手当たり次第に、なんてできるはずもないからだ。皆が頭を抱えていると、モコナから大きな返事が返ってきた。
「はーい!はいはい!モコナわかる!」
「本当に!」
「今の羽根、すごく強い波動を出してる。だから近くなったら分かる。波動をキャッチしたら…モコナこんな感じになる!」
『きゃっ…!』
「げっ!」
めきょっ!とモコナの今まで閉じられていた瞳が見開かれ、思わず声を上げる柑菜と黒鋼。けれどこれでモコナが感知できることがわかった。これならさくらの羽根を探すこともできそうだ。
「教えてもらえるかな、あの羽根が近くにあった時」
「まかしとけ!」
「…ありがとう」
小狼の笑顔、初めて見た。とても嬉しそうで温かくて、優しいそれにこちらの胸も温かくなる。
「お前らが羽根を探そうが探すまいが勝手だがな、俺にゃあ関係ねぇぞ」
ふと聞こえた低い声。声の主は先程まで特に話に混ざることなく傍観していた黒鋼だった。
「俺は自分がいた世界に帰る。それだけが目的だ。お前達の事情に首をつっこむつもりも手伝うつもりも全くねぇ」
「はい。これは俺の問題だから。迷惑かけないように気を付けます」
「あははははー。真面目なんだねぇ小狼くん」
正直、怖かった。さっきまでのふんわりした空気が彼の一言でぶち壊され、また緊迫した空気に逆戻りしてしまったから。彼が間違いかと聞かれたら、それは違う。言っていることは正しいのだから。ただあの鋭い瞳であそこまではっきりと拒否を示されてしまい、怖じ気付いてしまったのだ。それも小狼自身のきっぱりとした肯定によりなんとか気持ちを落ち着かせることができたため、ほっと一息吐く。
「そっちはどうなんだ」
「んん?」
「そのガキ手伝ってやるってか?」
「んーそうだねぇ。とりあえずオレは元いた世界に戻らないことが一番大事なことだからなぁ。ま、命に関わらない程度のことならやるよー。他にやることもないし」
「…お前はどうなんだよ」
『わ、私?』
「お前以外にいねぇだろうが」
『私は、手伝います。私にできることならやりたいし…早くさくらともお話してみたいです』
ちらりと見たさくらはやはり目を固く閉じたまま。今のところ、私の望みは黒鋼さんと同じく元いた世界に戻ること。それが叶うその時まで、何枚になるかわからない羽根を探すお手伝いはしたい。…女の子のお友達も欲しいし。そう思いながら、少し怖いと思いつつ真っ直ぐに黒鋼を見つめる柑菜。
その時、がちゃりとドアを開ける音が部屋に響く。目を向けるとそこには男の人と女の人が立っていた。
「よう!目ぇ覚めたか!」
『あ…あの…』
「んな警戒せんでええって。侑子さんとこから来たんやろ」
「ゆうこさん?」
「あの魔女の姉ちゃんのことや。次元の魔女とか極東の魔女とか色々呼ばれとるな」
侑子さんという名前に首をかしげる私達を代表するように小狼が問うと、人の良さそうな明るく独特な話し言葉を用いる彼は次元の魔女さんのことであると教えてくれた。異なる世界の人とも知り合いだなんて余程顔が広く有名な人らしい。
「わいは有洙川空汰」
「嵐です」
『親切にありがとうございます。如月柑菜です』
お茶菓子とお茶を貰い、お礼を言う。男の人は空汰さん、隣の次元の魔女…侑子さんと同じくらい綺麗な人が嵐さん。
「ちなみにわいの愛する奥さん、ハニーやから。そこんとこ心に刻みまくっといてくれ」
『わあ!お二人は夫婦なんですね!』
「つーわけで、ハニーに手ぇ出したらぶっ殺すでっ」
「なんで俺だけに言うんだよ!!」
「ノリやノリ」
黒鋼の肩をポンっと叩き、案の定食って掛かる叩かれた張本人。あはは、と笑い飛ばす空汰は恐れ知らずな気がする。
「でも本気やぞ!」
「ださねぇっつの!!」
違う、この人は恐れ知らずなだけではない。純粋な天然なんだと悟る柑菜であった。