マギ

□*今夜は月が綺麗だね。
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※なぜかシンドバッドに捨てられてます。

どんなにつらい事があっても笑って耐えて生きていかなければならない。
人間とはそういう生き物なのだ。

ここは大好きな場所だったのに。ここからは綺麗な夜空とシンドリアの街並みが何処よりも一番よく眺められるから、よくあの人と来て一緒お話したりしていた。
…なのに、

『うぅっ…ひっく…ぐす…』

どうして私はこんな場所で一人泣きじゃくっているのか。

「…おねいさん、どうしたんだい…?」

何処かで聞いたことのある声。
そうだたしかアリババとかいう人の隣にいつもいるがきんちょだ。

「…何か辛いことでもあったのかい?」

辛い事があったのは確かだが、今は放っておいて欲しい。

『…ぐすっ…ほっといてよ…私あんだの事ぎらい…あっぢ行っで…』

なんの罪もない子供にいきなりこんな事いうのも可哀想だが、私は今切実に一人にしておいてほしい。
それに子供が嫌いなのも嘘ではない。
私は小さい子が好きでない。
我儘だし聞き分けが無いし、ないようなものを純粋にあると信じ切ってそれが欲しいとだだをこねる…
……その状況はまさしく今の私ではないか。
元から有りもしない愛を欲しい欲しいとだだをこね、結局捨てられてしまったではないか。
結局私はいつまでたっても大人に成り切れないのだ。

「…失恋でもしたのかい?」

子供とは思えない鋭さに一瞬どきりとするが、人気のない場所で女が一人咽び泣いていたら大体原因はそれだと安易に想像できると納得した。

『…あんたには関係ない』

「そんな悲しいこと言わないでよ。」

「…あのねおねいさん、その人にふられて悲しいかい?」

『ええ悲しいわ、悲しいわよ。
だから今泣いているの。』

「愛してた?」

『ええ愛してたわ。
世界中の誰より一番愛してた。』

「それってすごいことじゃないか!」

『…は?』

「おねいさんはこんなに広い、こんなに人が沢山いる世界でたった一人、愛する人に出逢えたんだよ?
それって素晴らしいことじゃあないかい?」

『…そうかしら』

「そうだよ!
その人との時間は楽しかったでしょ?」

『…うん。』

「だからおねいさんの思いは決して無駄なものじゃあないんだよ。
おねいさんの綺麗な思い出の大切な一つだよ。
そうやって人は泣いて笑って生きていくのさ!」

『…そういうものなの?』

「そういうものなのさ!」

『…ふふ、なんか変なの。』

自分より何歳も年下の子に自分の経験は無駄ではなかったと諭され、少しくすぐったい気持ちで、なんだか笑えて来た。

「あ!おねいさんやっと笑ってくれた!」

私はこんな小さい子に心配される程酷い顔をしていたのか…

『うん。あんたのおかげね、
ありがとう!』

「うん!」

『名前は何て言うの?』

「僕はアラジンさ!」

『じゃあアラジン、今日はもう遅いから帰りましょう。またいつか会いましょ?』

「うん、そうだね!
バイバイ、おねいさん!」


私はこの子との出逢いで少しだけ、ほんの少しだけ大人になれた気がした。
もう下を向いて泣くのはやめよう。
明日からは新しい私だ。
もう帰る場所もない、頼ることができる人も無く、孤立無援だ。
でも明日から新しい地で新しいものを沢山探そう。
そうすればきっとまた友人だって好きな人だって出来るはずだ。
なぜか今の私は、未来が希望に満ちていると何の根拠もないのにそう確信していた。



「…シン、あの子の事本当にあのままでよかったんですか?」

「何、気にする事はないさ。」

「気にする事大ありです、あんなに泣かせておいて。」

「…あの子はあの子の新しい道を歩むんだよ。」

「なぜそうとわかるのです?」

「なぜって、俺がそう確信しているからさ。」

「…意味が分かりません。」

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