マギ
□*宇宙までひとっ飛び
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彼の背中をずっと追って、話しかけるタイミングを伺う。
今だ!そう心に決め一気に彼の元へ駆け寄る。
『こんにちは、アリババ君。
気持ち悪いくらい顔がにやけてるよ。』
うわあああいきなり失礼な事を言ってしまった。私のばか!
でも確かに彼が異常なまでににやけているのは事実だ。
いつも笑顔の彼だが、今日は軽く引いてしまう程の満面の笑みだ。
「おーお前かよ!ってきもいって言うな!」
と形だけのツッコミを入れつつも彼の心底嬉しそうな笑顔は揺るぎ無い。
まあ本題に戻ろう。
『何かいい事でもあったの?』
よくぞ聞いてくれた!と言わんばかりに彼が饒舌に語り出す。
「いや、実はさっきさー、モルジアナがさー、アリババさんの事、世界一好きです!て言ってくれたんだーまいっちゃうよなーほんと。へへっ」
と背後から花を散らしながらのろける彼。
『…』
彼のテンションとは裏腹に、
私の心はずきずきと痛くなる。
声が震えてしまわぬよう、必死にお腹に力を込めて言葉を紡ぐ。
『…そっか。よかったね…仲良しだね。』
「もーやめろよ〜照れるだろ〜?
あ!俺師匠に用事あるんだった!
じゃあまたな!」
『….うん。いってらっしゃい…。』
…そっか。
と一人でぽつりと呟く。
誰よりもずっと、モルジアナさんよりもずっとずーっと、彼のこと愛しているのにな。
報われないな。
人生ってこんなもんなのかな。
ほっぺたに液体が伝う感触。
私は泣いているのだろうか。
彼女が彼のこと世界一好きだと言うのなら、
『…私は宇宙へ行って帰って来る位君の事大好きだよ、アリババ君。』
…なんて言えないけどね。