マギ

□*そうだね、そうしよっか。
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「…なー」

『何ー?』

「お前って酌婦やってんだろ?」

『そうだけど。どしたの急に。』

お前はどうしたんだこいつ、と言いたげな顔をしているが、俺は構わず質問を続行する。

「体は売らないんだろ?」

『そりゃそうよ。』

「儲かんのか?」

『ぜーんぜん。』

「稼いだ金は?」

『ご飯はお客さんに頂くから、服買ったりアクセ買ったり…?』

「…お前年食って酌婦出来無くなったらどうすんだ?」

『…どうだろう、奴隷として売り飛ばされるかも知れないし、乞食になって野垂れ死にするかもだし…あれ?私の老後何も良い事無いや。』

もういっその事若い内に…。
なんてお前が小さな声でぽつりと呟く。

「そんなの俺が許す訳ねーじゃん、お前はずっと俺の側に居ればいいんだよ。」

『えー…』

「何て言ったって俺はマギなんだ、金なんて幾らでもあるんだぜ?
だからさ、もう酌婦なんて辞めちまえよ。
此処で一緒に暮らそうぜ。
そんでお前の白髪が増える度、お前の皺が出来る度、俺が笑ってやるよ。」

『…』

咄嗟に出てしまった言葉だがよく考えるとかなり恥ずかしい事を言った事に気付き、何時も似た様な事を言っているにも関わらずばつが悪くなる。

『…はは。何それ。プロポーズ?』

「…知らね。お前の好きな様に取れば?」

『何だそりゃ。まあいいや、ありがとう。
…そうだね、そうしよっか。』

ーそうだね、そうしよっか。ー
お前はいつもそう言っては答えをはぐらかす。
きっとお前は酌婦を辞めるつもりも俺の物になるつもりも無いし、白髪一本でも出来たら、もしかしたらそれよりも前に俺の前から姿を消すのだろう。
何と無くそんな予感…いや、確信がある。
これはきっともう決定事項なのだ。
そうと知ってて俺は何故、こんな子供じみた意味の無い告白を毎日飽きずに続けてしまうのだろうか、心にぽっかり空いた穴は大きくなるばかりなのに。
お前がどんな答えを出したらこの穴は埋まるのか。
今日も答えが出せぬまま、何時も通りにいつかは無くなる一日が終わってしまうと思うと堪らなく虚しくなって来て、うつ伏せて狸寝入りを決め込んだ。

『ねぇ、』

「…何だよ」

『泣いてるの?』

「…泣いてねーし。」


無意味な告白を、今日もまた一回。

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