とある

□贖罪
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その場所は暗く、ジメジメしてとても昼だとは思えない場所だった。建物の隙間から漏れるわずかな光が、昼なのだと俺に連想させた。
ここは・・・・・・そうだなァ。
あの場所に、よく似ている。
『実験』をしていた場所に。

ンだァ?やけに血なまぐせェなァ
・・・・・・・・・・・・!!

グシャアッ

辺りに広がるのは
血。
真っ赤な血の海だった。

俺はサッと後ろに下がり、肩を震わせた。

「ッ!!」

・・・・・・!!
あれは・・・・・・

血だまりの真ん中には、一人の女の子が倒れている。
胸に突くような痛みがはしった気がした。

「・・・・・・サカ」

俺は彼女の名前をつぶやいた。
つぶやく権利なんかありやしねェのに。

そして、駆け寄る。

彼女の名前を呼ぼうとして、やめる。

呼べねェ。
呼べるわけねェ。

ただ、そっと抱き寄せ、呼びかける。

「大丈夫かァ?」

分かっていた。
こいつァもう死んでいた。

出ている血の量、色。
死んだ人間の印。
あれだけの死体を見てきせいで、いつの間にか分かるようになっていた。

あァ、そうか。
分かった。

もう『実験』は終わったはずだったのに、『ミサカ』の死体があるわけが。

「夢・・・かァ?」

髪をかきあげてつぶやくと、また胸がズキンと痛んだ。

これァ夢。
これァ夢。

いくら自分に言い聞かせても、胸の痛みは収まらない。

これは夢でもあり、現実でもあるからなァ。

現実じゃねェ・・・過去かァ?
まァ、俺が犯した罪には変わりねェが。

この『ミサカ』も俺に殺されたんだろォなァ。

ツクリモノ
ジッケンドウブツ

こいつらは自分のことをそう呼んだ。俺もだ。

俺はどっかで気がついていていたはずなのに。
こんな実験、意味がないと。
こいつらがそういうから、俺の中の罪悪感が消えちまっていた。

どうすれば、この罪を償える?

少し、ほんの少しでも、この少女達のためになることをしたい。
もちろんそれで罪が消えるわけではないが、それでもだ。

こんなときに あいつの言葉を思い出した。

Wあなたは本当は実験をしたくなかったW

手の中で『ミサカ』が冷たくなっていく。
血は固まり、赤黒くなる。
体は硬直し、動かなくなる。
死んだ『人間』なら当然だ。

俺は手についた血をボーッと眺めた。その血はまるで、呪いみたいだった。

『ミサカ』をそっと地面に寝かせて立ち上がる。

そして、後ろを振り返った。

そこには・・・・・・・・・。

何百、いや何千の、『妹達』がいた。

視界が真っ黒、闇に変わる。




その瞬間、俺はこの悪夢から目を覚ました。
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