戴きもの
□リリィ
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「“14-5”だ。」
「ウィッス。」
「5点の原因はすべてお前だ。」
「ウィッス。」
「違う返事をしろ。」
「…。」
フゥ
屑桐さんが大きなため息をした。
「いつも言っているが、試合に集中しろ。」
「…。」
「…もし俺の事を気にしているなら、気にするな。」
「はぁ?!」
俺は屑桐さんに怒鳴った。
「気にするな?何言ってんだよ。あと1週間後だぜ?
それを気にしねぇ奴がいるかよ!!」
プッ
え。
俺がこんだけ言ってんのに何で屑桐さん笑ってんの?!
「ちょっとアンタ聞いてんのかよ。俺真剣に言ってんの分からねぇ?!」
「あぁ、すまん。」
「もーいいッス、俺帰る。」
部室のドアに手をかけた。
「御柳。」
振り返ると、千代紙で折られた鶴を渡された。
「貰ってくれ。」
「…。」
俺は何も言わずに部室を出た。
…さっきシカトしなきゃよかった…。
俺は何度も自分を責めていた。
あと何回屑桐さんと喋れるかわかんねぇのに。
ポケットに手を入れる。
カサッ
あっ…。
俺は屑桐さんに貰った折り鶴をポケットから出す。
屑桐さんって器用だよなー。
俺なんかこんな細かいの、折る気もしねーな。
…ん…?
鶴の裏側に何か書いてある。
俺は鶴を開いた。
そこには達筆で、優しいあの屑桐さんの字があった。
『さっきは笑ってしまってすまない
御柳が
可愛く思えてな
俺は今まで怒りすぎたな
だから最後は笑って別れようと思う
御柳
今まで有難う
お前は実力がある
だから必ず
華武を甲子園に連れてゆき
優勝させてくれ』
…うわ。
嬉しいか悲しいかわかんねぇ。
でも、何で、
涙止まんねぇの?
駄目だ、俺。
屑桐さんが大好きだ。
離れちゃ嫌だ。